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サイファ ~少年と舞い降りた天使~  作者: 冴條玲
第一章 舞い降りた天使
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第4話 闇巫女と闇主

 デゼルの甘くてやわらかな唇が、僕の唇にふれた。

 たぶん、一瞬のことだったけど、体が甘さに痺れたように動かなくて。


 デゼルの声が、まるで、夢の中から聞こえてくる声みたいに、現実感なく響いた。


“ サイファ様、デゼルの闇主(あんしゅ)になって下さいませんか。みんなを守るなら、時間がないの ”


 ――闇主って、なに?


 僕が聞いたら、デゼルが教えてくれた。

 闇巫女は、契った相手に闇の魔力を分け与えることができるんだって。

 闇の魔力と言っても、闇巫女が司るのは安らぎの闇。


 ――つまり、僕でもヒーラーになれるっていうこと?


 それも聞いてみたら、デゼルが月の妖精みたいに可愛らしく微笑んで、うなずいてくれた。

 闇主の務めは闇巫女を守ること。

 だから、回復役(ヒーラー)というよりは守護役(ガーディアン)みたいなんだけど、癒術(ヒール)くらいなら使えるようになるって。

 わぁ。

 それって、手を当てたら神様みたいに、怪我や病気で苦しむ人達を癒してあげられるっていうこと?

 すごいや。


“ ありがとう、サイファ様 ”


 あれ、なんで僕がお礼を言われてるんだろう。

 なんで様がついたのかも、わからないままだけど。


“ これで少しだけ闇魔法が使えるようになったはずですから、一緒に練習しましょうね ”


 もしかしたら、僕、やっぱり死んじゃったんだっけ?

 こんなことが起きたらいいなって、ずっと、夢見てたことを、死んじゃう間際の、本物の夢に見てるとか――

 僕、『マッチ売りの少女』のクライマックスを迎えてる?


 だけど、夢だとしても、ほんとうに、いい夢。


“ サイファ様、デゼルを残して死なないで ”


 そう言われたら、すごく、デゼルが愛しくなって――

 つい、デゼルをぎゅっと抱き締めて、僕の方からも、キス、返してしまって。

 夢なら覚めてしまうところだけど、甘くて、優しくて、あたたかかった。


 よかったのかな。

 僕には、まだ一度も、デゼルに言えてないことがあるのに。


 だけど、まるで雪解けのせせらぎみたいな、優しくて清らかで、心地好い冷たさの力が僕の中から湧いてきて。

 これが闇の魔力?

 意識を集中してみたら、あえかな聖光が僕の手の平から立ち昇った。


 わぁ。


 闇の神様(オプスキュリテ)が、見守っていて下さったんだ。

 僕の願い、叶えて下さったんだ。

 涙がこぼれそうになるのを懸命にこらえて、デゼルをぎゅっと抱き締めた。

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