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~魂鎮メノ弔イ歌~  作者: 宵空希
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流亜

手毬が小学生の頃、近所には同い年くらいの少し変わった子がいた。

その子の名前は流亜。

名字も知らないような、単なる見知った子。

そもそも近所に住んでいるのかも分からないのだ。

だから同じ学校の生徒とかではない。

いつも同じ公園で会うから、単純にその公園内だけでの知人であった。


初めは変な子に声を掛けられた、そんな風に思っていた手毬。

流亜と名乗ったその女の子は小学生の割にはませていて、いつも同じ分厚い本を読んでいた。

公園に来ておきながら本ばかりで、たまに手毬に話し掛けて来るかと思えば、すぐに興味を失くしたように本へと視線を落とす。

高慢な態度からしても手毬が好むようなタイプではないし、とにかく面倒くさかったのでただ辺り障りなく接していただけだった。


そんなある日の出来事。

その女の子は、手毬の目の前で死んだ。

交通事故だった。

その日も特に代わり映えのないやり取りをして適当に接していたのだが、手毬が目を離している間に流亜は公園の通りの道路でトラックに轢かれてしまった。

手毬は今でもその時の光景を思い出す。

さっきまで普通にお喋り出来ていた子が、もう喋れない真っ赤な色をした肉片に変貌した時の事を。

手毬はその場で気持ちが悪くなり、余りの現実味のない状況に嘔吐した。

ショックを受けたというよりは、この肉の塊が単純に気持ち悪く、とても不衛生な物だと思って吐いた。

けれどもそれを見ていた目の前の流亜は、ただ「汚い」と。

手毬にそれだけ伝えて来た。




後で分かった事がある。

流亜は魂鎮メのどっかの家系の人間の生まれ変わりで、『異端児』と呼ばれていたらしかった事。

それは流亜本人に聞いた事で他の誰からもその名を聞いた事はないのだが、霊装が出来て霊力も高いのだから本当なのだろう。

あの時、流亜は手毬を選んだ、だからこうして手毬の内に宿っている。

もしかしたら手毬は憑りつかれているのかもしれない。

だがそれでも構わないと思うのは、案外手毬自身が、もしかしたら出逢った当初から。

高慢な少女に、少なからずの興味を抱いていたからかもしれない――。

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