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元おっさん、今は魔女。〜美醜逆転の世界でイケメンなブスを囲ってます〜  作者: 狛千代


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EP:8 新たな住人

「さぁて、どうしたもんか」


結局、ついて行きたいというオズの意志を変えることは出来ず、二人で出た島に、4人で帰ってきた。


船に乗ってから、マスクを外した彼らは、それぞれ全く違う表情だった。

何だか胃が痛そうなアゼルと、それを心配するフィス。

1人だけハイテンションな様子で忘れ物がないか再度チェックしていたオズ。


俺はそれを眺めつつ、どうしたもんかなと頭を抱えていたのだけれど、あっという間に島に着き、俺たちは一先ず屋敷へと帰った。


森の中に、ひっそりと館は存在していて、洋風の屋敷は何度観ても圧巻。


所々、ツタで覆われた壁も入り込むように咲いた薔薇もおとぎ話の中みたいで、俺と同じ感想を持ったらしいフィスが、それはそれはキラキラした瞳であちこち見て回っていた。


「空いてる部屋は見てのとおり沢山あるから、片付けしちゃおうか」


そう声をかけると、フィスとオズはこちらを振り向いて同意の返事をしてくれた。


その間、アゼルは夕食とお風呂の準備をしてくれるらしい。

一先ず部屋は俺の部屋の近くにして、部屋の片付けをと思ったのだけど…。


「既にだいぶ綺麗やなぁ…」


オズの一言に、俺とフィスは頷いた。

アゼルは定期的に屋敷を掃除しているらしく、殆ど片付いており、ホコリもない。


2人の荷解きを手伝うだけであっという間に引越し作業は終わり、丸でコピーペーストされたような部屋は2つとも個性で溢れた。


フィスの部屋には、図書館から持ってきた本がどっさり、中には「執事教育」や「人の為になるには」など、中々難しそうな元もあった。


オズの部屋は、医療器具と大事に抱えてきた骨格標本のコッコちゃんが佇んでいる。


難しそうな文献やポスターなんかを綺麗に整頓していくオズは、意外としっかりしてるんだな、と思わざるを得なかった。


「さて、こんなもんか!お疲れ様、2人とも」


「大体終わりましたね…」


「いや〜汗かいたわ…家具とか移動し始めたらキリないで、部屋も広いし…」


3人揃って廊下でぐったり伸びる。

外は既に暗くなり始めており、アゼルの消えていった厨房の方からは美味しそうな匂いが漂ってきていた。


美味しそうな匂いと、乾いた喉が張り付く感覚があって、はぁ…と思わず息をついた。


あっという間に人が2人も増えて、ワクワクしているのは一体なぜなんだろうか。


俺はシェアハウスなんて経験が無かったけど、こんな風に一緒にご飯が食べる奴がいて、しかも顔がいいなんてラッキーすぎて死ぬんじゃないか?


ひしひしと感動を噛み締めていると、アゼルがエプロンを外しながら顔を出した。


「ご苦労様でした、夕食の用意ができましたよ」


「わーい、待ってました!」


そういえばすっからかんのお腹。


その日の夜は、アゼルの作った美味しい夕食に舌鼓を打って、楽しく食事した。


フィスとオズが二人で過ごしていた頃の話を聞いたり、国の流行りだったり。


俺は聞いたことない文化ということもあり、すごく前のめりで聞いていたけれど、アゼルに行儀が悪いと言われて姿勢を正したりもした。


♦︎♦︎♦︎


みんなの配慮もあり、一番風呂を頂いた俺は、自分のバルコニーで夜風を浴びていた。


やってみたかったんだよね、黄昏れる夜…。

部屋に戻る前にアゼルがくれたホットココアが美味しくて、口角が緩む。


ほんのりと口内に広がる甘みが、安心と程よい眠気を運んでくれた。


ふぅ、と息をついた頃、突然ドアがノックされる。


「はーい?」


「邪魔するで」


入ってきたのは、まだお風呂に入っていないオズだった。

俺は手招きするとオズが近づいてきた。


「いやぁ、ゆっくりしてたとこすまんな。お礼言っとこうと思ったんや」


「お礼?言われるようなことは何もしてないけど…」


俺の言葉に、オズは楽しそうに笑みを浮かべた。

八重歯がきらりと見えて、その笑顔は顔面国宝級。

思わず拝みそうになるのを抑えると、雰囲気は一気にシリアスになっていく。


「俺たち、どっかに逃げたいなって話してたんよ」


夜空を見上げながら、オズがぽつりと呟いた。


「安心して住めるような、静かな場所に。見た目を気にしなくても、仮面をつけなくても、目を見て笑い合える生活がしたいな〜言うて」


返事をせず、うんうんと頷いて聞く。

確かに、今日初めて外の世界を見て、顔だけで奴隷の扱いを受け、ボロボロにやせ細ったイケメンたちを見るのはとても辛かった。


ここまでの格差を産んでしまった過去に驚かざる負えなかったのが事実。

特に、オズとフィスは立場上肩身が狭かっただろう。

その辛さは、俺が全て知ることはきっとできない。


黙っている俺に申し訳なくなったのか、オズは頭をかいた。


「あー…つまり、強引にはなったけど連れて来てくれてありがとうな。俺たちを受け入れてくれて、ホンマにありがとう、この恩はこれから必ず返していく」


「恩だなんて…私は、2人が生きていてくれたおかげでこうして会えたことが凄く嬉しい。ありがとう、出会ってくれて」


重い因果を背負う2人に、出来ることがあるかは分からないけど、ここで静かにみんなで暮らして行けたらと思った。


そして、俺の言葉に嬉しそうに笑うオズを見て、これからもこうやって人を助けて行けたらな、と浅はかながら思ってしまったのだ。

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