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文学少女、藤堂綾の怒り

作者: 夏果

「……どうした? お前」

 部室に入ると部長、藤堂綾が目に見えてお冠だった。誰もが見惚れる美人なのだが、今は『いてつくはどう』でも撃ってきそうだ……勇者か俺でなければこの部屋には入らなかっただろう。

「遅いわよ、晶」

 俺ホームルーム終わってから一直線にここに来たんだけど? と思ったが言わない。経験上こういう時の言い訳は火に油になる。

「悪かったよ」

 軽く謝るとどうにか溜飲も下がったようで『ふん』とそっぽを向いた。俺はこの上司様のご機嫌取りにお茶汲みをすることにする。

「で? どうしたんだよ? わざわざメールで呼び出して」

 『部室こい』ってメールは文芸部員としても女性としてもどうかと思うぞ? という言葉は湯呑みを出した戸棚にでもしまっておくとする。人間口は災いの元なのである。湯呑みを目の前におくと彼女は言った。

「自転車を盗まれたの」

「そりゃ災難だったな」

 お茶を淹れながら答えたのが癪に触ったのか、綾が突然立ち上がる。危ねぇ、お茶溢れるぞ?

「買い換えたばかりなのよ!? 三日しか乗ってないのに!」

「警察は?」

「……まだ見つかってないって」

 綾は席に座るとお茶を一口飲んで続ける。

「さて、本題に入りましょうか」

「今のが本題じゃないのかよ」

 前置き長かったな……

「私のやり方で犯人に復讐するわ!」

「犯人分かってんのか?」

「知るわけないじゃない」

 犯人が分からんならどうやって復習するんだよ。

「――まあ、見てなさいって」


 俺は家でパソコンを開いていた。

「ギギギ文庫……大賞ねぇ」

 開いているのはギギギ文庫のホームページ、そこには綾の書いた作品『盗人の末路」について書かれている。

 ストーリーは女子高生の自転車を盗んだ泥棒が、警察に追われ悲惨な目に遭い長い逃亡生活の末に捕まるといったものだ。

 綾は文章の中で犯人に罰を与えたのだった。全くあいつの文才と復讐心には舌を巻くばかりだ。ペンは剣より強しといったところか?

 (だが犯人はまだ捕まっていない――捕まるわけがない。

 ――犯人は俺だから。自転車は物置の中だ。

 綾の物を手に入れれば綾の様になれる気がして盗んだ、決して(よこしま)な気持ちがあるわけじゃない。

 鍵がかかってないことを知っていれば簡単だ。彼女の目にふれない所で行えばいい。俺は彼女の物が手に入り、彼女は小説の意欲を燃やす。

 ――ウィンウィンの関係だ。)

 ――なんて嘘を書ければ俺のミステリー小説も大賞を取れるのだろうか?

 俺はパソコンのページを閉じた。

ヒューマンドラマのカテゴリで合っているのだろうか? コメディー以外を久しぶりに書きました。

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