しあわせのうた
なにかを求めて
走っていたことだけは
ほんとうだ
ひとのさまざまな欲望のなか
なにかを求めて
走っていたのは
なぜだったのだろう
ほんとうは
なにが欲しかったんだろう
光のない暗闇の中で
懸命に前をみて
走っていたと
想う
けれども顔もみえず
言葉も聴こえず
そんな夜の道で
だれに出逢いたかったんだろう
傷つくことに
慣れてしまった黎明に
悪夢のない夜を
泣きたい想いで
希んでしまった
自由だけを
手に入れたかったあのころ
ハッピーマニアのこの胸の闇の奥に
鳥と魚が自由にちょろちょろと
動き回るものだから
わたしはそこで初めて
生きてゆけるかもしれないくらいの
傷だらけの羽と鱗だけが
光り輝く未来のガラスの世界を
みることができるのかもしれない
と
いう希望
に
すがりつけたのかもしれない
奪い取られたものなんか
この胸の
どこにもないから
と
強がって
しあわせに憧れることは
けっして心の弱さなんかじゃないから
と
見栄張って
変わらなければ
なにもかもが
真っ白な世界へ行ったとしても
わたしじしんが
変わらなければ
けっしてしあわせになんか
なれやしないから
待っていては
ダメだ
ダメだ
ダメだ
それをようやく知り得たわたしは
この悲喜劇の降り頻る
どこかだれかの
涙のあとを
ただ好きなだけ照れながら慕い
希んでいても
なにも変わらない
夜を楽しみながら
空のうえにいらっしゃる
あのおかたに
いつの日にかに会って
愛してもらえる
だ
なんて
ちょっとだけ真剣に考えて
すこしだけでも
陽気になって
くすくすと
ちいさな小声で
笑ってみても
よい?




