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1話:とんでもないところで作戦がずっこけました。

大魔王と呼ばれた女がいた。

あらゆる知に、武に、魔法に精通していた。その瞳も髪も血のように紅かった。剣撃1つで山を砕いた。疫病を創り出したり薬を創り出したりも自在だった。軽く低級魔法を唱えるだけで海が消えた。男を何人も侍らせていた。勇者に髪を切られた腹いせに大国を1つ滅ぼした。おっぱいがめっちゃでっかかった。どんな女よりも魅惑的な身体だった。(まあ勿論噂も混じっているのだろうが。)


「はー…」

宿屋の前でガックリ首を落とした少女はキルシュという。燃えるような赤い髪だが、先端は柔らかい桜色の髪。瞳も煌々と燃える炎のようなオレンジ色である。

「まあ次の街行けば宿泊まれるんじゃねぇの?」

慰めるのはリオンという青年。逞しくオッドアイ、しかも美形の彼は何の恩義もないのにキルシュを仲間にしてくれた。



ーーー話は数時間前に遡る。

キルシュは勇者パーティーの一員だった。異世界から勇者として選ばれ召喚された青年、ハジメ。彼に近付いたのはまあ、かなり打算があったが、取り敢えず上手く取り入って2年程前から剣士として序盤の街からパーティーに潜り込んだ。キルシュは本当に男っておっぱいのでけえ美女に弱いんだなと呆れた。

ただハジメは真正モノのクズだった。まずは魔術士のカレナ、次は召喚士のジュラ、それから聖騎士のルルー、またまた回復術師のシェラ、遂には聖女のミリエにも手を出した。キルシュは拒んだ。別に好きでもない男に抱かれるのはプライドが許さない。それに、彼女は聖剣を身に付けたハジメと相性が悪かったのだ。お互い素手で触ったら手を洗いに行こうかなと思うぐらい。あと単純にエッチの仕方は知らないので恥かくのも嫌だった。

…まあ、ハジメは俗に言うハーレム思考が強かったのだ。キルシュ的には5人も平等に愛せるとかのたまうハジメは魔物よりキッショい生き物だが。

て事で6回目ぐらいに夜這いしてきた彼にキレて剣をぶん投げたところ額に当てて気絶させた。それだけならまだしも裸のまま寒空の下のベランダに蹴り出し、勇者様は無事に風邪を引いた。高熱出して寝込んだ。

恋人がこんな狼藉を働かれた事にキレた女5人にキルシュはわずかな金と荷物を持たされあっという間にパーティーを蹴り出された。ガチで踏んだり蹴ったりである。

叩き出されて食堂でぼんやり今後の算段を立てている時にリオンはナンパしてきた。クズ2号である。冷静に考えたらこいつもなかなかのクズである。

ただ、キルシュは計画が大いに狂った事で呆然としていたのでリオンにホイホイついていった。…そして後悔した。この男、セクハラがしつこかった。ケツ触って来たし胸を触られそうになった。そして、押し倒されそうになってキレたキルシュは本名を名乗った。




「我が名は大魔王こと、サクラ・シュヴァルツ・トラゲーディエだぞ!恥を知れボケナス!」

名乗ったがリオンはバカなのかそのまま胸をまさぐろうとした。

バカだと思ったので思いっきり平手打ちしてやった。

頬をぶっ叩かれてはじめてリオンはキルシュが嫌がっている事に気づいた。ついていく相手間違えたなとキルシュは思ったがリオンはハジメよりまともだったらしく、こういった類の事はもうしないと約束してくれたし、お詫びと言って昼も夜も飯を奢ってくれた。それと、遅ればせながら冒険者であり、仲間になってくれそうな人間を探しているとも。迷ったがついて行くことにした。女剣士の一人旅など自殺行為にも等しい。

ーー回想終了。



「キルシュ、なんか食いたいもんある?」

「白いパン」

「あっそう。おやっさんパン5個ね。」

「あいよ」

パン屋の親父に5個注文し、ついでに隣の店でベーコンも買う。

「そんなに贅沢して大丈夫か?」

「ん?別に。別の街でナンパした令嬢さんが出てく時に軍資金くれた。」

「最低だなお前」

「そんなもんっしょ。俺1人じゃなんも出来ないし。」

「お前冒険者じゃないのか!?」

「あれ、言ってなかったけ?狙撃手だからさ。」

「ああ…。ならば仕方ないな。」

狙撃手…銃を操る人間は少ない。銃は高価だし、その割に致命傷を与えにくい。ハジメに1人仲間に引き込むか相談した時も渋い顔をされた。分からんでもない。

しかし極めれば恐ろしい威力を誇る。部下の面白四人衆の1人は銃の天才だった。数々の聖女や回復術士など後衛の頭を撃ち抜いてきた。

それは置いといて普通の人間なら大したことは出来ない。せいぜいが魔物を怯ませるぐらい。

まあキルシュは暇潰しの旅だったので組むと言ったが普通狙撃手と組みたがるのなんて山賊ぐらいのもんだろう。むしろコイツはよく姦通以外せずフラフラ出来たなと感心した。



どうやらリオンは遊びながらパーティーを渡り歩いていたらしく、野宿も良くある事だったらしい。テキパキと野宿の準備をしていたが先に焚き火を起こしてキルシュをその前に座らせた。

ボンヤリ焚き火を見つめているとリオンがふわっと上着をかけてくれた。

「ありがとう。」

「まーね。自称魔王様は今まで何してたんだ?」

「勇者パーティーの1人だった。」

「はい?」

「解雇された。」

「はいい?」

「剣士キルシュ、と言えば分かると思う。…宿、断られたのも私のせいだからさ。ごめん。」

「いや、俺も………実は勇者パーティーの女の子に手付けたけど。」

「最低だな?」

「多分2人一緒にいたからルルーちゃんキレたんだろうな…」

「よりにもよってルルーに手を付けたのか!?」

「うん。めっちゃ気持ち良さそうに鳴いてくれたぜ?あ、ジュラちゃんって子も交えて3Pした。」

「クズ!!ケダモノ!!信じらんない!アンタなんか渾名は7大罪の【色欲】で十分だろ!」

「言い過ぎでは?」

「色欲!」

「弁明の余地なしか…」

「あると思うなよ。」

「で、キルシュは何したの?」

「異世界から召喚された色ボケ勇者に何度も迫られて流石に怒って断って裸で縛ってベランダに蹴りだしたら他の仲間がキレた。」

「くっだんねぇ事気にすんのな女って…」

「そうそう。…全く、同じ色ボケ女でもアリアの方が優秀だったぞ?」

「なあそれ四天王の名前じゃ…」

「面白四人衆の間違いだろ?私の部下だし。」

「え、本当に魔王なの?俺魔王に加担しちゃったの?」

「毒妃アリアは正真正銘私に隷属する魔族だ。今すぐに呼び出してもいい。」

「イヤイイデス」

「本当か?」

「やっべ………昼間本当にごめんな…?」

「上目遣いで謝れば許してくれるだろうと思っている事も好物で釣ろうとしている事も知っているが。」

「ヒエッ」

「まあ、魔王城の攻略に出るのでな。仲間のジョークぐらい笑い飛ばしてやろう。」

「すげえジョーク聞こえた」

「?ジョークなど言っとらん。」

「ピエ………」

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