15.プリモの森へ
「今日は1番近くで目撃されているダークホールに行ってみようと思う。そこでイレーネの【浄化】が有効かどうか判断できるはずだ。」
「上手くいくといいのだけど…。」
イレーネは少し不安そうだ。
「場所は?どれくらいかかるんだ?」
ランドルフがエミリオに問う。
「ここからすぐの森の中だ。入り口までは2時間ほどで着く。そこからは徒歩での散策となる。ダークホールに近づけば近づくほど魔物も多く強くなるそうだ。かなりの数を討伐しながら進むことになる。」
「まあ、そのためのこのメンバーだからね。問題ないと思うよ。」
アーノルドは笑顔で頷く。
「…。」
無言で頷くノエル。
「イレーネは守るが、お前は保護対象には入れんぞ。」
こちらも安定の冷たさ、オズワルドだ。シルヴィアはだいぶ嫌われている。
「もちろん、そのつもりで来ていますから大丈夫です。私の事は空気とでも思ってください。」
「ふふ、空気か。いい例えだね。」
ピリピリした空気の中、アーノルド様が穏やかに微笑みかけてくれて嬉しい。
また昨日と同じメンバーで馬車に乗り、街から1番近いプリモの森に向かった。向かう道中も荒狂う魔物を遠目に見つけたので、弓で撃ち抜いておいた。
「ここだね。準備はいいかな?」
「ええ。」
「いつでも。」
「もちろん。」
「大丈夫です!」
「…。」
馬車から降りて森の中へと入っていく。馬車には護衛の騎士を配置し、保護魔法もかけてあるのでダークホールに近づかなければ大丈夫だろう。
「おい、お前。自慢の武器たちはどこにある。」
「え?ああ、重たいので【圧縮】してあります。ほら。」
ピアスにしてあるファルシオンと弓、そしてネックレスにしているバトルアックスを見せた。馬車の中で弓は使っていたのだが、オズワルドは別の馬車に乗っているため、実際に使っているところも【圧縮解除】したところも見ていない。
「は?」
「ヴィアのやる事に、我々凡人の頭ではついていけないよ。」
シルヴィアの代わりに、エミリオが答えた。しかし、このメンバーの中に凡人などいるはずがないのにとシルヴィアは思う。ザッザッザッとかなりの早足で歩いているが誰も遅れを取らない。シルヴィアと違い、イレーネ以外は皆大きな武器を持っているが、その素早さに驚く。しばらく進んだところで、シルヴィアは目を細めて遠くに焦点を合わせる。
「【土魔術 圧縮解除】」
前方にポイズンホーネットの群れが見えた。そんなに強い魔物ではないのだが、毒を持っている上に数が多い。シルヴィアはその姿を確認した瞬間、素早くバトルアックスの圧縮を解除した。
「【土魔術 重力増大】」
まずは飛び回るポイズンホーネットに魔術をかけて地面に這いつくばってもらう。
「【土魔術 磁石】」
「【補助魔術 速度上昇】」
ホーネット群れをひとまとまりにした後、ヒュンッとひとりスピードを上げてホーネット団子の真上に飛び上がる。そのままバトルアックスを振り下ろし、全てまとめて粉々に打ち砕いた。武器の圧縮解除してから僅か3秒。
「は?」
「え?」
「わぉ。」
「ヴィア、すごいわ。」
「さすがだね。」
「…。」
皆が追いつく数秒の間に、いつもの癖で巣を探してしまう。しかし、この先しばらく旅を続けなければならない事を思い出し、ホーネットの巣を採取するのは諦めた。




