自覚
注文していたコーヒーを飲み終えて静かに店を後にした。
いつもの帰り道が今日はひどく長く感じた。
「……」
―――疲れてるのかな?
頭の中では今までの事が走馬灯のように流れていく。
それは初めてケントと出会った日から、三人で遊びまわった日やタカヒロが加わってからの日々まで様々な記憶が流れて行った。
「そうか…もうあんな風にみんなでっていうのが減っちゃうのかな」
―――ケントがあけみを振るはずないしね…
ズキン…
つぶやいた途端、胸が軋むような感覚が起こった。
「ひ、一人が寂しくなってるだけだよね!」
―――それだけじゃない…
「ケント…―――…っ!」
無意識に名前をつぶやいただけなのにひどく胸が痛んで、頭の中にはケントとの記憶ばかりが繰り返されている…
―――なにこれ…これじゃまるで…!?
「…好きだったんだ…ケントの事」
今頃遅いか…
確かに、特別な存在ではあった。ずっと一緒にいれたら楽しいだろうなって…それ以上の気持ちを抱くのを心のどこかでストップしてた気がする。
今の関係を壊したくなくて…
「早くも失恋かぁ…自業自得だよね、はは…まぁ大好きな二人だし、温かく見守るか!」
―――だけど今日だけは…泣くのを許して…
自分の気持ちに気づいたその日に失恋してしまったゆみ…
叶わぬ想いなら、と二人を温かく見守ることを決意しその日は早々と床に就いたのであった。




