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ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
七章.新たな展開、

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60/60

60.イタチごっこ

「やりにくいな……。」


エミリオが思わず呟く。アンティカの街では自分たちしか人間がいなかったため、全てのオーガが勝手にシルヴィア達のところに集まり、それを蹴散らせば良かった。しかし、今回は住民が避難を続けているし、負傷して逃げ遅れている自衛団や騎士団の姿もある。そのためオーガが散らばってしまい、彼らを守りながらだとなかなか前には進めない。また、人間に魔術を当てないように気をつけなければならず、大きな魔術も使いにくい。


「【雷魔術 白蛇雷鳴】」

「【炎魔術 刺突蒼炎】」


そんな中、オズワルドとランドルフが物理攻撃と魔術攻撃の合わせ技を繰り出す。以前シルヴィアが馬車で提案した新技だ。上手く住民たちをかわしてオーガに攻撃を仕掛けている。物理攻撃単体よりもかなり威力が上がっているため、一撃でオーガの動きを止める。


「オズワルド、ランドルフ!すごいです!いつの間に技を完成させていたんですか?!」

「【氷魔術 一射絶冷】」

「え?」


何も教えていなかったノエルまで弓との合わせ技を発動した。さすが魔術の天才。3人の成長に感動しつつも、このままじゃ埒が明かないと判断する。


「エミリオ、ランドルフ、オズワルド、ノエルは住民と負傷者の避難に回ってください。私とアーノルドでイレーネをダークホールまで連れていきます。」

「了解!」

「イレーネを頼んだ。」

「こちらは任せて。」

「分かった。」


ノエルからも返事が返ってきた事にも感動しつつ、アーノルドとシルヴィアはイレーネを挟むようにして立つ。他の4人は四方に散らばり、オーガを倒しつつ避難誘導を始めた。


「私たちも行きましょう!」

「そうだね。」

「よろしくお願いします。」


3人は真っ直ぐ前を向いて頷く。シルヴィアが自分たちの周囲数メートルに【土魔術 重力増大】をかけ続け、それに引っかかるオーガのみをアーノルドが斬る。あちこちのオーガを相手にしなくていい分、先ほどまでよりも確実にスピードを上げて進み始める。オーガが相手なので魔術の技が飛んできたり、空から攻撃を受ける事はなく、シルヴィアとアーノルドだけでもイレーネを守りながら進む事には問題なさそうだ。オズワルドが二つ返事でイレーネを任せてくれた事に気がつき、シルヴィアは少し遅れてまた感動していた。



「これですね。」


街の中心部に浮かぶダークホールの前まで無事に到着した。最初は実体のない黒い空間かと思っていたが、ドラゴンの皮膚に突き刺さった事により、コレが何かしらの物体である事は確定した。今までにいつくものダークホールを浄化してきたが、一度も触れてみた事はなかったのだ。


「絶対に魔物は近づけませんので安心して浄化を。」

「ええ、ありがとう。もちろん信じているわ。」


イレーネは優しく微笑んだ後、真剣な表情に変わりダークホールに向き直る。そして、両手をかざして【浄化】を始めた。


「これは……。」


今回もまたいつも通りあの音とネガティブな感情が流れ込んでくる。いつも通りのはずのその現象にシルヴィアは大きく目を見開いて驚く。


「アンティカと同じ、『妬み』だね。間違いない。」


アーノルドは真っ直ぐダークホールを見据えたまま頷く。


「……。」


同じ感情のダークホールは初めてだ。元々同じ感情のダークホールが発生する可能性があるのか。もしくは……。


「浄化したダークホールはまた別の場所に再び現れるのかもしれませんね。」


イレーネの浄化する姿を見守りながら、シルヴィアは

胸騒ぎを覚える。


「そうなると、我々のやっている事の意義が分からなくなってくるね。」

「……そうですね。」


国中のダークホールを浄化すればそれで終わると思っていたこの旅。しかし別の場所でダークホールが再生するのであれば、ここまま旅を続けてもイタチごっこをさせられるだけだ。


「どうしたものか。」


シルヴィアが呟くと同時にイレーネの【浄化】は終わり、その欠片はキラキラと輝きながら北の空へと消えていった。

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