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シャリーネン結婚相談所を利用した結果~モブ視点~


煌びやかなホールの中、玉座の前にて悲劇は起きたの。いや、今回の場合は喜劇と言うべきかしら。


あ、ご挨拶が遅れてしまいましたわね。私はこの国、ホンシャミン王国のマレニー・ヒラン伯爵令嬢ですの。


まあ、とにかく私の話を聞いてくださらない?


事の発端はもっと前からあったかもしれないけれど、とりあえず今はこないだあったパーティーでの話をしてもよろしいかしら?


****


国王生誕パーティー。今日は国王の誕生日でしたの。

各国の重鎮を呼び、国同士の絆を強めるために貴族のほとんどは成人している子供たちを連れ、参加していたわ。

他国のものに見初められればより国同士の絆ができると考えた上で、国王が貴族の義務として婚約者のいない子供をもつ皆に強制していたから。

例え、下級貴族だとしても他国の者に見初められれば、それだけで一世代だけだとしても上級貴族になれるからか、貴族たちの批判は少なかったの。

まあ、このパーティーでの出来事は国に影響する為、参加する子供は皆、王妃直々に最低限のマナーをチェックされ、王族の影により普段の行動を見張られ、それをクリアできたもののみが参加できるのだけれど。


そんな国内の貴族が集まり、各国の重鎮たちが入場し終わったあとのこと。王族の入場で問題が起きたわ。


この国、ホンシャミン王国の国王が王妃様をエスコートし、その次は本来第一王子が居るはずなのだけれど、第一王子ではなく、稲穂のような金の髪、広い海のような青い瞳。在り来りな表現で賞賛される見目美しい絵本通りの王子のような見た目の第二王子のシルヴァーク・ホンシャミン様が次期国母となる現公爵令嬢エメティリア・メリーアンフォン様をエスコートしていたの。


国内の貴族は驚いたわ。もちろん、私も。他国の重鎮たちはよくわかっていなかった様だけれど。

まあ、そんなこんなで会場はざわついてしまったのだけれど、それも一瞬のうちで静かになったわ。何故かと言われると、勢いよく会場のドアが開いたから、かしら。それとも、入場してきた方たちに驚いて、かしら。


ドアが開いた原因は、先程、登場しなかった王族……ホンシャミン王国の第一王子ハーネスティ・ホンシャミン様。見た目は双子ではないのかと疑うほど第二王子とそっくりだ。違いは第一王子には目の下の黒子がないことだろうか。


彼が本来エスコートすべき女性、エメティリア・メリーアンフォンは既に第二王子と入場していたの。

そんな第一王子は娼婦と見間違うほど牛のような乳を半分以上出し、下着が見えるのではないかと言うほどスリットの入った露出の激しい、王族よりも目立つギラギラしたドレスを着ている女性をエスコートしていたわ。本当に下品。それに主役の王族より目立つなんて有り得ないわ。


「父上!なぜ、私が謹慎など!それにシミューの入場を拒むなんて!なぜです!…なぜハーネスティの隣にエメティリアがいる!?まさか…!貴様が父上達を惑わしたのか!魔女め!貴様との婚約なんぞ破棄し、今すぐシミューと結婚する!」


そういえば、入ってすぐにそう叫んでいたわ。物凄くうるさかったわ。音楽がよく響くように設計されたホールでは余計に第1王子の声を増幅させていたのもあるかしら。

行動もだけれど、内容も酷いものだったわね。エメリティア様は下級貴族も平民もみな、非公式の場では名前で呼んでねって言うほど気さくで老若男女問わず人気ものでみんな憧れているというのに。なんて言い様なの。


そんな第一王子は、その腕に胸を押し当てるシミューと呼ばれた女を連れ、玉座に座る王の元へ歩き出す。


まあ、よく分からない女性、それもあのような女性を王の近くに連れていくなんて。いくら王子でもあれはありえないわ。


その時、2人が玉座に近付く前に一人の女性が出てきましたの。


「陛下、挨拶前に失礼しますわ!毎度、ご利用ありがとうございます。シャリーネン結婚相談所、シャリーネン・アンダーリリィアでございます。今回のお取引ですが、このままですと契約違反ですが、宜しいのでして?」


銀色の長いストレートな髪、目は何か布のようなものを巻き付け隠しているはずなのに誰の支えもなしに、見えているような動きをする彼女の名前に、先程の王子より驚いたのか各国の重鎮などが「彼女が、あの」「シャリーネンだって?」と呟いてるのが聞こえた。


