呪いと揺蕩い
次以降へのつなぎです。
いつも以上に脈絡がなく思考を揺蕩っています。
魂の浸食を止めるのは呪い。
ということでこの前来た殺霊に呪ってもらってとりあえず浸食は止まった。
予想の斜め上を突っ走りつつ、あっけなく終わった記憶の探求と。
「誰だ?解除するときに魔法を使う必要があるって言ったのは?」
誰かの追求である。結局シャリアは話すのを任せて寝た。いくら何でもためらいがなさ過ぎる。
「それ、は…」
「よし、理由を聞こう」
「強制!?」
明らかにきょどったセリーナが犯人だろうととりあえず追求する。
「はぁ、気の強い子だこと」
「悪いね、攻撃的な性格なもんで」
「自覚あるならちょっとは直しなさい」
懲りない子供に呆れる親、といった構図である。
「……私はいくらか高度な魔法は使えるけれど、聖癒と日光、氷結と風圧くらいのもの」
一息ついて、コップの中身を飲み干してから続ける。
ちなみにくらいと言っているが、多いような気がする。
「全部の知識は一度学んだけれど、さすがに縁もなかった精心属性はうろ覚えだったみたいね」
セリーナさんが話していたらしい。しかも明らかに一次。
まぁ後は追求というより自信ないとでも言って欲しいだのといった、ただの文句くらいだが。
「ソルトを苦しませるのもよくねぇし、精心と闇夜だけでも調べるか…」
コーキが珍しく継続的にシャリア以外を気にする。
「ほかに闇と縁の強い属性ってあるのか?」
「ない、強いていうなら地殻属性、かなぁ。確か洞窟とかって話だから、この辺だとその縁はあまりないかもしれないわね」
「助かる」
チューンも何気にやる気。弟分に思うところもあるのだろうか。
まぁ、みんなやる気だけども。
これから闇を調べるのについては、シャリアの退屈が免れないことと、どうも浸食してないらしいことがわかったことから、コーキが動くことになるだろうが。
「さて、今日の夜はタンドリーチキンにスモークサーモンだから、いろいろ任せるよ」
各自それぞれの準備を行う。とはいえシャリアとソルトはまた外で遊ぶ。また教会の前に子供たちがいるのだ。
ちなみに慣れない洋食なので俺もこの体抜きでほぼ手を出せない。和食しか教わらなかったからな。
アリカは十に満たないが、料理が得意である。一方裁縫はからっきし。
「シャリアだー」
「ソルトもいるー!遊ぼ遊ぼー!」
そんなことは遊ぶ子供たちには関係ないんですけども。
そうでなくともシャリアの歌みたいな実害がなければさほど関係ない。
シャリアの歌と同じレベルでチューンの運動能力もひどい。なぜ運動として走ったときだけ転ぶのか。
そんなことをうだうだ考えている。だって俺は暇だし。
まぁ結局のところ、俺もシャリアもとはなかなかいかないのは当然なわけで。ほとんどいつもどちらかは暇をしていた気がする。
娯楽の少ない世界で、これから何を求めて何のために生きていくのかも問題である。というか先進国どもが多すぎるような。特に日本とかいう端っこにある世界有数の文化・流行を超吸収&魔改造する変な民族。
とりあえずファンタジーだもんの理屈で、戦いの荒野に出てみるのも一つ。俺次第では戦闘向きにもなれるし、俺なら殺霊にもなれるようだから、魔物狩りも殺霊もやれそうではある。商兆についてはもう、うん。俺は商売無理ですよ。
とはいえこのまま聖職につくのが無難か。聖女にはそのうちなるだろうし、ともすれば教皇も狙えるかもしれない。狙う意味があるかは知らないが。というかどういう職業かは知らないし。
ちなみに、シャリアの魂が聖女に、俺の魂が殺霊になれば、入れ替われば切り替えられる。ほか二つは身分だからどうにもならないけど。
(「夕日…か」)
「前に見たっけ…?」
夕日は覚えがない。紅葉なら見たが。
……また見に行けばよかったかもしれない。なんかそう思うとあの紅が恋しくなる。
「春が近いのかな」
(「なぜそうなった?別にそんなこともないと思うが」)
急に何を言い出すのか。と思ったが、続く言葉には納得せざるを得なかった。
「だって、あの子の親はいつも同じ時間に来るから。この前はもう真っ暗だったじゃない」
最後に去った子供を指さしそう言った。よく見ているなぁ、と思う。しかし、今も大して変わらないような気がする。夜目が利くのだろうか。そういう問題ではないのだが。
このやりとりをしている間ソルトはシャリアの発言だけでは会話のすべては察しきれなかったみたいで、困惑していたが、聞いた部分だけでも疑問があったようなので問いかける。
「春っていっても何があるのさ?」
ソルトはあまり外のことを知らないらしい。
例の道にでも連れて行ってやろうか?
あ、でもあそこって春に咲く花あるのか…?
むむ。
「季節って大事だよ?」
「そうかなぁ」
まぁ、聞けばいいか。
なんとなくで春の風物詩でも見に行きたくなった。
ので聞いてみた。
(「ってな訳でな」)
「むむむ、この辺季節観無いからなぁ…」
事情をきっちり説明して、メルシャンに聞く。
(「ってか未だに俺の声聞こえるのな」)
未だこちらの声が聞こえる、つまり未だ一応心を読めるらしいメルシャンは、こちらを見もせず何かに没頭しながら話を聞く。
「まぁ、それは永遠の謎ということで」
(「そうか、まぁそうだな」)
完治している訳ではないから当然の結果である。
当然とはいえ、気づくかどうかとは別問題らしい。
扉が開き、ゆっくりと人が入る。
「セリ姉、春の風物詩とやらをみんなで見に行きたいらしいんだけどいいとこない?」
今しがた入ってきたセリーナに聞く。
「ん?ああ、そうね…よくわからないけどこの辺では心当たりはないわね」
しかしこちらからも情報はなく。
となれば…。
「あそこにまた行ってみるしかないか」
自然と、外に行ってみようという考えに至る。
(「メルシャン、冬の終わりに外に出ないか?」)
「暖かくなってから?」
(「うーん、それはまぁ、そっちの基準次第かな」)
「うーん、それもそうかー。うん、まぁいいよ。なんか考えがあるみたいだしね」
とりあえず、新年迎えてからの話である。
とは言っても、別に新年を祝うしきたりはない文化のようだが、なぜか大掃除だけは伝わっているので、まずはそちらを頑張ってもらおう。
そして俺は海に浮かぶように、考えず揺蕩うのだった。
晃樹は秋が好きですが、私自身は嫌いです。こんなことを言う理由は大したものではないですが、なんか「自分が体験したことしか書くな」とかいうくだらない話がどうのこうのという話題があったらしいので、便乗したかっただけです。人間様は想像する生き物であるようでして、これからを創造するのでしょう。多分。
2019年、令和元年。
今年もまもなく終わります。
よいお年を。




