↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

架空都市 

作者: haやca
掲載日:2019/08/26

 街は、絵本のようにつくられた。

 ひとも動植物も、生きているように見えるだけだ。

 けれど、みんなが生きた心を持っている。

 情熱を手に旅するもの、悲壮な恋に破れるひと、誰一人として同じ人間はない。

「ねえ、あなたはどこからきたの?」

 ノートに街の鳥観図を取っていると、声をかけられた。

 女の子は後ろ手を組んで、僕の様子を伺う。

「ここじゃないどこか、です」

「もっとくわしく!」

「僕は架空都市じゃない、本当の街から来ました」

 沈黙。

 だから、言いたくなかったんだ。


「そっか。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

「いえいえ、僕のほうこそごめんなさい」

 気まずい雰囲気が流れる前に、僕は言葉を放つ。

「あの、よかったらこの街を抜け出してみませんか?!」

「そんなの無理だよ。わたし、作り物だし」

「ぼくが何とかします。だから、一緒に来てください!」

 風が一陣吹いた。

 僕たちの間を縫ってかけめぐり、架空都市のすみずみまで。

 できることなら、彼女みたいな優しい笑顔を、もっと守りたい。

 初めてあったひとだけど、そう思った。

 なにができるだろう。考えても、答えはでなかった。

「わたし、そう言ってくれるひとずっと待ってた。ありがとう」

 白い彼女の肌にすうっと陽が落ちる。

 


 街の鳥観図が完成した。もう、ここには戻らない。

 もういちど帰るとすれば、僕たちが年老いたときだ。

 現実世界で精いっぱい働いて、幸せな家庭を築く。

 老後はきっと、僕たちの思い出に浸っていよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。