小さな天使
はい、ただいま横に未来の夫、存在。
隣に良くん、左手にちょっと焦げた卵焼き入りの弁当。前には車がビュンビュン走っている。
歩いて徒歩5分の中学に部活に行く途中。なんか緊張する。
周りから見たら、カップルに見えるかもしれないけど、不釣り合いすぎる!
だって私は150cmのチビでそばかすありで何のとりえもないのに、彼は、170cmのイケメンのなんでもできる人。
本当に私でいいのかな。
「優衣?」
わっ、これはやばいケース。
まっ、茉奈!
「2人で歩いて。何?付き合ってるの?」
「違うっ!たまたまあっただけだって!」
「ふ~ん。なんだ。つまんないの。」
そう言って茉奈はチラッと良を見た。
「あ、茉奈じゃん。おはよう。」
「良、おはよー」
何だろう。小さな会話なのに変な気持ちになった。
「良くんってさ、」
「なんでしょうか?」
「いや、何でもない。」
私ヤキモチ妬いてるかもしれない。
どうしよう。
「はーい。今日の朝練終了。トンボかけたら職員室来てね。」
先生がかけた言葉で皆は一斉に動き出した。
あつー。今日メニューきつかったなー。
そんな声があちこちから聞こえてきた中で
僕は何をしているかというと、高橋さんを見ています。
小さくて、可愛くて。守ってあげたいという想いでいっぱいです。
僕自身初めての恋でした。
僕は運山寺の跡継ぎなので、お嫁さんを必ずもらわなければなりません。
僕は中1の頃に、父と祖父が話していたのを聞いてしまいました。
「良は、頭の回転は速いが、人前に立つことは苦手なのだね。」
「そんな良が跡継ぎにふさわしいか最近気になってしまったのだが。」
「それに比べて良太はクラス委員長に立候補したそうだが。」
「良太は人前で何かすることが好きなのですよ。」
「良は好きな道を選ばせてやろう、今のところ、次は良太だなぁ。」
ふさわしくない。僕は家を飛び出した。
夕日が照り、赤いような、オレンジのような空。まぶしい太陽は良太。僕は自分で光ることのできない月。
僕はむいてない…!僕は誰も支えられない。人を幸せにすることもできない。
僕は友達がいない。いるけど、慕っているだけ。逆らえない。怖い。
だめだめな僕が嫌いだ。大嫌いだ!
何もかもぐちゃぐちゃになっている僕は、人目も気にせず公園で泣きました。
そんな時、ある女の子が声をかけてくれました。
「どうしたの?そんなに泣くとみんなも悲しくなっちゃうよ。泣かないで。」
それは中1の高橋優衣さんだったのです。
「苦しいこと、今全部吐き出しちゃおう。」
僕は息つく間もなく心のうちを明かしました。
すると彼女はこう言いました。
「今までよく頑張ったね。えらいよ。」
たったそれだけの言葉なのに僕は救われた気がしました。
この出来事で、高橋さんを好きになりました。
今度は僕が高橋さんを助けたい。絶対に。
でももう手遅れでした。
すでに高橋さんには助けてくれる人がいたのです。
※トンボ:グラウンド整備に必要な道具。