霊と妖とゆめゆめ
遅くなってすみません。妖夢の話し方は原作を意識してみました。実は一部の相手を除いてほとんどタメ口だったり。
霊夢は今日も境内の掃除をしていた。あまり人の来ない神社ではあるがひょっとして誰か来てくれるのではという期待が捨てられないのだ。
「まったく。まーだお腹が疼くわ」
昨日魔理沙が持ってきたキノコは時間差で効果の表れる笑い茸だった。知らずに食べた霊夢の腹筋がどうなったかは想像に難くない。
「今度あったらとっちめてやらないと」
どうやらこの巫女は武断派のようだ。
しかし、その予定は暫し延期せざるをえなくなった。
空の彼方からの訪問者が到着。白玉楼からノンストップでここまで飛んできた妖夢だ。
「霊夢ー!」
妖夢は落ち葉を巻き上げないよう気をつけて降り立った。その性格はいたって生真面目なのである。
「あっ、おは妖夢」
「挨拶と名前をまとめないでよ!」
ツッコミまでしっかり。
かつて激突した霊夢と妖夢だが共に異変の解決にあたることも多く、また名前がどこか似ていることもあってかなんだかんだで仲がよい。
「今日はどうしたの? 素敵なお賽銭箱ならそっちよ」
「いやお賽銭違う。異変が起こったんだって」
緊急事態を告げる妖夢。だが霊夢は気にせず落ち葉掃きを続ける。
「異変ねぇ。また宗教絡み? それともあの天邪鬼? まあいずれにせよそっとしとけばいいんじゃないの」
貪欲に信仰を求める宗教家たちの確執。幻想郷転覆を目論んだ弱小妖怪の蜂起。どちらの異変も記憶に新しい。
「そうじゃなくて。幽霊がなんだか勝手なことをしてるの」
経緯を説明された霊夢。その表情はどこか訝しげだ。
「それで? 幽々子は何て言ってたの?」
「花の異変の時と似てるって仰ってたんだけど……」
あれは霊夢にとってもなかなか印象深い異変だった。
「花の異変ねぇ。っていうか早くなんとかしないとあんたたち大変なことになるわよ」
「え?」
「花の異変で思い出したけどあいつに幽霊をちゃんと管理できてないってバレたら色々よくないでしょ?」
そこで妖夢は思い出した。普段は気にすることのない存在を。
白玉楼のトップはもちろん幽々子なのだが、彼女に幽霊の管理を任せたさらにその上の人物がいるのだ。その人物に今回の件が露呈したら……?
「みょ、みょぉぉん!」
妖夢は思わずおかしな叫びをあげてしまう。
「分かったらはやく行きましょ。とりあえず幽霊捕縛用の御札ならあるからおかしな動きをする奴はそこにどんどん捕まえていくのよ。でも白玉楼は広いからもっと援軍が欲しいわね」
無理矢理にでも引っ捕らえて落ち着かせようというのだ。
「だったら森に……あっ」
そこで唐突に真上を見上げる妖夢。
彼女の視線の先で博麗神社上空を数十の霊が飛び去っていった。
「あれま。白玉楼飛び出しちゃってるじゃないの」
「幽々子様でも抑えきれなかった……」
驚く二人。
「予定変更。白玉楼に行こうと思ってたけど先に脱走したのを捕まえないとね」
幽霊たちが飛んで行った方向を見つめる。飛ぶ速度はさほど速くないのですぐに追い付けそうだ。
「うん。方向からして人里のほうだね。早く行こう」
頷く妖夢。
「事情は聞かせてもらった! 私も混ぜてもらう!」
その時響く声。霧雨魔理沙がいつの間にか神社の屋根に腰かけていた。
「魔理沙!」
「あらよっと」
魔理沙は昨日と同じくせっかく集めた落ち葉を巻き上げて降り立った。
「よっ霊夢。おは妖夢」
「それ流行ってるの!?」
こうしてトラブルシューターが三人揃った。
いよいよ異変解決に動き出します。ゆゆさまは何を企んでいらっしゃるのやら。