第58話 二人は心友
僕とジャイロはたまにケンカする親友、――心友？
小学校のクラスメイトに、ジャイロの心友とか大丈夫かって、よく、心配された。
大丈夫じゃないことなんて、何にもないんだけどな。
それとも、みんなも知ってたのかな。
ジャイロって、たまに誰かとケンカしないとゴリラになっちゃうんだ。
オレ、ハーフゴリラだからよって、ニヤニヤしながら言ってた。
ガキン！
デゼルが中退してからの数日間、ジャイロをはじめ、何人かの男子生徒がすごくイライラして、授業中、先生にガンをつけてたんだ。
そういう態度はよくないよって言ったら、やめさせたきゃ決闘に勝ってみなって、ジャイロに返されて。
中学生になったことだし、殴り合いは卒業して決闘するぞって、ジャイロ、刃を潰した模擬刀とはいえ、訓練用の片手半剣を持ち出してきたんだ。
その割に、「例の、マルスの使ってみろよ」なんて言ってきたから、たぶん、ジャイロは冷静だと思う。ゴリラにならないために、そろそろ、僕とケンカしたかったんだろうね。
ジャイロに勧められた僕の武器は模擬刀じゃなく、魔の海に浮かぶ伝説の孤島エッダ・ハマヌの、秘密の地下神殿に潜って手に入れてきた神代の秘宝。
こうやって説明すると、だから中二病やめろって、ジャイロに叱られるんだけど。
誇張でもなんでもなく、デゼルが水神になって海を鎮められるから上陸できた、そうでなければ近づけない魔境に、僕たち行ってきたんだ。
軍神マルスの祝福を受け、刀身に虹色の光をまとう、神代に鍛えられた小剣。
柄や峰の意匠も繊細優美な、芸術品のようでもある小剣だけど、神の祝福を受けているから絶対に刃こぼれしない。
僕、攻撃に小剣は使わないし、ふつうの小剣で片手半剣なんて受けられるものじゃないから、お言葉に甘えることにした。
小盾の方も、同じ地下神殿に納められていた、剣はもちろん、魔法まで弾き返してしまえる『アテナの鏡』。
ジャイロのための神剣も先に手に入れて、地下神殿の魔物はジャイロがそれで一掃してくれたんだけど、神代の武器の威力って、本当にすごいものだった。
何の話だっけ。
思い出した、決闘の話だよね。
僕たちが放課後の校舎裏で本格的な決闘を始めると、ジャイロのバスタードソードと僕のアテナの鏡がぶつかって、きらめく光の波紋が舞い拡がった。
刃をつぶした模擬刀でも、バスタードソードは重量で敵をへし折る攻撃もできるタイプの武器だから、止めるつもりで受けたりはしない。
かわすか、盾で受けながら後方に跳んだりして、衝撃を受け流すんだ。
もちろん、難しいんだよ。
たくさん、訓練したんだから。
僕の闘い方は小剣と小盾でのガードが主体で、敵のスキをついての闇魔法でかく乱、僕のペースに持ち込めたら勝負を決めに行くもの。
何度目だろう、ジャイロのバスタードソードに勢いよくはね飛ばされた僕が、体勢を崩すことなく着地した時だった。
「きゃ～！ サイファ様～!!」
僕とジャイロが決闘するの、見にきた女の子たちが騒ぎ始めたんだ。
デゼルがいなくなったら、急に、女の子たちが僕のことで騒ぐようになって。
すごく、やりにくい。
僕はガーディアンだから、女の子の悲鳴なんて聞こえたら、危ない目に遭って助けて欲しいのかと思って、つい、反応してしまうんだ。
ジャイロには集中力が足りねぇなって言われるけど、実戦で女の子の悲鳴が聞こえるのなんて、デゼルが危ない時に決まってるんだ。
その声が聞こえなかったら、闇主として失格だよ。僕は死鬼じゃない。
ガゼル様に言われたこと、忘れないようにしなくちゃね。
――サイファ様――
えっ!?
