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サイファ ~少年と舞い降りた天使~  作者: 冴條玲
第二章 白馬の王子様
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第43話 四年二組のクラス発表『水神様への願い事』

 夏休みが明ける少し前、デゼルのグループ研究『水神様への願い事』が四年二組のクラス発表になるっていう連絡が回ってきて、びっくりしたんだ。

 いつの間にかクラスメイトの全員が参加してたから、クラス発表になったことには驚かなかったけど。

 九月一日からの三日間に渡って、大公陛下やガゼル公子をはじめ、公国の貴族諸侯の御前での、実際に願い事を叶える発表会になるっていうから。



 僕たちのクラス発表は初日、公国を縦断する大河の河川敷に堤防を整備するところから始まった。

 十数年に一度の大氾濫で、何度も、農地が水浸しになったり、家が流されたりして、流域の人々の暮らしが犠牲になってきたんだって。

 最初に、クラスの代表として壇上に上がったのはスニール。

 スニールが自分から、やりたいって言い出したんだよ。

 公費でつくってもらった白のスーツを着て、綺麗にとかした前髪をよそゆきにセットして、真っ赤な顔をして震えながら、それでも胸を張って、発表してた。

 ふふ、僕がデゼルからもらった闇主の礼装の方が、カッコイイと思うけどね。

 礼の取り方や立ち居振る舞いの素敵さなんかも、クラスの誰も、もう、僕には敵わないと思うんだ。

 夏休みの間に、帝国の皇子様に会っても失礼のないようにって、特訓したんだから。

 スニールは失敗したわけでも、駄目だったわけでも全然ないんだけど、僕とデゼルは格が違うなって、一生懸命なスニールの子供らしい発表を見て、僕、こっそり優越感に浸ってた。


 二日目は港と生け()の整備。


 三日目は地下水脈を利用しての井戸の掘り上げ。

 地下水脈を掘り当てるんじゃなく、地下水脈から掘り上げるって聞いたけど、僕には、意味がよくわからなかった。


 最終日の発表は、お姫様みたいなドレスを着たマリア。

 綺麗だったけど、僕はもっと綺麗なデゼルを見慣れてるから、とりたてて興味は引かれなかった。

 ジャイロもそれは同じだったみたいで、堅苦しいクラス発表を連日なんて、かったるいって顔してた。

 だって、デゼルの淡く輝くような銀の髪も、けぶるようなまつ毛も、透明感のある白い肌も。

 夢みたいに綺麗で、クラスメイトのどの女の子とも、比べ物にならないんだ。

 そんなデゼルが、僕が何かする度に、一喜一憂してくれるんだから、仕種と表情の可愛らしさまで抜群。

 デゼルと並んで遜色しないのなんて、きっと、ガゼル様くらいだから。

 そんなデゼルを独占できて、とっても、嬉しい。


 だけど、人魚姫みたいな水神のデゼルも綺麗だなって、発表会を楽しく眺めていた僕の気持ちは、最後の授賞式で吹き飛ぶことになったんだ。

★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ―――――――― ☆★


第1話 舞い降りた天使 ~たとえ、明日が見えなくても~

https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/781509349/episode/4636591


この後のサイファはデゼルと巡り合い、お互いを想い合うことができると分かっていても、やはり幼いサイファの絶望する様子を見ているのは辛かったです…

自分は誰にも好かれていないと思ってしまうのは、一番苦しいことなのだろうと感じました。

唯一お母さんはいましたけれど、サイファにとってお母さんは自分を好きでいてくれる人というよりは、自分が守らなければならない人だったのかなと思いますし。


そこに現れて自分を好きだと言ってくれた綺麗な女の子に、サイファが恋をするのは必然だと思います。

私がサイファの境遇にあっても、もしくはサイファよりは幸せな生活をしていたとしても、きっとデゼルのことを好きになっていたでしょう。


デゼルへの好きと他の人への好きが違うことから、デゼルには好きと言えないサイファが可愛かったです!

この歳で“好き”の違いが分かるのはすごいです、よほどデゼルへの気持ちは初めてで特別だったのでしょうね。

というか、散々殴られて惨めな思いをさせられても、ジャイロにお母さんに向けるのと同じような“好き”という気持ちを持つことのできるサイファは、やっぱりちょっと怖いです…

それと、サイファには、こうりがし、という言葉の意味を知ってもらいたいですね…


☆ 返信 ☆


素敵なご感想をありがとうございます✨(*´▽`*)


どうして誰も僕を愛してくれないんだろう、それって、とても悲しい気持ちだと感じて頂けて嬉しいです。

とりわけ、さいふぁ様はみんな好きな子だから、どうして好意が返ってこないのか、幼い心にたくさんの傷を負って、疲れ切って、もう眠りたくなってしまっているファースト・シーン。

ただ一人、傍にいてくれたお母さんは、まさに、さいふぁ様にとっては守ってあげなければならない人で。傍にいてくれたら安心できたのは、帰ってこなくなってしまったお父さんの方でした…。


そんな、さいふぁ様のもとに舞い降りた天使、デゼるんに心奪われたさいふぁ様の気持ち、共感して頂けて嬉しいです✨(*´▽`*)


ふふふ、デゼるんへの『好き』は。

胸がとくとく、とくとく、ときめいて止まらないという、さいふぁ様にとっての初体験。

九歳だって、この『好き』がどんな『好き』なのかはわからなくても、違いはわかります♪(*´▽`*)b

待てよ、どうかしたら。

天然なさいふぁ様のことだから、結婚する頃にも、違いしかわかっていなかったりして…!?( ゜Д゜)


さいふぁ様がジャイロやスニールのことも好きなのは、猫に引っかかれてなお、猫を嫌わない猫好きな人と同じ感じです。

猫に引っかかれても、裏切られても、猫好きな人は猫が好き。

なぜ猫が好きなのか、だって猫が好きだから。

さいふぁ様は人に対しても、猫にする以上の期待をしないのかもしれません。

人だけ特別あつかいしないというか。

物語には書く機会がありませんでしたが、さいふぁ様は猫も鳥も動物全般、大好きです♪(∩´∀`)∩


こうりがし…

そうですね、さいふぁ様の辞書の『こうりがし』の項目には、『子供にでもお金を貸してくれる人』としか…

ただ、知っていても借りたかもしれません。

お父さんが帰ってこなくなって、食べ物も、病気のお母さんのお薬もなくて、どなたか食べ物をわけてください、お母さんのお薬を買うお金を貸してくださいって、たくさんの人に頭を下げて回って、ようやく見つけた『こうりがし』。

他の誰も、さいふぁ様にお金を貸してはくれなかったのです。

知らない人にそうやって頭を下げて回るの、なかなかできないことなのに、できても断られ続けた幼いさいふぁ様。

ジャイロに殴られるより、たくさんの知らない人にお金をください、仕事をくださいって頭を下げて回らないといけなかったことが、遥かにつらかったみたいです。

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