私も聞いたことがあります、長寿のエルフで、この世界の全ての神々に祝福され愛され育ったシャリーネン・アンダーリリィア様。彼女の行動ひとつで滅ぶ国もあれば、繁栄する国もあるほど伝説のような存在の方ですの。まさか、今は結婚相談所なんてものをやっているなんて知りませんでしたわ。


いえ、シャリーネン結婚相談所自体は知っていたのだけれど、そこのトップがシャリーネン様ご本人だなんて。


「いや、その…」


陛下が答えられず吃っていらっしゃると、シャリーネン様が追い打ちをかけます。


「陛下、私、今日は第1王子が病欠だと聞きましてよ?確かにあれは病気かもしれませんが、あれを病気と仰るなら、今すぐ契約実行して下さるかしら?」


「う、うむ…」


「契約違反したいのでしたらお止めしませんわ。もう私はこの国に2度と来ないですし、違反した場合による、この国の衰退は免れませんわよ」


「なっ、それは困る!どちらも困…」


陛下が困り果てていました。神の愛し子がこの国に来ないというのは神に見放された国として衰退していくのも容易に想像できます。それにプラスでシャリーネン様との契約違反で衰退するなんて、この国はあっという間に地図から消えるでしょうね。



そしてそんな会話に割込む頭足らずなものがいたのです。

もうお分かりかもしれませんが第一王子でございます。


「なんだ貴様、たかが貴族のくせに、父上に強気に出る!それに父上はなぜこんな女の存在を許すのですか!衛兵!今すぐこの女を処刑……」


------ガシャーーーーン


まあ!シャリーネン様のことをご存知ないなんて。驚きですわ。

それにしても流石、神々の愛し子、シャリーネンさまですわ。


え?ものすごい音がした、ですか?

ああ、シャリーネン様を害する発言をしたので天罰が下ったのでしょうね。王子の近くのシャンデリアが落ちてきたのです。


皆様、あの王子の近くは寄りたくなかったんでしょうね。お陰で怪我人は王子とその横にいた…名前を忘れてしまったけれど娼婦の方でしたかしら。その2人だけで、怪我と言っても飛んできたシャンデリアに着いていた宝石が二人の皮膚を勢いよく何ヵ所か擦っただけで大した傷にはなっていませんが。


「ヒッ……」


腰の抜けた王子の前に煙が集まり、人型を象る。現れたのは漆黒のような髪の毛に黒い皮膚を持った異形のものとわかるほど美しい男性がたっていました。


「死にてぇのか?シャリーネンは神々が、毛先からつま先まで全て管理して愛して大事にしてる愛し子なんだよ?それを傷付けるのは以ての外、害する発言でもこの通りお怒りになる訳よ。そんで態々、精霊の中でもすーっごく偉い俺様、闇の精霊王をシャリーネンの護衛にって付けられてるんだからな。」


会場はみな、その光景に驚いていたわ。もちろん、私も。精霊が人の前に姿を現すなんて今まで無かったから。それも精霊王だなんて。


「ロンティス」


シャリーネン様の声が広間に響いたの。とても美しい芯の通った声は聞き惚れてしまいましたわ。


「なんだい、シャリーネン」


先程の闇の精霊王様は第一王子から離れるとまるで恋したような蕩ける表情でシャリーネン様を後ろから抱きしめていたの。


「護衛、嫌だったらアルティナと代わっても良いわよ」


「ちがっ!嫌じゃない!シャリーネンのそばに居たいからぁ…護衛の座奪ったんだよぅ」


さっきまで強気な態度だった闇の精霊王様が、原型を留めないぐらいべそべそ泣き出してしまった。

まあ、シャリーネン様は神々どころか精霊王様からも寵愛を受けていらっしゃるのね!


