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初陣はラストバトルです!  作者: あおば
3/4

初陣はラストバトルです! ~その3~

 これまでのあらすじ


殴り込みに行く場所はお向かいさんだったらしい。



 *** 聞き込み調査 ***


「それでは、勇者御一行様、今夜はごゆるりとお楽しみください」

 夕食は立食パーティーの形式で行われた。

 国王様、王妃様、その他お偉い様方が集まっている感じである。

 格式高いものにしなかったのは、召喚された僕たちが庶民であることを配慮してのことらしい。

 まぁ、聞いてみたいことが幾つかあるから、悪くはない。

 丁度近くに執事さんがいるから、いろいろと聞いてみようか。


「私たちのような勇者の召喚は、いつ頃からされているんですか?」

「そうですねぇ、一番古い資料では、第一回勇者召喚の試みはおよそ百年前だったと記憶しております」

 百年前か。 国王様の先々代あたりからだろうか。 昔からのようでいて、意外と最近の試みなんだなぁ。


「この国では魔法は使えないはずですが、召喚魔法はどのように行っているのですか?」

「あぁ、それはですね、王家に伝わる『召喚機』を用いているのです。 先々代が倉庫より発見して運用し始めたのです」

 というと、作られたのはその更に昔、ということになる。

 出処がはっきりせず、原理も分からないままの運用、ということか。

 『あっち』の人なら分かるのかな?


「これまで召喚された勇者たちは、魔王の所に行ったんですよね? どうなったんですか?」

「実は、これまでの勇者が魔王の城まで行った後、戻ってきた者は一人もいないのです」

 おっとこれは思ったより厄介なのか?

 訓練するだけで即出撃だもんなぁ。

 でもまぁ、召喚について知りたい事はこんなところかな。

 別角度で気になったこともあるし、そっちもついでに聞いてみよう。


「魔者による盗賊事件が毎年のようにある、と仰ってましたよね? 逆を言えば、なかった年もある、という事ですか?」

「確かに、一年に一回あるかどうかですが、あるという事実に変わりはありません」

 事件があるということ自体、看過できないことではあるが、違和感が残る。

 犯罪が成功した者は、遠からず同じ犯行に手を出すものだからだ。


「無礼を承知でお尋ねしますが、魔者ではない『人間』による盗賊事件は、一年間にどれ程起きているのでしょうか?」

「そうですな、この王都周辺で分かっているだけでも二十件程、証拠が隠滅されている事件があると考えればかなりの数になるでしょう」

 あぁ、これは変な感じになってきたなぁ。

 この王都と魔王の領地は川を一本隔てただけのご近所だ。

 にも関わらず、力がある魔者による犯罪行為よりも、人間による犯罪行為の方が圧倒的に多いのだ。


 なんとなくだけど読めてきたなぁ。

 でも、まだはっきりしないこともあるし、あっちの言い分を聞いてからだよね。

 この謎は必ず解いてみせる。 じっちゃんの名にかけて!

 ‥‥じっちゃん定年まで平社員だったらしいけど‥‥。



 *** 情報収集 ***


 翌日、勇者として召喚された一行はそれぞれの武器ごとに訓練を受けていた。

 レターセットの訓練? あるわけないじゃん?

 『ハズレに護衛付けてもしょうがないでしょ』と国王様を説得して、自由行動をゲットだぜ!

 セバスさんにお勧めのお店を教えてもらって、街に繰り出すことに。

 お金? 『お土産を買うから』と言って、国王にせびっ‥ゲフンゲフン、お願いしましたよ。


 回った幾つかの店で『見ない服装だねー』と言われた。

 倫理は適当に『王様に召喚されて、今日は街の様子を見て回ってたんですよー』と言ったが、街の人たちは不思議そうに首をかしげるのだった。

 あぁ、この感じは、一般の人たちは勇者召喚とかそういうのについての情報がないんだ。

 そうだよね、召喚しておいて成功した実例がないという不名誉なことを言って回ったりはしないよね。


 街中を少し回って、最後にお菓子屋さんへ。

「これと、‥‥あ、これは1ホール分ください」

 この文明レベルでは高級品のケーキを含む幾つかのお菓子をチョイス。


 『お土産に』とは言ったが、別に『皆への』とは言ってない。

 さぁ、これからが本番だ!



 *** 番外編・召喚された者たち~療治(りょうじ)編~ ***


 俺は療治。

 町でちょっと名の知れた反社会勢力に所属している。

 だから事務所全体でこんな事態に巻き込まれたときはびっくりしたぜ。

 地元では白い目で見られていたが、ここじゃあ勇者扱いだ。

 たまには人様の役に立つのも悪い気分じゃねえ。


 おうおう、皆かっけぇじゃねぇか。

 どこかいい国の軍隊みたいな格好だ。

 皆、満更でもねぇってツラしてやがる。

 元の世界に戻ったら、カタギの仕事に就いてみっかな。


 ん? 俺だけ服が違う?

 『治癒術師』? つまり『衛生兵』ってやつか‥。

 まぁ、一人くらいそういうのがいねぇとな。


 ‥‥って、普通は医者の白衣とかだろーがよ!

 なんで看護服、しかもミニスカートなんだよっ!

 しかもこの注射はなんだっ!

「お注射しちゃうぞっ」

 ‥‥言わせんじゃねぇっ!


 しかも注射自体がデカすぎだろうが!

 針が特攻用の竹槍サイズじゃねぇか!


 ‥‥つーか、さっきから国王! ひそひそ話してるんじゃねぇ!

 『ああいうのがお好みらしいわよ』って、聞こえてんだよ。

 しかも着せたのてめぇらだよ!


 事務所の連中までチラチラ見ながらひそひそしてんじゃねぇよ!

 ちきしょーめえぇぇぇぇぇ!

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