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背中押しちゃった?

カランカラン


「いらっしゃいませ!」


駅前の喫茶店のドアを押し開けると、店員さんの明るい声が飛んできた。


「お待たせ」


あの後、食堂を出ると、計ったようにあけみからメールが来たのだ。

――駅前の喫茶店にいるから――との内容。

今日は午後からの講義はなかったのでその足であけみの待つ、この喫茶店へと向かったのだ。


目的のテーブルに着くと、何やらあけみは落ち着かない様子であった。


「ありがとう、ゆみ!」


「それで?なんであんなことしたの?」


「え?」


いきなりの質問にあけみは?を頭上に浮かべている。


「だからーケントよケント!朝から避けてるんだって?」


「え!そ、そんなこと…!」


「落ち込んでたよ」


「え?」


否定しようとするあけみにむっとして少しきつく言ってしまった気がする…

―――なんであたしがこんなことしてんのかしら?…


「嫌われるようなことしたんじゃないかって気にしてたよ。意識するなって言っておいて自分が意識してどうするのよ」


「だって…」


「解ってる?ケントはあけみに嫌われてるかもって誤解してるのよ。一応のフォローはしたけど、このままじゃ誤解されたままになるわよ」


「そんな…!」


一気に青ざめてしまったあけみを見て、少し言い過ぎたかな?と罪悪感が芽生える…

うつむいてしまったあけみはそのまま動かなくなってしまった。


「大丈夫、あけみ?」


気遣うように声をかけると、ガバッと勢い良く顔を上げたあけみは決意を口にした。


「決めた!」


「へ?」


突然の言葉に思わず気の抜けた声が出てしまった。


「告白よ!こ、く、は、く!」


「あぁ…ってえぇ!?」


納得しかけて、思いもよらない発言に驚く。

そんなゆみを尻目に、すっくと立ち上がったあけみは


「こうしちゃいられないわ!ゆみ、私行くわね!ありがとう!」


そう言い残して一目散に店から出て行った…


「ま、まさか告白に行っちゃうなんて…はは」


誤解を解かせることしか頭になかったあたしは、今の状況に追いつけないでいた。

親友がいつも通りに戻ったことに安堵した自分がいる…だがモヤモヤとした感情はさらに強くなっていくのであった。


「…これで良かったんだよね」


ため息と共に漏れた呟きは誰もいない空間に静かに溶けていった。

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