でもシャリーネン様はそんな精霊王様を放置して、陛下と話を続けますの。そんなドライなところも素敵ですわ。


「余計な話はここまでにして、陛下、どう為さるつもりです?今すぐ、ここで、誠意を見せるのか、見せないのか。はっきりしてくださいませ。」


「うむ。…んんっ、皆の者、この度はパーティー参加ありがとう。今回、もうひとつ皆に報告したいことがある。王太子をまだ決めておらんかったが、今回の件でわかった通り第一王子は病気である為、療養が必要である。よって、第二王子シルヴァークを王太子とし、王太子不在のまま、王太子の婚約者であったエメリティア公爵令嬢は第二王子シルヴァークの婚約者とする。」


陛下の宣言を聞き、国内の皆様も、各国の皆様も、納得したようでしたわ。第一王子が国王になんてなったてしまったらこの国は終わりですものね。安易に想像できますわ。


「俺が王太子ではない…?王太子不在だった…?」


ブツブツ言っている第一王子は、なぜか自分が王太子と思っていたようね。なぜそう思えていたのか不思議だわ。陛下もエメティリア様も第二王子贔屓していたわけではないから、何度もその事実を伝えていらっしゃった筈ですのに。どういう頭をしてるのかしら。


そんな第一王子は近衛兵に連れて行かれていったわ。娼婦の方を置いて。


なんで娼婦は残ったのか?ですか?


それはその時の私も分からなかったのですが、シャリーネン様が娼婦の方を連れていく手筈の近衛兵の方とお話しし、娼婦の方を引き留めましたの。


「シミュール・アンネレスタ様。この度はお疲れ様でした。もう無理はしなくて大丈夫ですわよ。それに‥貴方のご両親のことも気にしなくて良いのよ。申し訳ないけれど、貴方に気持ちを聞く前に貴方の家取り潰してしまったわ。だから貴方はアーヴランダ王国に帰らなくても‥いいえ、帰るところがないの。伯爵令嬢としての生活ももうできないわ。ごめんなさい」


まあ!あの娼婦の方、隣国のアーヴランダ王国の伯爵令嬢でしたの!いえ、まあもう平民でしょうけど。びっくりですわ!


「‥‥いえ、ありがとう‥ございます‥ぐすっ‥」


始めて娼婦のか‥んんっ、シミュール様の声を聞いた気がしますわ。


「私、ずっと、こんな体型だから、お父様とお母様にっ、玉の輿とか、最悪、王様の後妻になれるって、不敬なこと、言われて。こんな、みっともない格好させられて、好きな、服も、全部、捨てられて!そんな、なかっ、ハーネスティ王子が話しかけて、くれてっ、両親も、ハーネスティ王子を虜にしろって、言うから!でも、思った、以上に、馬鹿で!こんな格好で、こんな場所に、無理矢理!私、嫌だって言ったのに!それに!えっちなことしか!考えてなくて!触らせなかったけど!腕抑えてないといろんなところを触ろうとするし!気持ち悪かった!もう、最悪死のうかと思ってたの‥‥平民でもいいからこんな呪縛から離れたかったんです‥ありがとうございます‥シャリーネン様‥!!うぅ‥」


うわぁ、でしたわ。きっと会場にいた皆様、シミュール様に同情していましたわね。ええ、わたしも先程まで娼婦と言っていたのが申し訳なくなってしまいましたわ。


「いえ、いいのよ。そこまで思い詰めていたなんて。無理矢理な結婚、死にたいと思うほどの結婚は私は、反対よ。もちろん中には政略結婚の方もいらっしゃるのはわかっているわ。でも、死んでまでしていい結婚なんてないと思うの。」


そんなシャリーネン様の言葉で、このパーティーは再開しだしたわ。

そして、残念なことにシミュール様はシャリーネン様と共に会場を後にしたの。


シャリーネン様と話してみたかったわ‥。


****


そんなことがあったわけですわ!

話せなかったけれども、シャリーネン様のお姿を見れてとても幸せな一時でしたわ。


私もそろそろ婚約者を、と両親に言われており、残念なことに例のパーティーでは見初められなかったのでシャリーネン結婚相談所へいってみようと思いますわ。


ああ、そういえばあの第一王子は、どこかの塔に幽閉されて病死したと聞きましたわ。きっと天罰でしょうね。

シミュール様はシャリーネン様と共にシャリーネン結婚相談所の経営を手伝っているそうですわ。羨ましですけれど、あの体型で平民に落ちたら大変なことになるのは私でもわかります。きっと慰め者になることでしょうね。それがわかっていたシャリーネン様はシミュール様のご両親を追いやった責任としてシミュール様を保護してるそうですわ。


つい先日、シミュール様をお見かけしたのですけれど、首まですっぽり隠せるドレスでしたの。ただラインがピッタリでしたので、あれはあれで不味いのではと思ったのですが、伝えれませんでしたわ。‥まあ、シミュール様は幸せになってほしいですわ。


話しすぎましたわね。話聞いてくださって有難う。また機会があれば、お話ししましょう?

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