破滅式のクーシャさん
どうしてもコーキが狂った行動ばかりになってしまいました…。実際はもっとまとも(なはず)なんですが。
後遅れてすみません。
そういえば、聖女になるためには善い行いをしなくてはならないらしいと思い出すシャリア。
ついでに基準があるのかを疑問に思い始める。
(「どう思う?」)
(「あったところでその基準ってまともなのか…?」)
二人とも答えは持ち合わせていない。ある意味当然のことだが。
(「カミサマ疑ってどうする気なの…?」)
(「神殺し?」)
(「悪いことしない」)
(「おいおい…」)
おかしなところだらけなやりとりをする二人。人殺ししといて今更何を、とコーキは思っているので、おかしいのは主にこちら。
まぁそれをシャリアに語るわけにはいかないと思える程度にはまとも――その程度でまともといえるかは別とすれば、と申し書きをつけなければならないかも知れないが――である。
中でこんな殺伐とした会話を繰り広げていることをおくびにも出さず今日の朝食を運ぶ。
一部屋分だけ。
「はいどーぞー」
「ありがとう」
そのまま立ち去らず、ニコニコ顔でその男の子の顔を眺める。その子は気にせず食べ始める。ちなみに言うまでもないだろうが、クーシャである。
ちなみに自分はこの仕事の担当ではないためと、「一部屋だけだけど手伝うよ」といって本当に一部屋分だけ運んでこれである。
嘘も建前も持たないとはこういうことである。
(空色の目と銀色の髪…空間と氷…)
その色から基本の適性を予測するなら、この二つである。
しかし奴が実際に使ったのは火と雷。この差は何なのか。
すでに結論は二人の頭の中にあった。
(「…想像力も、適性のうち…か」)
(「なんか言ってたね、黒い人が」)
クーシャの素質はこの二つであっても、ヨリヨシが想像しやすかったのが火と雷であったと。
実際火と雷の適性はどうだったのかは知らないが。
しかしそうだとしたところで、二つ問題がある。
ほかの適性が読めず、それによる弊害は対処しがたい。
そして…。
(「あいつ、こっちを仲間と解釈したの何でだろうな?」)
(「そもそもお互い様、何のお仲間か言ってないのにそこ?」)
(「うぐっ」)
痛いところを突かれるコーキ。
そう。振り返ってみよう。
――「さて、お仲間はいらねぇ、殺すか」――
――「お仲間ってことはむしろ物ってことだから」――
強いていうならコーキは「物」というキーワードが強調された程度。しかしあのキレようだと少なくともあの時点ではわかっていない。
そもそもヨリヨシがいった方が先なのですが。
「むむむ」
「どうしたのー?」
「あ、いや、…この卵焼き、いつもと味付けが違うなって」
クーシャの声に対応するシャリア。
コーキは別の方面から手を打つことにした。
(「雉鍋叢那」)
「え?」
「あ……っ?う?」
ふとその言葉を思い出したのだ。
(「命ずる」)
「ん?何か…痛い?」
それにクーシャは反応する。
(「…………………気にするな、考えなくてもいい、好きにしておけ」)
しかしその言葉に反して彼は動き出す。
瞳は透き通る紫に染まり、髪もその「透き通る紫色」が浸食していく。不思議なことに、瞳より全体的に青みが強く、向こうがぼんやり見えているような感覚さえする。
シャリアはぽかーんとしている。コーキも似たようなものである。おいこら大体お前だろ、原因。
「陰よ、食らえ食らえ空まで面まで線まで点まで!!知られざるは亡き者よ!」
そして魔法が世界が浸食していく。
邪滅の魔力は人を食い殺していく。
食われた少年は何かに魅入られる。
「破滅を呼べって、あのお方は…我が女神はおっしゃったのだから!!」
そうして牙をむくのだ。それが当然であるかのごとく。
「風よ!空を舞われ!!我が身を空より疾く成せ!!」
急すぎて二人とも反応できるようになったのはこの瞬間からだった。
「正義よ、陰を討て」
それでも的確に判断し、陰は邪滅属性とみて対応する。
「陰よ、形と成せ」
その成果として応じて陰を使って何かの形を作り出すその前に破壊することができた。
互いの内心に焦りがある。片方はそれを隠しもしなかった。
[崩されたね、崩しやがってYおれじゃこれならいいんじゃないかなそれ」
混濁する存在は内心をさらけ出しながら迫る。
後ろから何かが落ちて割れる音。
「ああ、これが私たちの末路か…ってな感じ?」
「メル姉…落ち着いて!」
メルシャンの声がした。
(「この光景を見た貴方は1d3/2d3の……って伝わんねぇか。とにかくこいつ殺すぞ」)
そしてこんな場違いな発言をかます。多分メルシャンは4減少でシャリアは3、コーキは1。
だから何?。
「だからだめだって」
(「今回はしゃれにならねぇんだよ!…メルシャンは下がって!」)
いつも通りの指摘に今回ばかりは反論する。
これを殺さず処置するにはそれなりの犠牲か手順を必要とする。
そして彼らは知らないことだが、その手順をとるにはもう手遅れなのだ。
(「代われ…もうこのイメージは見切った」)
「はーい、……ごめんね?守るためだから……空よ、舞台を移せ。行く先は無縁の荒野」
どことも知れない荒野に飛んだ。
そこには本当に何も特別なものはないようにに見える。
どこもかしこも、ナニカの骨と色とりどりの光があるばかり。
[ここは……どこだろう」
「手遅れなやつが多すぎるんだよ」
いつの間にか表が変わっていた。そしてやはりというか彼らは反応する。
[いたか…お仲間さんよ」
「うるせぇよ」
わざと感じていない怒りを見せる。何故に怒りを見せているのかは自分でもわかっていないが。
「鉄の雨さえ超えてみな…お前はそこまで至れるか?」
目の前の存在は長篠まで生きているのか?
少なくとも彼の者は病に伏せて亡くなっていたが。
「心よ、去ること無かれ!」
二人とも、この場から去るには相手を倒すほかない。
「さて……と、
徐かなる林よ、我の無為の音を掻き消せ。
動かざる山よ、不動の鎧となり守衛を果たせ。
動く雷鳴よ、槍となり我が手中にて無双せよ」
「ちょーっとたのむわ……。
おっけー!正義よ、光よ、己の尊厳がため敵を貫く祝福と聖光の剣たれ!
……あんがとよ。じゃあいくぜ!悪よ、闇よ、己の意思がため牙を曲げる守護と闇邪の刃たれ!」
戦いの始まり。
というかこいつ、どうしても人殺ししようとするのね。
第27誤字報告について
魔物など、欠落のある生物の鍵かっこを[」とし、正常な生物と区別しています。
意図的なものと明記していなかったことを謝罪申し上げます。
また、報告いただき心から感謝しております。




