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サイファ ~少年と舞い降りた天使~  作者: 冴條玲
第一章 舞い降りた天使
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第15話 夏休みのグループ研究

「ホームルームだぞー、着席!」


 先生が夏休みの自由研究について話を始めたところで、デゼルが手をあげた。


「先生、自由研究はグループでやってもいいですか?」

「ああ……、まぁ、いいよ」


 デゼルが眉をぴっと上げて、両のこぶしを握り締めて気合を入れるしぐさが、すごく可愛らしかった。

 僕がにこにこしながら眺めていたら、デゼルも嬉しそうに僕に笑いかけてくれた。


「一緒にやろうね、サイファ様」

「うん」


 デゼルは何をするにも、いつも、僕に一番に声をかけてくれるんだ。


「あと、ジャイロとスニールも誘うつもりなの」

「……え?」


 いつもなら、人見知りのデゼルは僕にしか声をかけないから、ちょっと、驚いたっていうか、残念っていうか。

 デゼル、夏休みの自由研究、僕と二人でしたかったわけじゃないのかな。

 僕、デゼルにも友達がたくさんできて、楽しく過ごせたらいいと思ってたはずなのに、いざ、デゼルが僕じゃない子に声をかけようとしたら、寂しいなんて――

 この気持ち、なんなんだろう。


「ジャイロ、スニール、夏休みの自由研究は決めた? まだなら、一緒にどうかな」


 二人とも、ぽかんとしてデゼルを見てた。


「は?」

「オレは、別にいーけど」


 ジャイロの返事に、聞いていたマリアが驚いた顔でまくしたてた。


「ちょっと、デゼル、どういうつもり!? 男の子ばっかり誘って、サイファ一筋じゃなかったの! しかも、スニールなんか誘うとか」


 ――えっ。

 デゼルが僕一筋って。


 えっと、それってつまり。

 マリアから見ても、そうなんだ。

 そう思ったら、なんだか嬉しくなってきちゃった。

 誰から見ても、デゼル、僕のことが大好きだってことだよね。


「好きなのはサイファ様よ。だけど、マリア、今の言い方はよくないと思う。私がスニールだったら悲しくなる。私にとっては、スニールもマリアも同じクラスメイトよ。マリアも一緒にやる?」


 マリアまで、ぽかんとしてデゼルを見た。

 聞いていたクラスメイトが、ぼくも一緒がいい、わたしも一緒にやる、と、どんどん集まってきた。


「私が決めるテーマでいい人は、誰でも、仲間に入っていいよ~」


 夏休みになったら、闇神殿前のあずまやでやるからと、待ち合わせを決めたデゼルは、いったん解散にしたけど。


「デゼル、何をしたいの?」

「トランスサタニアン帝国の第二皇子ネプチューンに会うために、何ができるか、サイファ様とジャイロには、一緒に考えて欲しいの。みんなには、水神様へのお願い事を」


 トラ……?

 ええと、皇子様に会うの? 闇巫女様のお仕事かな?

 ネプチューンってどこかで――

 あ、そうか。

 確か、三年後に公国を滅ぼしに来る人のはず。

 きっと、そんなことはやめて下さいってお願いしてみるんだね。

 だけど、水神様へのお願い事って、何のことだろう。


 デゼルに聞いてみたら、公子様が水神様のご加護を授かって、そのご加護をどう使えばいいか、闇神殿と公家で話し合ってるところなんだって。

 すごく強いご加護を授かったらしくて、雨乞いはもちろん、津波を起こしたり、逆に引かせたりするようなことまで、できるみたいなんだ。


 それ、帝国の人達が海を渡って攻めてくる時に、嵐を起こして戦艦を沈めちゃったりとか……。

 ……。

 駄目だよね、そんなの。


 僕、どうしてこんな残酷なこと、思いついたんだろう。

 そんなことをしたら、帝国の人達がたくさん死んじゃうのに。

 戦艦をすべて沈めてしまえば、公国は助かるんじゃないかなんて、僕達だけ助かればいいと考えてるようなこと、思いついてしまって。

 だけど、どうしても戦争になってしまいそうな時には、水神様に帝国の艦隊を海に沈めて下さいってお願いしたら、駄目かなぁ……?

 帝国の皇子様とお話に行くなら――

 どうしても攻め込んでくるなら、海に沈めますよって言ってみるとか。

 話し合いがうまくいかなそうだったら、僕、言ってみようかな……。


「ねぇ、デゼル。皇子様とお話に行くんだよね? それなら僕、攻め込んでくるなら、水神が皆さんを水底に沈めるでしょうって、言ってみたいな」

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