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追憶 死を見た後

 そこで、確かな死と会った。

 あの少年には何が見えたのだろう?

「毛皮……重い………!」

 本当に重い!

「あーけーてー!」

 爪を放り落として音を鳴らしてから叫ぶ。

 そしてそれに対して当然のごとく反応するセリーナ。

「うっそだぁ……なんでこ……」

 呆れかえるのもつかの間、というかどんだけ反応が早いのか知らないが、まだ誰も来ていないうちに鍵を開けて、シャリアを出して閉める。

 その手際の良さが生むめぐるましい変化にシャリアは目を白黒させる。

「あっ、守りし家を構成する大地に命ず、我が物を他者より隠せ」

 そして魔法を使って床を操り毛皮と爪を隠す。

「長文だと魔力込めるのめんどくさいわ…」

「あー、入っちゃった?」

 本音を漏らすセリーナと、やってきてすぐ失敗したのを悟るエリシア。

 しかしその一方で、他の子たちは誰も来なかった。

 そのときだった。

 視界がゆがむ。その中で正常に歩く。視界が回る。エリシアは駆け出す。手を伸ばそうとする。実際には手を振る。

 だんだん意識と現実は乖離していき―――。


 そこには天井がある。

「ちょー、体、おも……」

 魔力が尽きたらしく、体が重い。

「うそでしょ……」

 そこにいたエリシアは驚きで固まっている。さっきの言葉を絞り出すのが限界なまでに。

(「シャリア、マジで魔力ねぇよ……」)

(「………え」)

 魔力量が少ないらしいことをここに至ってやっと自覚できたシャリア。適性の高さ故に多少の魔法は扱えるものの、使い続けるのは分が悪いらしい。

 魔法を使うのに魔力というものがどれだけ大事か。しかしシャリアもコーキも、魔力を存在するらしいことしか理解できていなかった。

 寝てなかったコーキは魔力がつきたことを理解できたのである。

(「しかし、そりゃあ外にいるわけにはいかねぇわな……」)

(「どういうこと?」)

 何を元にしてそう思ったのかがわからないので聞く。

(「いや、な?さっきまでうるさかったんよ、色々しゃべって魔法まで使って」)

(「えぇ…そんなことがあったのか」)

 外では迷惑がかかることこの上ない。そりゃあ外には出せない。セリーナが口を挟まなかったのはわかっていたから諦めていたのかもしれない。もしくは、こちらだけでどうにかしそうだからか、と思ってはいるが、正直こちらは望み薄であると考えていた。

「はぁ………後でまたやるのかな?これ」

「やろうかな?」

 やろうかとは考えていても、うまくいくかは不透明である。

 とりあえず、思い出せるうちに続きを思い出すことにするのだった。


 さて、このときやっとコーキはない口を開いたんだっけ。

(「はぁ、あの男の子は何だったんだかな」)

(「本当にね」)

 そうやって会話しながら話している。

(「あいつも例の魂食いか?」)

(「違うと思う、というかあれは実在するの?」)

(「知らん、だが昔話がすべてフィクションとは思わん」)

 絵本で見た、魂食いと鉄の聖女の話。何より不自然だったのは、絵本にするには堅かったことである。

 ちなみにその魂食いは、目についたものの腹や胸にかぶりつき、魂だけを吸い取る化け物である。

「何を考えてるのー?」

 メルシャンが珍しく眠たそうに問いかける。

「もぐもぐしてたのかなって」

 そしてこの意味不明な返答である。

「………そ、そっかー」

(その説明で誰がわかるか……あり?「聞いてなかったのか?」)

 ここまで来て詰まったのでよーく考えたが、その疑問に答えてくれるなら聞こえているんじゃないか、と思いつつ。

「あ、うん、寝てた」

 歩きながら寝ていたらしい………。


「………なんかびみょー」

 微妙なところまでしか思い出せなかったらしい。

「いいから、まず着替えて夜ご飯にしよう!」

「うん!」

 そうして駆けだしていくのだった。

 ちなみに、寝てた時間は3時間程度である。

催眠中は何事もなかった。ことにしてほしいけどしなくてもいいです。5才児なのでエ□同人みたいな展開はないでしょうけど。

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