然るべき過程への道筋の中で
つまり、殺霊になれ、と。
その通り、頑張れ。
炊き出しの後、また歌を披露する機会が来た。あ、私は歌いません。下手って言われた。うぅむ…そうか、だから止められていたのか。それは仕方がないね。
思い出せば歌ってみたとき何人か倒れ込んでいた。下手すぎて面白かったのかなぁ…。
「(いや面白いとかじゃなくて意識刈られてるだけ…)」
メル姉?
「どうしたの?」
「いや、ソルトが案の定ぶっ倒れちゃったからさ」
「えっ!?大丈夫そう?」
またかぁ…。こういうときはいつもなんだよね。まぁ、理由が理由だからかな。
「なんで、こんなことになったんだろうね」
「えっ」
急に話が切り替わった…!
「私は…もう…っあ、やば!?」
「だから何よ!?」
訳がわからないよ。どうしてメル姉は…あ、原因!
「呪いのかけ直し忘れてた」
「うん、そうなの。もう魂ごと浸食されてるわけじゃなさそうだけど、まだ欲しいかな…ってゆうか、今の誰?」
え?誰って?
(「あー…確かに、誰だろうね?」)
今更といえば今更だけど言われれば気になる。
それは本当なのか?信じがたいんだが。
いやいや本当だよ。これ、マジゃばくない?
あー、やっぱり私にも聞こえてない?
「何ていうか、遠く過ぎる音が聞こえてる感じだね、これ」
「そうだね、普段とちが……えっ?あれ?そういえばシャリアちゃんにも聞こえてるの?」
えへ?
「今のは聞こえてる」
なぜか聞こえている。
で、ここからなら出られると?
無理です。回り道しないと。
二人いる。一人の感覚には慣れているのだけれど、もう一人から受け取っている、という感じ。
何じゃこりゃ。ってな感じ。
どういうことだよとか思わないで欲しいかも。意味のあることを考えられないので。
「いやな感じはしないかな。それより…私は少し会いに行きたい人がいるの。一緒にネルフさんのところへ行こう?」
「え、あぁ、明日ね?」
「うん」
明日…か。実際に見たら、何かわかるかな?
じゃあ、その~、あれだ。また今度な。
うん、じゃあね。時が合うことを願うよ。私と違って、すぐ戻れるわけじゃないから。
なにか、向かってくる。
時間がないような気がする。
「もう、何なのかなぁ…」
時間がないって、何?……分からない。とりあえずソルトのところ行こう。
そーっとソルトとチューンの部屋に入ると、ソファで毛布にくるまっていた。
「ソールート!」
「うゎっ!?…シャリアか。大丈夫?」
「うん、なんかわからないけど大丈夫な気がしたんだ!」
ソルトに指摘されて気がついたが、私今すっごいテンションが高い!
何だろう。急がなければならない感じ。だけどすでに間に合ってる感じ。そしてそれさえ大丈夫だからもう安心できるらしい。
……どういう感覚だろう。
わからないけど、私は今動いている。未来へ歩いている、というか跳ね回っている感じ。スキップです。
「楽しそうでうれしいよ」
「え?」
すっごい爽やかな笑顔だ。
「ずーっと、怖そうな顔してたもん。ブレイザとリブ位だよ、怯えてなかったの」
「……ごめんなさい」
「大丈夫、気持ち自体はわかるからさ」
毛布から手を出して撫でてくれる。恥ずかしいなぁ…。
「さて…もういないようだし、お菓子食べよう」
布団からいそいそと出て、二人で丁寧にたたんでいく。一人ではまだ難しいです。
「うん、そうだね!」
さて、今日は何かなぁ~?
「あっ」
きれいにたたんだのに、落として少しぐちゃぐちゃになっちゃった。あらま。
タルトを切り分けながらチューン君と話す。
「じゃあ、もう心配ないって訳でもないんだな」
「うん、不安がないわけじゃないけど、もう大分気楽なだけでよし!」
「ふむふむ、確かにやばい元気だ」
そんなに?
「はい、どーぞ」
「ありがとな」
「ありがとう」
二人に渡す。
「「「いただきまーす!」」」
わぁーい。
「そうだ!私ね、明日ネルフさんに会いに行くの!」
「あぁ、そっちかぁ。久しぶりだな、どうした?」
「なんとなく会いたくなった」
少し首をかしげた。よくわからない?
私にもわからな……くなかった。
「私、約束してるからね」
そういえば、一緒にいろんな景色を見るって約束があった。
忘れかけてる。だめだよ、それじゃあ。
「ごちそうさまー」
さーて、夜ご飯作るぞー!
張り切ってキッチンへと行くシャリアを見ながら、チューンがぼやく。
「大丈夫なのか?」
「多分ね」
そして絶賛タルトのおかわりを食べているソルトではなく、エリシアが答える。
「なら、いいけども」
しかし時間というものは止まることは許されず、加減速も非常に難しい。
運命は加速し、時に変化する。もう加速したその歯車はしばらく減速することはなかろう。
「それとシャリア、料理できるのか?」
「……わかんない。まぁメルシャンもアリカもいるし、大丈夫じゃない?」
すぐに慣れないのが普通である。彼女もそうであったため、結局料理ができるタイプかはわからなかった。
次回、私死す!デュエ(殴
「死なねぇだろ」
「真面目な話なんですけど、これ誰なんです?」
あれ、若干メタ気味な視点でもわからん?
「うん、そうなの」
「俺も知らん、ってかシャリアが先とるのは珍しいな」
まぁ、あれだよ。そのうちそのうち。
「何でぼかすの?」
「必要だからだろ。ずっとぼかし続けてるし」
隠せてない……のかぁ。




