第14話 神様のお告げ
「……ジャイロ、何か事情があるなら、お姉さんを神殿で本格的にかくまってもいいよ。その代わり、ジャイロに頼みたいことが二つあるの」
「は?」
「ひとつは、スニールのこと。ジャイロとお姉さんの保護を引き受ける代わりに、スニールをこれまで通り、親分として保護してあげてくれないかしら。イジメみたいな下らない真似はやめて欲しいの」
「別にいーけど、デゼル、わかってんのか? スニールって、スニールを庇ってオレに盾突いたサイファを裏切ったやつだぞ?」
「わかってるから、お願いしてるのよ」
僕は思わず、ジャイロと顔を見合わせてた。
「もう一つは、サイファにしか話してない、闇の神様からのお告げで知ったことなんだけど……驚かないで聞いて、この国はあと三年で滅亡するの」
ジャイロが軽く目を見張って、僕とデゼルを見比べる。
驚くっていうより、信じられないよね。
「ユリシーズと私は敵国に連れ去られて酷い目に遭わされ、他のみんなは殺されてしまうの。私は当然、公国の滅亡を阻止したい」
「マジなら、そりゃそーだけど」
「私も、急に、ユリシーズの名前が出てきて驚いたの。ちょっと、考えがまとまらないから……また後日、公国の滅亡を阻止する計画にジャイロとユリシーズが協力してくれるかどうか、聞かせて欲しい。それまでに、私の話を信じるかどうか、考えておいて」
「お、おう……」
ふいに、デゼルが何かにすごく驚いた顔をして、仔猫みたいにきょろきょろしたんだ。
その仕種が、すごく可愛くて。
「デゼル、どうかした?」
「えっと、か、神様のお告げが……」
よく、意味のわからないお告げを受けたからマリベル様に相談してくるねって、デゼルは急に、神殿に帰ってしまった。
本当に、どうしたんだろう。
だけど。
その次の日も。
その次の日も。
まるで何もなかったみたいに、デゼルは鳥のヒナみたいに僕について回って、何をしても可愛かったし、僕はそんなデゼルになつかれて、すごく嬉しかった。
父さんがいなくなってから、つらいこと、悲しいこと、こわいことばかりだったのが嘘みたいに――
クラスで一人ぼっちじゃなくなった。
ジャイロに殴られなくなった。
まだできない仕事をしようとして、怒られたり怪我をしたりすることがなくなった。
神殿では美味しいおやつやジュースももらえたし、戦闘訓練も受けられたし、訓練は授業料を取られるどころか、闇主の仕事だからって、きちんと受けたら報酬をもらえたんだ。
もう、大丈夫なのかもしれないって。
もう、母さんに絞め殺されなくて済むのかもしれない、ずっと、この楽しい日々が続くのかもしれないって。
僕は、期待し始めていたんだと思う。
いつの間にか、公国が滅亡するかもしれないなんて、現実味のない話は忘れそうになってたんだ。
だけど、デゼルは忘れていなかった。
デゼルが動き出したのは、翌月、夏休みを間近に控えたある日のことだった。