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【ご感想】羽海様より
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サイファは、比喩ではなくて本当に、自分と定期的に喧嘩をしなければジャイロがゴリラになってしまうと思っているのだろうなと考えると面白いです。ハーフゴリラもまだ信じているのでしょうね…
でも、ジャイロがお父さんのことをネタにできるようになっているのは嬉しいところです。
ジャイロもデゼルとサイファといろいろなところで戦っているはずなのに、どうしてサイファの言うことを中二病だと思っているのでしょうか。ジャイロ自身はどうやって説明をつけているのでしょう。それとも、正直に話すと中二病と勘違いされるとサイファを諌めているのでしょうか、後者だとしたらジャイロはやっぱり、印象よりはるかに頭がいいのだなと思います。
見た目で損をしていますね…
サイファが、戦闘中に女の子の悲鳴が聞こえたら反射で助けなければならないと思ってしまうというのが、なんだか格好良かったです。
様付けで女の子たちに騒がれても特に喜びもせず、デゼルを守ることばかりを念頭に置いていますし、もうサイファの目にはデゼルしか入らないのですよね…！
一途なところが素敵です。
☆ 返信 ☆
何でも信じてしまうさいふぁ様を面白がったじゃいが、真顔で深刻そうに、
「オレ、たまにケンカしねぇとゴリラになっちまうんだよ、ハーフゴリラだからよ！」
って、ゴリゲージがどうのと、さいふぁ様がどこまで、いつまで信じるのか、吹きまくった大ボラを、今のところ、信じて疑わないさいふぁ様です（ノ∀Ｔ）
（クラスメイトも絶対に加担してるこれ… さいふぁ様もたいがい、クラスのみんなから愛されています… 公国に二人といない、稀少な天然記念物として…）
でもホント、ゴリラ呼ばわりに怒り狂って暴れていた小学校時代からは想像もできないくらい、成長してくれましたよね♪
中二病については後者です。
おまえ以外、誰も信じねぇよ！ って、さいふぁ様がそれ系のワードを口にする度に、頭を抱えたくなるじゃいです。
何なら、それは公国のトップシークレットだ黙ってろコンチクショウと憤懣やるかたないくらい、じゃいの戦闘センスは抜群です。
じゃいはゲーム上、ガゼル公子と同格の存在（神に選ばれしモブリーダー）なので、スペックはなんと神童、なんと神童です…!?(; ・`д・´)
勉強が嫌いだから目立った成績じゃないだけで、やってない割にはかなりの好成績だったりします。デゼるんが編入してくるまで、さいふぁ様をおさえてのトップでしたからね…。
ガゼル公子に与えられているのが慈愛と正義の女神ユースティティア、愛と美の女神アフロディーテ、軍神マルスの祝福であるのに対し、
じゃいに与えられているのは風神エンリル、戦神アテナ、死の神タナトスの祝福なので、方向性はだいぶ違いますけれども。
ちょと待、誰ッ!? 風神エンリルと聞いてぶっと吹いたのは!? 作者も吹いたよ、正直に手を挙げなさい、怒らないから！(ノ∀Ｔ)ｂ
さいふぁ様、かっこよかったですか✨
ありがとうございます♪(*´∇｀*)
さいふぁ様の目にはデゼるんだけでなくガゼル公子も入ってしま（強制終了）
『たった一人の女の子を探す』ミッションは十歳でコンプリートしたさいふぁ様。
『たった一人の女の子を守る』ミッションに全身全霊を懸けて挑戦中なので、他の女の子を構う余裕はなく、女の子達がキャーキャー言ってる意味も、あんまり、わかってなさそう… はむだけに…
いまだ、人を疑うことを知らないさいふぁ様の中に、大切な誓いを守らないという考えは存在せず。
デゼるんを生涯、闇主として守り抜くと誓ってガゼル公子に認めてもらったからには、遂行あるのみです！(｀・∀・)９
それにしても、ガゼル公子の目にこそ、デゼるんしか入らないのに、そこらへんに落ちていたじゃんがりあんはむすたーに持ってかれるなんて… なんという悲劇…
素敵なご感想、ありがとうございました✨(*´∇｀*)
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【ご感想】しき様より
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第8話 悪役令嬢は町人Jにケンカを売る
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/781509349/episode/4477233
