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サイファ ~少年と舞い降りた天使~  作者: 冴條玲
第一章 舞い降りた天使
24/72

第24話 悪役令嬢は婚約破棄をたくらむ

「ねぇ、デゼル」


 お昼を過ぎた頃、何も食べられないまま、僕が神殿に戻ったら、デゼルが嬉しそうに迎えてくれて、お昼を一緒に食べようって誘ってくれた。

 僕、どうしたんだろう。

 朝から何にも食べてないから、お腹が空いてないわけないのに、どうしてなのか、食事が喉を通らないんだ。


「あの、ね? デゼルって、公子様と婚約してるの知ってる?」


 デゼルがきょとんと僕を見た。

 やっぱり、知らないんじゃないのかな。


「公子様が婚約したの? 誰と?」

「デゼルって、公子様に会ったことはあるんだよね?」

「うん。素敵な方よ」

「そう――」


 会ったことはあるんだ。

 素敵な方なんだ。


 なんだろう、胃がしくしく痛くなってきた。


「あのね、デゼル。公子様と婚約してるのは、デゼルなんだよ」

「え? ……え?」


 僕が真っ直ぐにデゼルを見詰めてそう言ったら、不思議そうに(またた)きしたデゼルが、ようやく、誰が公子様と婚約しているのかわかったみたいで、見る間に血の気を引かせて椅子を蹴立てた。


「違うよ、そんなの、私、知らないもの!」


 デゼルが全然、嬉しそうな様子には見えなくて、僕、とってもほっとした。


「サイファ様、手を、つないでもいい?」

「うん」


 つないだデゼルの手が、恐怖に冷たくなっていて。


「デゼル、怖かったら抱っこしようか?」

「うん」


 抱き寄せたら、デゼル、肩を震わせて泣き出してしまったんだ。

 そんなに怖かったんだ。

 デゼルって、すごく不思議で、すごく可愛い。

 素敵な公子様との婚約の、何が怖いのかわからないけど、僕にだけ懐いてくれるのは、すごく嬉しかった。


「サイファ様、ありがとう」

「今日はこの後、予定通り、クライスさんのところに行くの?」

「――うん、時間がないの。でも、少し、待って」


 デゼルが気持ちを落ち着かせようとするように、僕の胸に顔を埋めてきた。

 生まれて初めての衝撃に、僕、びっくりしてしまって。

 大好きな女の子に頼られるのって、電流が走り抜けるみたいな衝撃があるんだ。

 僕が自分で抱き寄せるのとは全然違う。

 とてつもなく甘くて、快くて、抱き締めた腕が動かない。

 デゼルを離したくなくて、いつまでも、こうしていたくなって――


「公子様のことで、少し、マリベル様に話してから行く。サイファ様に何かあってからじゃ、遅いもの」


 ――僕に?

 デゼル、僕に何があると思って、心配してるんだろう。


 デゼルがあんまり心配そうにするから、白い額にそっとキスしたら、デゼルの頬が綺麗な桜色になって、可愛かった。


 僕が机にラクガキされた程度のことで、泣きじゃくってたデゼルだから。

 多分、公子様のことも気にし過ぎなんじゃないのかな。

 ねぇ、デゼル。

 デゼルが公子様より、僕のことを大好きでいてくれるなら、それだけで僕なら平気だよ?

 だから、心配しなくていいんだよって、言ってあげなくちゃと思ったのに。

 デゼルが泣くことなんて、全然、ないんだから。

 涙を拭いて顔を上げたデゼルの表情が、眉を可愛らしく上げた頑張るモードで。

 まだ少し涙の気配を残した、透明感のある綺麗な蒼の瞳に、デゼルがなけなしの勇気を揺らしているのを見たら、今さら、言えなくなっちゃった。

 引っ込み思案で臆病なデゼルが、勇気を出して頑張ろうとしてるのに、水を差したくなかったんだ。

 マリベル様にお話しするだけなら、危ないことじゃないし、話はできるようになった方がいいよね。



  **――*――**



「サイファ様――!」


 夏休みの宿題を進めながら、しばらく待っていたら、デゼルが小鳥みたいな軽やかな足取りで、僕の胸に飛び込んできた。


「上手に断れました!」

「ぷっ」


 やだな、デゼル。

 ものすごく、可愛らしいドヤ顔。

 澄んだ瞳をきらきらさせて僕を見て、冷たかった肌も、すっかり艶々。


「よくできました」


 褒めてあげたら、わぁいって、嬉しそうにデゼルが跳ねた。

 波打つ銀の髪が夏の陽射しを弾きながら散って、キラキラ、とっても眩しかった。

★☆================☆★

  【漫画】はじめての邪神戦

★☆================☆★


https://www.alphapolis.co.jp/manga/153000069/756507764

小説版と少し違いますが、大筋、同じです。

ツッコミどころ満載のさいふぁ様の檜舞台、『はじめての邪神戦』、ご笑覧いただけましたら幸いです♪ヾ(´∀`*)ノ



★☆===============☆★

  点目のじじ様と遊ぼう!

★☆===============☆★


◆ 点目のじじ様からさいふぁ様のタイムスケールを頂いた ◆


8時 … ぼくがえらばれるよ(`・ω・´)シャキーン

8時半 … 母さんが言ったこと気になる

9時 … 母さんが言ったこと気になる

9時半 … 母さんが言ったこと気になる

10時 … 母さんが言ったこと気になる

10時半 … 母さんが言ったこと気になる

11時 … なんかお腹痛くなってきた。なんでかわからない。(´・ω・`)

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