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ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
三章.二つ目のダークホール、回想

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25.ラヴィア登山

翌日、ラヴィア火山に到着した一行は早速山を登り始めた。イレーネを中心に、先頭をシルヴィアとエミリオ、左右をランドルフとオズワルド、殿にアーノルドとノエルが付いて、魔物の間を駆け抜ける。今回は魔物の討伐、殲滅が目的ではないため、全てを相手にしなくてもいい。シルヴィアが【重力】【磁石】で通り道にいる魔物を集めて、エミリオが斬り捨てる。後ろからくる魔物についてはノエルが【凍結】で動きを止めて、アーノルドが止めを刺す。ランドルフとオズワルドは取りこぼした魔物の対処を担当しているが、出番はほとんどない。言わばイレーネの護衛だ。


最短経路でダークホールの目撃された場所を目指して2時間ほどで辿り着いた。


「着いたな。」


ランドルフが手にしていたハルバードを地面に突き立てる。


「イレーネ、平気か?」


エミリオが振り返り、イレーネの無事を確認した。


「…っ。え、ええ大丈夫ですわ。浄化を始めます。」


見るからに疲れ切った様子のイレーネをシルヴィアが引き止める。


「待ってください、先に回復を。【白魔術 超回復】」


白い光がイレーネを包み込み、キラキラと輝いて消える。


「ふふ、シルヴィアの魔術は本当に綺麗ね。ありがとう。」


顔色が良くなり呼吸も落ち着いてきた。


「ありがとうございます!今日も無事にお守りできて良かったです!」


イレーネに褒められてシルヴィアのテンションが上がる。


「ふふ。さあ、ここからは私の仕事ね。」


イレーネは柔らかく微笑むと、ダークホールに近づき両手をかざして浄化を始める。


「【浄化】」


するとダークホールからは前回と同じように黒い泡が溢れ出し、何かの声も聞こえる。


「今回は怒ってるいるようですね。」

「誰か、もしくは大勢の人あるいは何かの負の感情が固まってダークホールになっているのかもしれないな。」


オズワルドが首を傾げる。


「確かに。王城にもそういう文献があったはず…。」


エミリオがオズワルドに同意する。


「あっ。」

「何か思い出しましたか?」


シルヴィアは何か思い出したらしいエミリオに問いかける。


「いや、何でもないよ。勘違いみたいだ。」


絶対に何か思い出したのだと思ったが、エミリオは首を横に振り、口を噤んでしまった。


「負の感情か。苦しみに怒り…」

「他にも、悲しみ、虚しさ、不安、妬み、恐れ、憎しみ、嫌悪。とかですかね。」

「これほど多くの魔物に影響を及ぼす感情なんて、一体…。」

「…。」


浄化の旅の果てにあるものに、各々が多少の不安を

感じながらイレーネを見守る。やがて、透明になった元ダークホールは、粉々に砕け散って前回と同様どこかに飛んでいってしまった。


「終わりました。」


イレーネが振り返り笑顔を見せる。浄化の力は聖女にしか使えないため、どれほど体力と魔力を使うのかは分からないが、2時間ぶっ通しで山を駆け上るより疲れはマシなようだ。


「すぐに下山しよう。日が暮れるまでに街に戻りたい。」

「登りと同じ陣形でいいか?」


ランドルフがエミリオに確認する。


「いや、逆にしよう。後方を気にしながらの移動は疲れただろう。帰りは私とヴィアが後ろを行く。」

「了解。じゃあ先に行くよ。」


アーノルドが身を翻して出発する。


「…。」


ノエルも無言で頷くと、それに続いた。


下りは魔物が少なくなっていることもあり、1時間ほどで麓にたどり着き、朝出発した街まで戻ってきた。魔物の返り血を浴びた身なりは【清浄】で整え、そのまま冒険者が利用する食堂でご飯を食べた。食事が終わった後はすぐに解散して、宿でゆっくり休む予定であったが、シルヴィアは今日もまた別の人物の部屋に連れ込まれてしまう。先日と同じように扉の前でくるりと回りながら、シルヴィアはとにかく早く横になりたいと心の底から願っていた。

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