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ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
一章.プロローグ

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3.ひとりぼっちの作戦会議

「うーん…。」


次の日も、シルヴィアは寝衣のまま私室に閉じこもって考え事をしていた。つい先日倒れて意識を失ったばかりなので、それを咎める者もいない。昨日必死に書き留めたノートを眺めながら、ベッドの上をコロコロと転がる。


「ストーリーはメーティス学園で始まるのよね。この国の貴族の子どもたちは全員入学するマンモス校。マンモス校…そうだわ!」


シルヴィアは勢いよく起き上がった。


「そもそも、学園に入学しなければいいのよ!」

(注意:貴族の子どもたちは全員入学します)


腕を組みながらウンウンと頷く。


「マンモス校なのだから、私1人くらい抜けたってストーリーには何の影響もないはず!」

(注意:シルヴィアがストーリーのヒロインであり主人公です。)


勢いよくベッドから飛び降りてクローゼットに向かい、取っ手に手を掛ける。


「あ、開かない…。」


5歳のシルヴィアでは開けることも出来なかったのでベルを鳴らし侍女を呼ぶ。


「ビアンカ、そろそろ着替えるわ。お父様に交渉しに行くの。」

「シルヴィア様?ご挨拶ではなく交渉ですか?」

「そうよ!いいこと思いついたの!」


ワンピースに着替えたシルヴィアは意気揚々と父の執務室に向かった。






「ダメだ。」


しかし、シルヴィアが持ち込んだその交渉は、即却下される。


「メーティス学園への入学はこの国の貴族子息令嬢の義務だ。貴族の名を語る以上、避けては通れない。」

「…分かりました。再考して参ります。」


パタンと執務室の扉を閉めると、ガックリと肩を落とす。


「お父様、私に激甘だからいけると思ったんだけどなぁ。」


扉の横には必死で笑いを堪えるビアンカがいた。


「くく…く…そんな訳ないじゃないですか。」

「ビアンカ、笑いが漏れているわ。」

「すみません。ふ…。」


じとりとビアンカを睨め付けたが5歳のシルヴィアがやっても可愛いだけだ。


「まあ、いいわ。部屋に戻って考え事…じゃない休むから、軽食だけ運んでちょうだい。食欲がないの。」


この言葉に流石にビアンカも笑いを引っ込めてお辞儀をする。


「かしこまりました。」


部屋に戻ると再びノートを取り出して睨めっこを始めた。







翌朝、シルヴィアは公爵家の書庫に足を運んでいた。国立図書館には劣るが、かなりの蔵書数である。


「まずはこの国の事を知った方がいいかしら。」


そう言うと、王国の創立神話や歴史書を手に取り、片っ端から読み込んでいった。


「ふむふむ、なるほど…。」


学んだ知識を簡単にまとめると、ロゼフィアーレ王国は建国3000年の王政の国であり、建国王は現在の国土を魔物の侵略から守り抜いた英雄である。そのため、現王族も英雄の子孫であり、自ら戦い国を守る王族として国民からの支持も高い。建国から現在まで、他国からの大きな侵略や占領もなく、またこちらから周辺国に侵攻する事もなく、比較的平和な国である。


文明は現在日本には劣るが、魔術が使えるおかげで前世の記憶があるシルヴィアにとっても、日常生活で特に不便は感じない。魔術はその強さや魔力の量に差はあけど、誰でも使えるものであって、基本的に生活ツールとして使われている。また、魔術式が組み込まれた道具なども比較的安価で普及されており、魔力量が少い者はそういった物を使用している。


貴族は魔力の強いものと縁組をして、その家の魔力を上げようと努力するため、一般的に平民よりも魔力の強い者が多い。逆に言えば魔力の高いものほど権力がある。高い魔力は何のために使用するのか、それは対人用ではなく、対魔物用である。この国の貴族は、その高い魔力で領民・領土を守るための存在である。なるほど。






「シ、シルヴィアはあんなに難しい本を理解できるのか?」


書庫の前を通りかかった長兄のヘリオスが驚いて足を止めた。


「1ヶ月ほど前までは、簡単な絵本を読む程度でしたが、急に人が変わられたように…。」


書庫の前で心配そうにシルヴィアを見つめていたビアンカが答える。


「あの、お茶会で倒れた日からよね。やっぱりヴィアは賢い子だわ。」


次姉のアイリスがフワリと微笑む。ドトーリエ公爵家の女性陣はみな、呑気である。


書庫前のざわめきを他所に、シルヴィアは『ロゼフィアーレ王国の歴史』の知識を得た。

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