24.シルヴィアのトラウマ
「さあ、少し遅くなってしまったが、今夜は決起集会としよう。」
今夜泊まるホテルにチェックインして荷物を置いた後、一同は街の中心部にある少し高級なレストランに集合した。実は全員揃って食事をとるのはこの旅が始まってから今日が初めてとなる。昨夜までは、貴族用の部屋があるホテルに泊まっていたため、食事は各々の部屋で個別に取っていた。今夜も幸運なことに、この街の中ではランクの高いホテルに泊まれることになっているが、貴族用の部屋はなく、こうして外に食事に出てきている。
「早速ひとつ目のダークホールを浄化できた事に乾杯!この調子でサクッと他の場所でも浄化していこう。」
エミリオが乾杯の音頭をとり、運ばれてきた料理に手をつける。う、うまい。
「ふふ、美味しいわねヴィア。」
「ほんと、美味しそうに食べるね。」
「え?」
口には出していなかったはずなのに、両横にいるイレーネとアーノルドにズバリ思っていた事を指摘されて、さらに温かく微笑まれる。
「す、すみません。」
がっつきすぎたかな…。
「いいのよ、そのままで。ヴィアを見ていると幸せな気持ちになるわ。」
公爵家でマナーはきっちり教え込まれたから、おかしくは無いはずなんだけど…。やっぱりこの3年でおかしくなっちゃったか…イタッ。
「何するんですか!アーノルド様!」
おでこにデコピンをくらって、涙目になりながらおでこを押える。
「難しい顔しないで、美味しく食べよう。」
「…はい。」
もうデコピンはくらいたくないので、ただただ美味しく頂こうと思う。このお肉美味しい。こっちのスープも。両サイドから温かく見守られて全部の料理を美味しくいただいた。
食事が終わると、コーヒーを飲みながら明日の作戦会議を始めた。
「明日はラヴィア火山でダークホールの浄化を目指す。先月、騎士団と冒険者パーティーによる魔物の討伐を行ったが、その際に目撃されている。一度魔物は殲滅しているが、ダークホールの影響でまた数を増やしている可能性もある。十分に気をつけてくれ。」
ラヴィア火山と聞いてシルヴィアの体がビクッと揺れた。やっぱりそこか…。
ラヴィア火山はシルヴィア討伐依頼を受けた中で、唯一重症者を出してしまった場所だ。それまで3割程度の力しか出していなかったが、ラヴィア火山以降の場所では5割くらいの力で参戦するようになった。もう二度とあんな思いはしたくない。目の前であんな大怪我をさせてしまうなんて…私がもう少し力を発揮していたら、とずっと後悔していた。なぜ力を抑えていたかというと、それはもちろん『目立ちたくないから』というのが大前提だが、私が全てやっつけてしまって騎士団の矜持を傷つけてはいけないし、周りの冒険者のやる気や成長も奪ってはならない。そうはならず、ひとりの重症者も出さないギリギリのところ、それがラヴィア火山までは3割の力だった。しかし、ダークホールの影響が増大し魔物の数も強さも増したことでそれは難しくなった。
ワイバーンの首を落とすのが後数秒でも遅ければ、あの騎士は死んでいたかもしれない。頭の中に浮かんできた過去の映像に眉を顰める。
「ふぅ…。」
シルヴィアは大きく息を吐き、コーヒーの香りで気持ちを落ち着ける。幸いあの騎士は無事に復帰していると冒険者ギルドを通して連絡をもらっている。過去の事を悔やんでも仕方がないため、シルヴィアはその教訓だけ明日のラヴィア火山に持って行くことにした。