ジャイロさんを見下ろして暗黒微笑(？)を浮かべているデゼルさんを見て魅了されているサイファ様……恋なのか元々なのか……？
幸せだから問題ないですね！！
ここ、デゼルさんが大人の対応で胸がギュってなりますね……
本当のことを言えば丸く収まる訳じゃないですもんね……ここで自分以外が枝を折ったことにすれば、サイファ様(や他の子)が更に酷い目に遭うのは一目瞭然ですから……
でもあんなに学校に行きたがらなかったデゼルさんが、勇気を出して学校に来て、こんなに目立つことをして怖くない筈がないですよね。もしかしたらサイファ様に嫌われちゃうかもとも思いながら、それでも行動したんでしょうか……それくらいサイファ様はデゼルさんにとってなくてはならない存在って事ですよね……
だけど、やっぱり自分も大切にして欲しいなぁ……
あとシリアスな場面なのですが、「あれれぇ〜！」でどうしても某少年探偵が脳裏を過ぎり、デゼルさんもそんな感じで呼んでるのかなって想像して笑っちゃいました(笑)
☆ 返信 ☆
素敵なご感想、ありがとうございます✨(*´∇｀*)
このシーンのさいふぁ様、デゼるんの冷たい、闇色の怒りに魅せられています。
誰のために、何に対して怒るのか。
それを間違えなければ、真剣な怒りはこんなにも美しいんだって。
なんて美しいんだろう、と見惚れていたら、
冷たく微笑んだデゼるんがさいふぁ様はもちろん、ジャイロもスニールも庇うために身を呈すつもりだったことがわかって。
さいふぁ様にもようやく、デゼるんの微笑みの美しさの意味がわかったけど、『デゼルがしたの、僕がするべき、僕ができなきゃいけないことだった』って、すごく悔しくて。
だけど、同じようなことがあっても、きっとまた、僕はどうしていいかわからなくて、同じことになってしまうんだって、自分の力の足りなさが、すごく悲しくて。
どうしたらデゼルを守ってあげられるんだろうって、さいふぁ様は頭の中がぐるぐるに…
（はむのおつむには難問すぎたのだ…）
一方、臆病なデゼるんの方は誰かと闘うなんてしたくないけど、助けられる子を助けないなんて、もっとしたくないから闘っていて。
さいふぁ様が傍にいてくれることは支えであると同時に、嫌われたらどうしようって、とても怖いことでもあって。
でも、さいふぁ様には望む人を選んで、幸せになって欲しいと願うデゼるん。
デゼるんのデゼるんらしい振る舞いがさいふぁ様にとって受け容れがたいものなら、一緒にいても、きっと、幸せになってはもらえないからと――
失う覚悟をして、なけなしの勇気を振り絞って、闘いに臨んでいます。
（この、バカップルめが！ 二人とも、杞憂もいいところなのだ…）
とはいえ、エリス様の祝福を授かる前のデゼるんは、
この場の誰よりスペックが高いデゼるんが闘わないと、デゼるんより遥かにつらい思いをしている子供たちの誰一人として救われないこと、
せっかくの絶大な権力、神の祝福なのに、人を救うために使わなかったら宝の持ち腐れになってしまうこと、
そういったことを考えて行動している、超理系の策士に過ぎません。
合理的に考えているだけ（公徳心は高いとしても）で、自分を大切にしていないわけではないのですが、デゼル編を完結まで読んだ後だと、神々との闘いに入った後の印象に引きずられますよね…（汗）
ザ・転生者なデゼるんはもちろん、某少年探偵ごっこです♪( *´艸｀)
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【ご感想】羽海様より
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第17話 嵐の夜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/781509349/episode/4676862
何度読んでも辛い場面です。
幼い、しかも女の子であるユリシーズが、実の父親から顔を酷く傷つけられてしまうことも、そのユリシーズを救うことができる、救わなければならない人が、まだほんの子供にすぎないジャイロをおいてはいないということも…
その上嵐の夜になんて、コンディションまで最悪です…
☆ 返信 ☆
父親がいないのと、父親がケダモノなのって、どちらがマシなんでしょうね。
信じた人が結婚してみたらケダモノだった時、母親は『離婚して子供から父親を奪うことはできない』と考えるべきなのか『ケダモノから子供を守るために離婚するしかない』と考えるべきなのか。
私は、子供の幸せのためには『まともな父親がいる』しかないと思うのですが。
さいふぁ様とじゃいのどちらが不遇って、こんなのどちらも不遇としか言いようがないですよね…
