41.魔道具レンタルサービス始めました
時間を少し巻き戻す。スッドの小島でシルヴィアたちが魔物たちを八つ裂きにしていた頃、王都のアトリエでは今日も千客万来の大盛況であった。
「あれ、まだヴィアちゃんいないのかい?」
「そうなんですよ。今日はどうしましたか?」
「この前もらった薬が苦いみたいで、子どもが全然飲んでくれないんだよ。」
母親の後ろからひょこっと3歳くらいの男の子が顔を出す。
「そっか。じゃあ、お薬が苦く無くなるビアンカ特製魔法のジュースをあげよう。こっちに座って。用意してくるね。」
ビアンカはアトリエの奥に一度引っ込み、コップを3つ乗せたトレーを持って戻ってきた。
「魔法のジュースが2つ。お水が1つあります。今その薬持ってますか?」
「ああ、これだよ。」
「ひとつもらいますね。これをちょっとのお水に溶かして。」
「ふむふむ。」
「まず魔法のジュースをひとつ飲む!」
男の子はコップの3分の1くらいはいった魔法のジュースを飲み干す。
「次にお薬を飲む!これを全部飲んだら魔法のジュースをもう一回飲めるからね。」
「分かった!」
男の子はお薬を勢いよく飲み干し、口の中に薬が無くなった瞬間に魔法のジュースを差し出す。
「はい、魔法のジュース!」
「のめた!まずくなかった!」
「すごい!えらいね!」
褒められた男の子はとても嬉しそうだ。
「ビアンカ、この魔法のジュースいくらだい?売っておくれ。」
「あー。」
ビアンカは苦笑いして母親の耳元に近づく。
「実はコレは普通のフルーツジュースなんです。」
「え?」
「口の中をコーティングしてから飲むと、少し苦味がマシになるし、薬を飲んだらもう一回飲めるというご褒美効果もあるんですよ。」
「そんな事が…。」
「とろみのあるジュースなら何でも代用できるので、好きなもので試してください。あ、でもジュースにはお薬混ぜないでくださいね。魔法のジュースが不味くなったら意味ないので。」
「分かったわ。ありがとうね。じゃあ今もらったジュースのお代だけでも…」
「ああ、いいのいいの。有り合わせで作っただけだし。また、何か買いにきてね。お大事にー。」
ビアンカは母子に笑顔で手を振って見送る。入れ違いで見慣れた大男が入ってきた。ジルドだ。
「よお、頼まれてた素材取ってきたぞ。」
「ありがとうございます、ジルドさん!」
「かなり頑張ったと思うが、ここより難易度の高い採取場所は俺には無理そうだ。他を当たってくれるか?」
ビアンカはジルドが差し出した袋の中身を確認する。
「なかりいい状態の物ばかりですね。量もこんなにたくさんありがとうございます。全部、買い取らせていただきます。ちょっと上乗せしときますね。」
「ああ、助かる。」
ジルドはニカっと笑って頷く。
「それで、ひとつ相談なのですが、ヴィア様特製魔道具のアクセサリーを付ければ、更に難易度の高いのが採取場所にも入れるんじゃないかと思うんです。」
「そりゃまあそうなんだが、嬢ちゃんの魔道具なんて高くて手が出せねえよ。」
「ジルドさんにはいつも助けていただいているので、特別に月々1000ソルで貸し出します!」
「1000ソルで?そんな低価格で貸し出して大丈夫かよ。こっちはありがてぇが、もってかれちまったりしねぇか?」
「なので信用ある人、もしくは常連さんだけのサービスにしようかと。2年間レンタルされた方は、その後のお支払いは無しでお譲りします。」
「そりゃいいな。月1000ソルなら、その効果ですぐに元は取れるだろ。」
「毎度あり!また素材の採取もよろしくお願いします。」
ジルドに簡単な解約書を書いてもらい、魔道具のアクセサリーを貸し出した。『素早さ10倍、筋力10倍、体力10倍、魔力10倍、守備力10倍、魔力抵抗力10倍』の魔術が付与されたネックレスである。日本円にして月々1000円相当。2年払いで24000円はかなりお買い得である。ちなみに、一見さんやそこまで信用のない人がレンタルする場合はデポジットとして2年間20000ソルの前払い。途中で壊れずに返還した場合は残りの期間のお金を返金する仕組みを取ることにした。
こうして、ビアンカの思い付きで王国初の魔道具のレンタルサービスが開始された。最初は常連客がこぞってレンタルして行ったが、その効果を目の当たりにした他の冒険者が前払いでいいからレンタルしたいと殺到し、しまいには騎士団からも大口の注文が入り始めた。王国の冒険者、騎士団の戦闘力が数段格上げされた事は言うまでもない。
アトリエの薬はほとんどリヴィオが1人で作ってしまっていたため、暇を持て余していた王宮の白魔術師たちがここぞとばかりに魔道具のアクセサリーの量産を始めたのだった。(もちろん魔術付与の仕方は出発前にシルヴィアが伝授済み。)
ここまで、ジルドが魔道具をレンタルしてから3日の事である。




