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裏の華々しき世界で、世界を語る

 zzz…。

 …はっ。

「おや、目が覚めたかの」

 魔法による睡眠効果か?

 またあったおばあさん。はいいとして、自分の姿に違和感を覚える。なぜか黒のズボンとパーカー。そして髪は結ってある。多分、あのかんざしで結ってあるのだろう。

「虎の件なのか?」

「然り。もう時間がない。頼むぞ」

 やれることがあるのかはわからないが、引き受けるべきだろうか。

 後々、シャリアと悟られないようにしたいものだが。

「了解した」

「飛ばすぞ」

 南西の地下へと駆けていく。

 こんな中で呑気に、そういえば、裏社会の人間だったんだなこの人、と思った。


 さて、記憶を引き出す限り、ソルトが遊び疲れたから帰ったのだったか。

 チューンも疲れていたので、おんぶして帰る羽目にならないうちにと切り上げたはずだ。

 その帰りの途中から意識が途切れ、今に至ると。

 ふむ…。

(「どういうことだ?」)

 問いかけても答えが返ってこない。

 珍しいというか、久しぶりというか、一人で動くことになったか?

 …………フラグ立てたつもりだったのだが。

 やっぱ現実にこれやっても無駄だわ。運命変わったりとかそうそうないんだな。

 今、ふと自分がどうやって移動しているのかに気づいた。下を見ると歯車が並んでいる。

 何かのからくり…なのだろうか。

「ネメシス、来客ときたぞ」

『状況把握。生体認証開始』

 ふむ、ここは…廃屋か?にしては傾きやらほこりやらが少ないが。

『完了。……複数点での偽装を確認。把握済みですか?……回答希望』

「問題ない、私がやった」

『把握。……お望みのままに。後方のロック完了を確認。入り口を開放しました。どうぞ、お入りください…任務完了、待機形態移行』

 なんか二重人格というか、二つのプログラムで一つのスピーカーを使っているこの感じ。

 一つが会話用、一つが処理用。

 何か、そんなものを前世で見たことがあるような…。

「ギャラル、連れてきたぞ」

 気がつけばそこにいた。

 黒い部屋。会議室のように円卓があり、その周りだけが明るい。

 まるでアニメなんかで見る悪役の会議のような光景だ。

「坊ちゃん、ここが何だか分かっているのか?」

「……何であれ、この都市…いや、国か?その中でも重要な場所なのだろう、としか」

「……いや、十分以上だ。別の人の集まりが存在することも、ここの住人のほとんどが知らないことだからな」

 会話をしていたギャラルという男が顔を上げた。

 漆黒の髪の上に、翼の意匠の兜をかぶり、側の黒色の剣を持つ手から肌色が浅黒いことがわかる。

 その目も黒、顔は比較的白めではあるような気がする。

 気のせいか?

「肌がここまで黒いのはあまり見ないか」

「見たことはあまりないな」

 正直個人的にはいわゆる白人より接しやすい。あの赤い…なんつーか、生々しい感じが好きになれない。

 聖奈は逆だったな。黒いのはなんか暴力的な印象がするって。

 ……まぁ、色の印象そのままなだけってことは二人でわかってたんだけどさ。

 やたら運動神経よくて超純粋だった白人の少女と病弱で皮肉をよく使う(人気者になるだけの分別はあった)黒人の少年は今でもはっきり思い出せる。あのカップルはすごかった。マジで。

 確か俺の三つ上だったか。それで俺が妊娠報告聞いたからな…。おいこらお前らナニしてんだ。

「……そう思うと、何でだろうな」

「何がだ」

「不思議なこともあってだな」

「……まぁいい。虎の進行を抑えるため、力を貸してもらうぞ」

「わたった、やらせてもらう」

 まずは、状況の確認が必要か。

 しかし、人が少ないな。空席ばかりだ。

「基本的には外とを隔てる壁に被害を出すわけにはいかない、よって上から迎撃する」

「魔法というか魔砲でも撃つのか?」

 魔砲少女……?そもそもレールガン的な磁気なら雷を使えるなら作れそう…。あれ、まじで、撃てるんじゃね?

