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1.ストレス

 ぎゅるぎゅると、可愛いらしい音が鳴る。


「お゛腹空いたー」


 声は可愛らしくない。


「五月蝿い」


「びぇーん」


 嘘でしょ、顔を殴られた。酷い(泣)。


「ちょ、何で殴るのさ。痛いよぉ」


「喋らないで、今イライラしてるから」


「そんなこと言ったってさ、こんなところにランダムテレポーターがあるのが悪いじゃないか、だからうっかり踏んじゃったんだよぉ」


「お前が悪い」


 パーティー一同から突っ込まれ、大きな衝撃を受ける。


「何でさ!理不尽過ぎない?」


「これがダンジョンで芋揚げ食べながら、鼻歌歌って、どんどん前に進む奴の台詞か」


「これで死んだら祟ってやる」


「それより、私の荒巻鮭知らない?」


「また食い物の話しか、荒巻鮭何ぞ知らんわ」


「ねぇ、物音聞こえない?」


「それより、荒巻鮭は?」


「うるせー」


「びぇん(泣)」


 頭叩かれた、痛い。理不尽だ、これは虐めというものではないか?


 その時、ダンジョンの奥で、ズルズルと異音が聞こえる。


 奥に続く曲がり角から覗けば、蟻食のような生き物が、カップラーメンを食べていた。


 目の錯覚だろうか…目を擦る。


 ズルズル、、、やっぱりラーメン食べてた。


 目線をダンジョンの隅に移すと、荒巻鮭があった。


「私の荒巻鮭!!」


「ビルマ!?」


 荒巻鮭を取り返しに、単身突っ込む。


 学生証でこの魔物を検索する。モンスター名、食らう物。脅威度F+の魔物だ。


 食らう物は、舌を何重にも伸ばし、ビルマを拘束しようとする。


 しかしビルマは刀を抜き、学生服を揺らしながら駆ける。


 迫りくる舌を腰を捻り、後ろ跳びで躱す。そして地面に片手をつき、片手倒立の状態から、軽やかに立ち上がった。


 高橋ビルマ、それが油津河(あぶらつが)高校を通う、彼女の名だ。


「ビルマ、上っ」


 天井から蛭の集団が、ボトボトっとビルマに向かって落ちてきた。


 ビルマは走りだし、一気に加速することで蛭を回避した。


 この雑食蛭の、集団であった場合の脅威度はC+。


 鈍重でこそあれ、物理ダメージ無効の厄介極まりない魔物だ。


「めんどくさいが、凍らせるか」


 ダンジョンでの火魔法はNGである。死にたくなければ、死なせたくなければ絶対に使うな、そう教わっている。


 ビルマは、伸びきった舌を刀で両断し、切られた痛みで震える食らう物に肉薄した。


「死んで」


 上段から幹竹割りの要領で、刀を振り下ろす。


 しかし食らう物は怯むことなく、タックルを仕掛けた。それを回避できるわけもなく、ビルマの小さな体は、吹き飛び壁に激突した。


「グっ」


 か細い悲鳴が、ダンジョンに響いた。


「ビルマ!」


 雑食蛭を凍らせ、ビルマの援護にきたパーティー一同は、苦い顔をする。


 どうやらこの食らう物は、通常個体よりも賢いようだ。

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