トントンとピコと雲のお城
丘の上で、子ぶたのトントンとニワトリのピコが空を見上げていました。
「ねぇピコ、あのもくもくの雲、どんな味がすると思う?」
「えっ、食べる気!? もー、トントンったら!」
トントンはまんまるなお鼻をくんくんさせながら言いました。
「ミルクの味かな? それともわたがし?」
「空気の味だよ、たぶん!」
ピコが笑うと、トントンも笑いました。
でも――トントンの目は真剣です。
「ねぇピコ。ぼく、空に行ってみたいんだ」
「……ほんとに?」
「うん! 雲の上で、ジャンプしたい!」
次の日の朝。
「できたーっ!!」
丘の上に、トントンの大発明が並びました。
竹のつばさに、風船をたっぷりくっつけた“そらとぶそり”!
ピコはあきれ顔で言いました。
「トントン、それ……絶対どこか飛んでいくやつだよ」
「だいじょうぶ! 風が味方してくれるさ!」
そう言うと、トントンはピコを乗せて――
「しゅっぱーつっ!」
びゅうぅぅぅぅぅっ!!
そりはふわっと浮かび、くるくる回って、風にのって上へ上へ。
「うわああっ! 空だぁぁぁっ!」
「きゃああっ! トントン前見てぇぇっ!」
風が髪と羽をくすぐって、二人は雲のトンネルに突入!
白いもくもくを抜けると――そこには、キラキラ光る "くものおしろ" が!
「おーい! 地上からのおきゃくさんじゃー!」
もくもくの階段を登ると、
もこもこの体をした「くものおうさま」が現れました。
頭にはふわふわの王冠、ヒゲはまるで綿あめみたい。
「ようこそ、そらのおしろへ!」
「わぁ〜! おしろが全部、雲でできてる!」
「ふふ、ここでは雲でなんでも作れるのじゃよ」
王さまは笑って、雲のパンケーキを差し出しました。
「ほれ、食べてみなさい」
トントンはおそるおそる一口。
もぐもぐ……もぐ……。
「おいしいっ! 口の中でふわって消えた!」
「でしょ? 雲のパンケーキは、心が軽い子にしか食べられんのじゃ」
ピコもぱくっ。
「うわぁ、甘いのに軽い……夢みたい!」
「夢じゃよ。空の夢じゃ」
お腹がいっぱいになった二人に、王さまが言いました。
「では、おみやげをやろう」
雲のつぼみをひとつ、手渡します。
「このつぼみを地上に植えれば、風の日に花が咲く。
その花びらを一枚食べると、また空に遊びに来られるのじゃ」
トントンはキラキラした目でつぼみを抱えました。
「ありがとう、王さま! また遊びにくるね!」
「待っておるぞ〜。パンケーキ食べ放題でな!」
「えっ!? ほんと!? 行く行く!!」
ピコが慌ててつっこみます。
「トントン、食べ放題につられちゃダメでしょー!」
「でも王さまが言ったんだもん!」
笑いながら二人は雲のすべり台でしゅ〜〜〜っ!
風が笑い声を運んで、丘の上にやさしく降ろしてくれました。
夕焼けの空を見上げながら、トントンがつぶやきました。
「ねぇピコ、また空行こうね」
「もちろん。今度はお腹いっぱい食べよう」
「ピコ、いいこと言うね!」
「……でしょ?」
ふたりの笑い声が、空に吸い込まれていきました。
雲の向こうでは、王さまがくしゃみをしています。
「へっくしょん! あの子たち、また来るな……わし、パンケーキ焼いておかねば!」




