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06 倒される魔王の心境
信じられない事が目の前で起こっている。
魔王である我は今、救世軍の者どもに倒されようとしている。
ありえないはずだった。
我が倒れるなどという事は。
だが、我は現実に倒れている。
救世軍の中に立つ、異邦の地からやってきたあの男を忌々しく思い睨みつけた。
同郷の人間と仲たがいするように罠をしかけたというのに、なぜ?
生き残るとは思えなかった。
生き残れたとしても、復讐に踊らされて、魔王討伐に関わるはずがないと思っていた。
それなのに、なぜ平然とそんな場所に立てるのだ。
倒れた我の近くに下級動物である月兎が近づいてきた。
「きゅっ!」
と鳴いたそいつは我に、「お前はただ、私の飼い主の尋常ならざる優しさを見抜けなかっただけだ」と言った。
まさか、お前の正体は!
遥かな昔に我を討とうとしたあの……。
「あれ? つっきー。危ないよ。倒したとしてもそいつは魔王なんだから。最後まで後ろに隠れてなよ」
「きゅっ!」
我はそやつの刃にかかって、永遠の闇の中に封印されていった。