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二度目の追憶 黒

遅くなりました。これからもしばらくペースが落ちるかもしれません。調整せずできたら出すので不定期が過ぎるかもしれません。

「あっつ!マジあっつかった!」

 メルシャンは大きな声で叫んでいる。

「まず水!」

 そう言ってエリシアが差し出した水を飲み、一息つく。

 その時、外がざわついた。聞きとれないほどの大きさの声がたくさん合わさり聞こえているため、ただの音同然である。

「なん?」

 騒音に対して敏感なソルトが反応する。

 その音は、とても不吉で恐ろしく感じられた。

「っ!」

 跳ねるようにシャリアとソルトは外へ出る。

 外へ出た後、彼らは気づくことになる。

 そこにはいた。

「黒い、影?」

「シャリア、下がって!」

 黒い影のような者がいくつも立ち歩いていた。その手には黒いカットラス。

(「……」)

 しかしコーキは黙っている。不自然なまでに。あれ、マジで何で?

「お兄ちゃん、あれ、邪滅属性なの?」

(「……」)

 そう聞いても反応がないので、そこで初めて不審に思えた。

「中に、戻るよ」

「えっ?」

 駆け戻る。扉を開けると、メルシャンが立っていて、ほかの皆は座って…身動きをしていなかった。

「もしかして、お兄ちゃんも止まってる?」

「なっ、何で、っ?」

 外から悲鳴がいくつも上がったが、不審なことに泣く声の割合が大きい。

(「づっ――あっ、っ、あの!」)

 そしてさらにおかしな事に。

(「わ、()、何で、こうなってるの!?」)

「え…私…なの…?」

 シャリアが増えた。


 表の方に出ると何人もの子供が座っていた。概ね3才から5才と見える。

 一人だけ呆けてるメルシャンより年上らしき男の子もいるが、それ以外は幼い子供たちである。

「子供だけが動いてる?」

(「私は、コーキ寄りの存在みたい、だけど、何だろ、この感じ?」)

「ごめん、できるだけ最小限の会話でして、超、響く………!!」

「っ―――!!!!」

 何故か年上組にはシャリア2号の会話で頭を痛める。

 何か原因に心当たりがありそう、でも思い出せない、という様子のシャリア。

 まぁ、今の私は理由に見当がついてるけど。

 そんなこんな考えてるうちに、状況は一変。

「おい、これ、どういうことだ?」

「?」

 例の男の子がしゃべり出した。

「なぁ、シャリア、これ、誰だ?」

 この発言で誰だかわかった。

「知らないよ、後これって言わない」

「はいはい、ごめんごめん」

 そして状況を説明することにしてみた。

「魂の浸食、か?」

 お兄ちゃんはこんなよくわからない端的な発言をした。

 ところでさ、お兄ちゃんの記憶の追体験だよね?

 何で、私寄りの視点なの?

「おい、メルシャン」

「何?」

 何か、大きなことが起こりそうな予感。

「俺さ、分かったぜ?」

「何が?」

 それを言い放つ。

「浸食されてるのは外にいるらしい奴らだな。それの影響を受けていないと、今は動けなくなっている」

 メルシャンだけでなく、シャリアもソルトもコーキも影響を受けていることを。

「まぁ、シャリアが影響受けてたのは知ってた」

 元々彼はそれのために考え始めたのだから当然ともいう。

「それってつまり、魂には昔から干渉され続けてたってこと?まぁなんとなく分かってたけど」

「そうなんだろうな。年と共に耐性もつくんじゃないか?」

「あー、あれって年齢…だからなのね、子供だらけなの」

 幼い子供ばかりな理由がわかると、恐ろしい事実にも見当がつく。

「赤ちゃんも、動いてる?」

「えっ………泣き声を追うか」

 その言葉に反応したかのように、扉が開く。

[その必要はない」

 外にいた影の一人が現れた。

[もとよりエネルギーも消費しておらず、時間操作によって寿命も成長も進まぬのだ」

「人間じゃねぇな…あの虎と同じ気配…魔物の類いか?」

[魂なき人間とでも思ってくれ」

 魂がない、つまりはそういう事。にしてもいいってだけでそうとは別にいってないよね。

 そいつはずんずんと歩み、祭壇の前に立つ。

[私こそが神の子だ!神よ、我らの子孫に、幼き子たちに祝福を!」

 その言葉とともに、祝福が授けられたらしく、輝く光がみんなを包む、が。

 二人ほど苦痛にうめく者がいた。

「アァァァァァッ!」

「い、たい、なこれ、何だ、これ?」

 メルシャンとコーキである。

 彼らはなぜか苦痛を訴える。

[その女は悪だ、致し方ない。しかし……」

 そこで言葉を止め、それらは考え込む。その間にシャリアは聖癒属性の魔法を使おうとするが、コーキに止められている。

[しかし、その、何だ、その男…中身だけ違うな、干渉されすぎている。本来の人格に裁きが下るのも近いな」

 そして、彼らの謎の一端をのぞかせる言葉を残した。

[すまんな、神の子よ」

 それだけ。でも、それは大きな謎であった。

[記憶を消し、元の場所へと戻そう。しかし神の子よ、お主だけは復元できる状態で残そう」

 そして一端の終幕。

[何かを得られるかもしれぬ、失うかもしれぬ。でも、それはまた面白いものではないか」

 そいつは、本当に楽しそうに笑い、そして消えた。

[さらばだ――」

 その言葉を待つように、メルシャンは言葉をこぼす。

「わかった」

 その言葉を皮切りに、いくつかの言葉を残す。

「私は罪人。だから、こうなってしまったの。私の名前はメルシャン。神様にももう嫌われている。だから、ひどく呪われているの。多分、あいつらだってそう分かってた。鎖を外してやる方法は一つだけ。それでも、あの黒くならない私。私はそれを信じたい。だからあなたに託す。その方法は。私をもう一度呪って」

 長い、その言葉には、とてつもなくおかしな言葉も混ざっていて、真意のすべては理解できなかった。

 でも、それは、呪いの理解を必要とする、とてもとても難しい話であった。

 たったそれだけ。たったそれだけ。でも、「それ」が大きすぎるのだ。


 魔物の襲撃は大したことがなくはないという一種当たり前のことを、彼女らは追体験を持ってしても理解できなかったのだが、それは後のお話。

 あと、シャリア2号も忘れられているのも気にしてはいけない。軽い問題ではないが、そのうち思い出す…と思う。


 その後。

 目が覚めた。

 シャリアはさっきまで何かあったような気がしてならなかった。そして、倒れ込んでいた。

「だいじょーぶ?」

 アリカが心配そうにのぞき込む。

「うん、大丈夫」

「よかったー」

 しかし、外は未だ騒がしかった。そのことにシャリアもコーキもメルシャンも気づいていなかった。

第27の誤字報告について

魔物など、欠落のある生物の鍵かっこを[」とし、正常な生物と区別しています。

意図的なものと明記していなかったことを謝罪申し上げます。

また、報告いただき心から感謝しております。

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