22.エミリオが見た真実
エミリオは初めに冒険者ギルドに向かい、有名人らしい彼女の事を尋ねた。ギルドマスターはすぐに誰のことであるか理解した様子だったが、顔を青ざめて口を噤む。そして冒険者の個人情報は当人の許可なく伝えることはできないと答えた。
「では、彼女に許可を…。」
「いかなる人物にも漏らすな!と脅されている。」
ギルドマスターは食い気味に回答する。
「なるほど。」
それは可哀想だ。
「では、これはどうでしょう?彼女が参加する依頼で複数パーティーが参加できるものがあればお声がけ頂くと言うのは。」
「ふむ、それくらいであれば問題ないか。しかし、ギルドに登録が必要ですよ、殿下。」
「ほぅ。」
一応変装してきたのだが、完全に身バレしていたようだ。王太子だと気づいていながらも個人情報を守り切るとは大したものだ…と一瞬思ったが、きっとその白魔術師が怖すぎてのことだと思い直した。
「問題ない、今から登録しよう。」
エミリオはさっさと登録を済ませると、「連絡をよろしく頼む」と言って冒険者ギルドを去って行った。
ギルドマスターは数日後、約束通り彼女が参加する討伐依頼の情報をくれた。
「え、こんなにあるのか?」
彼女の依頼は、その月のカレンダーの最後まで数日おきにびっしり埋められていた。冒険者の事をそんなに詳しく知っている訳ではないが、普通は依頼をひとつずつ、もしくはついでに解決できるものを2、3くらい入れるものではないのだろうか。なかなか解決せず予定が遅れるかもしれない、怪我をするかもしれないし、それこそ死んでしまうかもしれない。こんな予定の入れ方をするのは考えなしの無鉄砲か、余程自信があるのかどちらかだろう。そして彼女はきっと後者だ。
公務の合間を縫ってエミリオは彼女と同じ討伐依頼に二度、冒険者として紛れ込み参加した。そこで見たものは想像の百倍くらい壮絶なものであった。最近多発している魔物の大量発生と凶暴化の連絡に対し、『騎士団と冒険者ギルドの協力でうまく抑えられている』との連絡を信じていた私が大馬鹿者であった。それは、あの白魔術師がいるから可能であっただけで、彼女がいなければそのほとんどが失敗に終わっていただろう。ひどければ全滅もあったかもしれない。
白魔術師はアーノルドから聞いていた通り、補助魔術での全員の能力の引き上げと、常時回復を常に行い、さらに誰よりも多く魔物を捌いていた。もちろんロッドなど生ぬるい武具ではなく、森の中での討伐ではバトルアックス、平原での討伐には弓を使用。さらに、常時回復で追いつかない大きな怪我をした者には個別に【超治癒】を施し、痺れの出た者には内服の魔法薬を配り、火傷や凍傷を負ったのもには塗り薬の魔法薬を配りながら。
「彼女1人で討伐にきた方が余程楽なのでは…。」
そう思うほど、こんなに味方がいるにもかかわらず彼女は孤軍奮闘していた。その経験から、ダークホールの浄化の旅は少数精鋭で回る事を決めたのだ。もちろんあの白魔術師を加えて。その他のメンバーは少なくとも彼女の足手纏いにならない事を軸に選んだ。アーノルド以外にはこの事実は内緒にしている。こんな話を聞いても、実際に目にしていなければ信じられないだろうし、彼らのプライドも気にしなければならなかった。




