7.突然の召集令状
『召集令状 浄化の旅への帯同』そう書かれた一枚の紙。それが届けられたのは、メーティス学園で卒業式があったであろう日から半年ほど経った頃だった。
「これは強制ですか?」
「いえ。任意ではありますが、是非ともシルヴィア様にお力をお貸しいただきたいと。陛下よりのお願いでございます。」
何がどうしてこうなったのかとシルヴィアは頭を抱えている。届けられた召集令状には、ダークホール浄化の旅に帯同してほしいといった内容が書かれている。そもそもダークホールとは何なのか。もう、そこから意味が分からない。
「ダークホールなんてワード、一言もゲーム本編には出てこなかったのに。」
シルヴィアは思わず呟いた。ダークホールなる物が王国内各地に出現しており、その周辺で魔物が暴走たり、凶暴化して騎士団でも手を焼いているとの事だった。確かに、ミニゲームで魔物を倒したりする事はあったが、それは難しくもなく学生の魔術や剣術でも簡単にやつけられるレベルの魔物であった。そして、シルヴィアは実際に生薬採取の際に、実際に魔物と戦っているが、シルヴィア自身はそんなに苦戦をした事がない。リヴィオはボロボロになっていたが…。騎士団が手を焼くような強い魔物が本当にいるのだろうか。そして問題はダークホールと魔物よりもその旅のメンバーである。
「王太子エミリオ殿下、公爵領令息アーノルド様、侯爵家令息ランドルフ様、辺境伯家令息オズワルド様、聖女でもあるイレーネ王女殿下、そして隣国の皇子でロゼフィアーレに留学していたノエル殿下。なぜそこに、平民ヴィアが加わるのでしょうか?」
苦労して苦労して交流を避けてきたメインキャラの面々。それなのになぜ今になって気近寄らなければならないのか。
「店を空ける事はできませんので、他の白魔術師をあたってください。」
シルヴィアは震える声でそう答えた。断ったら首が飛ぶかしら。その時は隣国まで逃げるしかないわね…などと考えていた。翌朝、王太子エミリオ殿下が直々に店に合わられるまでは。
「どうしても君に帯同願いたい。他の白魔術師では何人いても君の足元にも及ばない上に、保護対象となってしまう。」
「…それは、過大評価が過ぎますわ。」
シルヴィアの店は確かに繁盛しているが、白魔術師としての能力がどうとか、シルヴィア自身が保護対象から外れるかどうかなんて分かるはずがない。
「いや、私自身の目で見ている。残念だが、諦めてやれない。」
「僭越ながら、殿下とお会いするのはこれが初めてかと…。」
「ヴィア殿はご存知なかったかもしれないが、私が変装して冒険ギルドに紛れ込んでいる事も多々ある。先日、臨時でパーティーを組ませて貰ったが、それはもう素晴らしい戦いぶりであった。」
「…。」
シルヴィアは心当たりがあり過ぎて、反論も出来なくなっていた。そして、王太子殿下直々にお願いに来られたのであれば、これはもう逃げられない。そう思い、がっくりと肩を落とし半泣きで答える。
「…謹んでお受けいたします。」
そう答えた瞬間に、外で待機していた文官たちがゾロゾロとアトリエの中に入ってきた。何やら難しい文章がたくさん書かれた契約書を2部ずつ並べられ、全てにサインをすると1部ずつだけ持ち帰り、残りはアトリエの机に積んで帰った。続けて王宮専属の針子たちが入ってきて、シルヴィアの採寸を始めた。シルヴィアは放心状態のままくるくると動かされ、張子たちは身体の隅々まで測り終えるとそそくさと帰って行った。
「じゃあ、明後日には迎えが来る。よろしく頼む。」
どうやらこれでやる事は終わったらしく、エミリオは深々と頭を下げてアトリエから出ていった。
「夢ならいいのに。」
シルヴィアはアトリエの机にぐったりと倒れ込んだ。




