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戦争への今更な疑問

一つ抜けていたので追加しました。

 教会へ着く頃には、シャリアの体の限界がすぐそこだった。

 なんせたくさん食べたのだから寝なくては。

 シエスタルームでバタリ、と倒れるように眠る。

 寝てるのは…アリカとセリーナさん、あとは…リブか。

(「まんぷく」)

(「だな。すごい食べた」)

「ははは…」

 基本的に腹八分目までなのだ。食べ過ぎどころか、満腹も珍しいくらいだから。

 生活に困ってるようには見えないが、これでも生活費はお布施で支払っているのだ。

「そうだねぇ…そこまでするかね?」

 なぜか苦笑された。

「あの人、なんか変なんだよね…命かけるつもりな割には及び腰ってゆうか」

(「まだ死ねないんだろ」)

 難しい話ではない。自棄っぱちな人間が生きようとする理由なんてそんなもんだ。まだ、達成できないから死なない。それだけ。

「よくもまぁ…」

 そういう人間を知っていたからな。まぁ母さんはそんなものより諦めや憎しみ、愛情の方が強かったかもしれないが。

 口にしない方がいいか。

「ねぇ、人殺しはいけないことって、私も言われたことないんだよね」

(「そうなのか?」)

 いきなりだな、と思ったが、よく考えるとそんなに話がずれてなかった。かも。

「うん、お母さんにも言われたことないし。あ、そうそう。言ってなかったけどさ、私、いつでも親と会えるの状態なのよね」

 逆にソルトやチューンにアリカ、そしてリブはそうではないと。皆そうなのだろうとなんとなく思っていたから、メルシャンが親に会えるといったことに驚いているくらいだ。

「まぁ、あまりに忙しいからそう言えるほど会えてないんだけどね…」

 そもそも一度も見ていない気がするが…いつの間にか会ってたりするのだろうか?

「あなたは言われたことがある?」

(「あー『俺は』ないな。でも世間一般の認識として人殺しは悪だ」)

「そういえば普通ではなかったんだっけ」

 自分が普通だ、ってものは自覚できることではないが、普通ではないからわかる。俺はその面で普通なわけがない。

「まぁ…そうかぁ。戦争って、あった?」

(「直で見たことも参加したこともないな…古い記録を見た程度だ。敵兵を殺せば英雄…一般論とやらに照らし合わせれば狂気的なんじゃねぇか?」)

 多分だけど。

「狂気…かなぁ」

(「なんかあったか?」)

「いや、家族を守ることは正義なんじゃないかなって」

 確かにそうかもしれない。ただ大体の人は…っていうか皆か?人を殺し続けて正常な精神を保てるとは思えない。

(「その一心で戦い抜ききれるなら英雄だと心から崇拝してやろうかとも思う」)

 それは、まさに正義だ。

「心が壊れるものなの?」

(「人間不信、その家族すら衝動的に殺しそうなほどの恐怖、なんかそんな話を聞いた記憶があるな」)

 うろ覚えだがな。

「…あれ、やばい話に引き込まれた?」

(「……そうか?そう、なのだろうか」)

 これが精神的によくない事態なのかという危機感がはじめから俺にはない。

 だから同意しきれない。

「私は、殺せという立場なのだよね」

(「立場は、そうだろうな。実際に言うことになるとは思えんが」)

 というか、殺せというとかそれよりも、セクハラの方が心配な状況だし。

「ごめんね…寝るよ」

「戦争は奪い合いであり命を使う賭け事。欲しいものがあって、守りたいものがあって行う」

「セリ姉?」(「ん?」)

 話しかけてきたセリーナさん。

「…敵が何を望んでいるのかは知りませんが、結局それだけなのですよ。奪ってでも手に入れる……それが悪と呼ばれているのです…すぅ」

 それは寝言なのか?

(「…ちょっと、よくわからないから簡潔にお願い」)

 シャリアがついてこれていなかったらしい。

(「奪うのは悪い人のやることです。まる」)

(「……そこだけじゃなくてね?」)

(「はーい。教えてください?」)

「結局私に振るのか」

 そうして語り合い…。


 それから、次の日は…多分、普通というやつだろう。

 もう、全く同じ普通は来なかったな、とメルシャンやセリーナさんとしみじみ思うのはどれほど先のことだったか。

 やはり非日常を前にすると、日常を振り返り出す。そうして過去の非日常を思い出すのだ。

 いくつか引っかかった感覚がある。あの時は五感が曖昧だったし、機会があれば試してみるか?

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