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ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
四章.海を越えたダークホール、恋愛パート

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29.ビアンカとリヴィオのお留守番

その頃、王都のアトリエでは。


「いらっしゃいませー。」

「よお、いつもの魔法薬3つずつ頼む。」


アトリエに入ってきたのは冒険者の装いをした大柄の男性、ジルドだ。


「あら、久しぶりです。遠征でも行っていたんですか?魔法薬3つずつですね。」


ビアンカが体力回復薬と傷薬を3つずつ紙に包む。


「お待たせしました。全部で4500ソルです。」

「ああ、ありがとうよ。ところで、嬢ちゃんはいねえのか。また採取か討伐か?」


強面だが礼儀正しいジルドはお礼を言いながらお金をはらう。


「今回は王宮からの召集で特別任務に行っているんです。」

「お、王宮の特別任務?やっぱ嬢ちゃんは只者じゃなかったんだな。」

「ええ、ヴィア様は凄い人ですから。」


何故かビアンカが得意げである。


「でもよう、嬢ちゃんがしばらく戻らないんなら、嬢ちゃん特製魔術薬がそのうち無くなっちまうんじゃねえのか?」

「それはご心配なく。ヴィア様を連れて行く代わりに王宮の白魔術師様を5人も派遣してくれたので、作る方は問題ありません!」


ちなみに嬢ちゃん特製魔術薬とは、このアトリエの売り上げトップ3の事で、第一位が特製傷薬。怪我をしているということは大ピンチ、という事で守備力アップ、魔術耐性アップの特性付き。第二位は体力回復薬。体力を回復しなければいけない状況、それは頑張らなければいけない時、という事で攻撃力アップ、スタミナアップの特性付き。第三位は魔力回復薬。魔力を回復する時は魔術をたくさん使う時、という事で一時的な魔力上限値アップの特性付き。

しかも値段は他で売っている三大回復薬とほとんど変わらないため、一度使うとみな必ずリピーターとなり、飛ぶように売れているそうだ。


「嬢ちゃんの代わりが王宮の魔術師様5人…。もはやこえーよ。」

「ですが…」

「ん?」

「採取に行けるスタッフがおらず、材料が足りなくなる可能性がっ!」


ビアンカが大袈裟に頭を抱える。シルヴィアもそれを心配し、『白魔術師5人か…』と嘆いていた。


「おう、そんな事か。それなら仲間に声かけて、嬢ちゃんのアトリエに優先的に回すように声掛けとくぜ。」

「本当ですか!助かります!」


ビアンカはカウンターから前のめりになって頭を下げる。


「はは、受注採取は本来1.5倍で受けるんだが、そのままの値段で取ってきてやるよ。何を取ってくればいい?」

「簡単な採取はリヴィオができるので、出来れば少し難しい物を…。今リスト書きますね!」


ビアンカはレジ横のメモにスラスラと材料の名前を書いていく。


「こんな感じですかね。全部でなくても、取れたものだけ売りに来ていただければ助かります!ヴィー様の特製保管庫がありますので、数はいくらあっても問題ありません。」

「おお…。なかなか難しい注文ばかりだな。嬢ちゃんはいつもこれくらいの採取を?」

「そうですね。もっと訳のわからないものも沢山取ってきますよ。新薬開発用に。」

「…。ち、ちなみにリヴィオはどの辺の採取ができるんだ?」

「リヴィオ!」


ビアンカが呼ぶと、店の奥からリヴィオが顔を出した。


「はい、何でしょうか。」

「貴方、ヴィア様から採取の許可をもらえてるのってどこまでだったかしら?」

「そうですね、スッド海岸くらいまででしょうか。」

「は?そりゃだいぶ前の話だろ?最近ではかなり強い魔物も出てきて下級の冒険者たちはなかなか足を踏み入れられない場所になって…」

「3日前に行ってきたところです。」

「え?」

「海水や海藻、イカに貝なんかも大量に取ってきてくれてたわよね。」

「はい。」

「ええっ!リヴィオ1人でか?」

「…そうです。」


驚くジルドにムッとするリヴィオ。


「心外ですね。僕が弱い訳じゃありません。マスターが強すぎるだけですから。」


その通り、とアトリエにいる全員が頷いて同意した。

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