「できるならやってみてくれ…行くぞ。時を待たずして我らを動かすは時空――テレポート・フィールド」

 おおー魔法っぽい。と声を漏らしたが、響いたのは誰もいない部屋だった。


 その、壁とやらの上だろう。

 八角形とおぼしき隔壁の継ぎ目。

「音か…!」

 無音を務めながら、魔法で迎撃するたくさんの黒装束の人たちを見て、なぜ撃てないのかを察した。

「その通り。中の民たちには外のことを多く悟られるわけにはいかないのだよ」

「なんでそこまで隠すんだ?」

「……語ってもいいのか?」

 警戒しながら問うのは、それだけ大事なことということだろう。

 何があるのやら。

「むしろ今しか語れん」

「よし。ならば語ろう」


 概ね、以下の通りの内容だった。

 神の力により、ここで生を得られるのは神になれる素質を持つ魂のみだという。

 そして、ここは神を選別、把握をするために、人の出入りを最小限にとどめたいとのこと。

 そのため、この都市の外のことを考える余地を与えない環境を作っているそうだ。

 そのため色々取り揃えている。主に南西区は裏社会、南区は農業区、南東区はスラム街、東区は工業地帯、北東区と西区は商店街で、それぞれ派閥争いを。北西区は富裕層を中心とした住宅街、北区は教会の中核があるそうだ。そこで大体完結できるのだと。

 で、中央近くはあえていろいろ混ざってるままにしている、と。

 俺たちについてだが、今は北西区よりに住んでいるのだろう。そして元々は東寄りの南東区に。

「東区よりに図書館があったな。あれは?」

「文革を忘れていたようでね。三カ所適当においてある。確かそこは魔法とかの研究に当てられていたような…あとは絵本はあそこが一番多いくらいか」

「色々読み聞かせしたな」

 あれは、なかなか好評だった。

「……何か欠けてると思わないか?」

「娯楽少なくね?」

「……うーん、半分正解。というか、そっちは基本男だけという」

「性欲か」

「はっきり言うな、そんなところと…もう一つはどうだ」

「うーん、仕事は足りるが…政治はどこでしている?福祉と教育が足りないぞ?」

 コーキは日本基準の感覚のためか、教育は国で主導するのが当たり前だと思っている。

「教育は限界があるだろ…。福祉と政治。それの主導は教会にせざるを得なかったのだよ」

「……って、あ、そうか。教皇っていたな。あれ後付けなのか」

「正解だ。宗教のトップを政治のトップに載せるような形でおいて、福祉の充実を義務づけた」

 さて、ここまで語っている間で、どんな魔法を使うかを思いついた。

「あとこれ、要はこういうことだろ?なぁ、火よ、悪よ、呪われし爆炎を散りばめ、死を振りまけ」

 とても使いやすい感覚のした魔法は、遠くに見える虎の一角を焼き尽くした。

「ほぅ…?…いや、十分な活躍だ」

「どうした?」

「ん?いや、思ったより集中させたな、と思ってな」

「狙ったの奥の奴らだしな、強い個体かもしれないから念入りにやった」

「ふむ…あれは近衛部隊か。確かに防御能力だけなら相当高いはずだ」

 どうやら本当にそれなりに強い個体らしい。やっぱシャリアの魔力は強いのだろうな。

 この子は本来は成長過程がつらい性質のようだが。

「さて、知ってしまった以上は、逃がさんぞ?」

「無駄な脅しはやめとけ、こいつは殺せないのだ」

「それは実力、それとも…」

「両方だ」

 恐らくは教会の人間だからおいそれと手を出せないのだろう。

 もしくは、手を出す必要がないのかもしれない。

 後実力とかは関係ないと思います。ネジェルにでも暗殺されたら秒で沈む。生き返れるだろうけど。

 ただ切られたら繋げることもできるけど爆破されたら造り直せないから手の内を知られているネジェル相手じゃどうにもできないだろうなって。

 来るのわかってたら先にはめられる可能性に賭けられるだろうけど…。

「ふん…まぁいい。こちら側に来てくれることを願うぜ、少年」

「どうなるかわからん、期待はしないでくれ」

 本当、期待されても困る。

「……本当、面倒なことになってるが、その気になれば対処できる」

「流石ですね」

「負けるなよ」

「……?」

 何に?とは聞けなかった。

 聞いても教えてくれなかったろうが。

 なんか、どうあがいても戦う運命になりそうである。

 ……それは、あの子にとって望ましいことなのか?一度聞いてみた方が良さそうだ。

 まぁ、これ(おれ)が戦う気で動いている以上あの子の意思がどこまで影響するやらって感じだが。

コーキ一人で進めるのは世界観の中では6年弱以来のことです。だからか、好き勝手に作りすぎる節があります。世界観内では一人になるまでまた6年くらいかかるかもしれませんねー。

「次は出番あるの?」

「あるでしょ、こんなこと言ってれば」

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