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つぶやき


振り向いた先にいたのは、扉にもたれかかっているケントだった。


「け、ケント?もう、脅かさないでよ!」


「悪い。かなり真剣にやってるように見えたから声かけそびれた」


言いながらケントがこちらに歩いてきた。


「…っていつから居たの?」


「…十分ぐらい前か?」


さらっと言うと転がったボールを取ってもて遊びだした。


「声かけてよ!」


―――み、見られてたー!恥ずかしい!!


「…何かあったのか?」


「へ?」


何でもないように遊び転がしてるボールを見ながら言うから、一瞬何を言ったかわからなかった。


「真剣だったけど、我武者羅っていうかヤケクソっていうか。時々ボールにキレがなかったからな」


「そ、そうだった?」


―――ドッキー!!いや、確かに一心不乱でやってましたけど、そんなとこまで見抜かなくったって…ん?

…ってか、かなり見られてるんじゃない?!


時間の長さではなく、観察されていた事を思うと恥ずかしくなって思わずどもってしまった。


「べ、別に…久々だったから鈍ってたのかも、あはは。あーやっぱ定期的にやんないとダメかなー、ね?」


「…」


―――わ、我ながら苦しい言い訳…


ケントは納得してないようだが、それ以上は追及してこなかった。


「言いたくないんだったらいいけど。何かあったら言えよ?」


―――言えませんよ。あんた様のことですからね。


なんて言えるはずもなく、ひきつった笑みのまま気になることを口にした。


「あ、ありがとう…ところでさ、うまくいったの?」


「何が?」


―――言わせんなよ…


でも気になる。

ケントは何のことかさっぱりわからないって顔をこっちに向けてる。


「その、あけみと…」

「!…聞いたのか?」


言い終わらないうちに、驚いた顔のケントが聞き返してきた。


―――ああ、うまくいったんだ。心配…いや、期待する事なかったんだ。あけみを断るなんてしないよ、ケントだもん…


「そ、そっか!よかったね。あーあけみに彼氏ができちゃったかぁ。あたしも彼氏ほしいなぁ。そうだ、あけみに相談しよ!ってことで先行くわ!またね!」


「あ、おい!待てって!」


―――待てるかバカヤロー!


私は一目散にその場を走り去った、


・・・。

「最後まで聞けって…」


そんなケントのつぶやきなど、知る由もなく…


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