始まりは図書館の中で
しばらく貯蓄の切り崩しなのでそのうち遅れるかもしれません。
ご了承ください。m(_ _)m
あれから2年。
「おにいちゃん」
舌っ足らずな少女が町中にいた。
灰色の髪に灰色の瞳で、若干汚れている色あせたボロボロのワンピースを着ている幼い子供。
何よりおかしいのは、先ほど兄を呼んだのにその子供のそばにそうとおぼしき人が居ないこと。
次いで、この年の子供が一人でいること。親と居ないで子供をほうって置くのは誘拐される危険性が高い。このことは親は育児に積極的でないことを示す。
しかし、この子は無意識なのか人をしっかり避けて歩いている。その教養とこの状態はあまり自然ではない。そもそも普通あの年の子供なら体の操作はさほど上手くいかない。転びそうな気配もないし、あれは何なのだろうか?
あの子供のことは覚えておきましょうかしらね。
「ここ、だよね?」
そうだろうな。
(「確かにここが図書館だろうなぁ」)
(「やっぱり?」)
一人でここに来た。来てしまったが、大丈夫なのだろうか?
「とびらのあけかた、わかんない」
うん?扉の開け方?
(「また『見せて』くれない?」)
「うん!」
じーっと見る。あ、これ。
(「ここ裏口だわ、どこか開いてるところがあるはずだからそこから入りな」)
「うん!」
視覚を共有したままで歩くシャリア。
しっかし部分的な共有も慣れてきたな。そのうち常時共有できるかも。
さて、そんなことよりどこに…お、あったな。
「あったー!」
ダッシュで入ろうとしたので注意する。
(「走らない。後ここの中ではすこし静かにすること」)
(「どのくらい?」)
どのくらいって言われても困る。ってか、whyじゃなくてhowなのが不思議なんだけど。
(「周りと同じくらい?」)
とっさに出てきた俺マジ神、とでも勝手に思っとく。
(「わかったー」)
さて、適当に絵本でも読み聞かせますかね。
図書館でかいなぁ。この目線、というのを考えてもでかい。
「よいしょ」
カウンターに体を乗せる。
貸し出し条件を見るために。
「えーと?」
貸し出し不可。閲覧自由、といったところか。
(「おにいちゃん、わかる?」)
ああ、しゃべってはなかったか。同じ頭の中でのことだからわかりにくいな。
(「自由に見てな」)
(「はーい!」)
そんなこんなで始まった。
大捜索が。
あったな。
「これ?」
子供が読むような感じではないが。
「おなじのたくさん」
(「とりあえず、それは今度でいい。今日は絵本を見よう」)
(「いいの?」)
(「ああ、この手のやつは多そうだから。じゃ、いこう」)
(「うん!」)
とてとてと歩く。しかし、2歳なんだよな、まだ。
にしては安定している。俺の感覚が混じっているのか微調整が上手い。でもまぁかわいい歩き方してるよな。
「なんてよむんだろ」
(「おうじのぼうけん、だ」)
文字読めないわなそりゃ。
(「読んで?」)
(「いいぜ。おうじのぼうけん」)
ぱらり、とページをめくる。
(「むかしむかし、あるところに」)
(「おうじはぶじ、くものうえにあるまちにつくことができました。めでたしめでたし」)
(「くものうえでしあわせになれたのかな?」)
(「どうだろうな」)
かなり聞き入ってたな。
(「しあわせじゃなきゃどりょくがかなしい」)
そして現実的というのかな?こう言うのは。
まぁ知らんがな。
言葉になんぞ詳しくないわい。
おら国語苦手、理科大得意、英語できない系クォーター。
「一人で読めるのにみずぼらしいわねぇ」
「みずぼらしいってなに?」
だれだ?俺よりは年下のようだが?
「服がボロボロだから、それを言っただけ」
説明くらいできようぜ?
「あと、わたしよめないよ」
「え?」
「おにいちゃんによんでもらったの」
あっ、やべ。
「えっ?(だれか居るのかしら?もしかしてなにかみえ)」
やべぇな!
(「自分を指さしてここにいるって言え」)
こうしないと幽霊見えるとかなる。シャリアと俺は別なのは事実だからまずい。多重人格の方がましだろう。
(「わかったー」)
「ここにいる」
「はぁ?」
「わたしのなか」
「それだけ」
「そ、そっかー(まさかのクラウスもち!?それも、意思のある?)」
クラウス?ってあれか?サンタさん?
「ねぇ、お名前は?」
「わたしはシャリア」
「そっか、私はエリシア・アンノン」
この縁は、この後とても大きく響くのである。
図書館の日常の始まり始まり。
……ん?さっきっから視覚共有しっぱなしだな?
(「あれ、まだ視覚リンクしてるぞ」)
(「ええええー!!?」)
あー、常時共有できるようになっちゃったか。
いつの間にか考えを隠せるようにもなってるし。たまに無意識に垂れ流しかけるけど。
成長早いなぁ。