3月の悪夢・何事もない前哨戦
3月の悪夢は次が作中の来年になる予定です。
先回りした。
「ただいま。しばらくはここでは俺だけだな」
「うん、聞いてるよ。大変だよね。でも私は話せるから気にしなくていいんだよ?」
(「そういえばそうだったね。久しぶり、メル姉」)
「うん!」
半年以上の久しぶりだ。
「もう10才かぁ、大きくなったよね」
「メル姉もね!」
にしても転移したら目の前にいるんだからびっくりだ。いや、場所的にアリカならわかるんだけどさ。
「あの、あの!ひぇ!?え、殺霊!?あ、間違えた」
「えっと、どちら様?いや大体わかったけど」
真っ白の女の子。大体こういうときって目は赤いものだけど、それすら白っぽい銀色。
「あぁ、マドレーヌちゃんか?」
「なんで、なんで知ってるの!?」
「いや、リリスさんを追いかけてたと聞いたから」
「え、あ、え、あえあえ?」
余計に混乱させてるじゃん。後はリリスちゃんになんとかしてもらおう…。
「マドレーヌ!そうそう外に出るなと!」
「あ、リリスさん」
「やぁ。む、そこの………えぇ?」
と思ったらリリスちゃんも困惑。そういえばそうか。
「そもそもさっきあそこにいたのは俺がphase4だから……がメインではないんだが、そういうわけだ。挨拶し損ねてたがよろしく頼む」
「なるほどな。今なら戻っていいぞ?」
「あ、そう?じゃ、改めて。初めまして、マドレーヌちゃん!シャリア・オーディーです。よろしく!」
「あ、そういうことでしたか!……か?聖女様?……で教皇?」
結局混乱から困惑になっただけだった。
「とりあえず、この辺にしておこうか」
(「メル姉、協力して。あまり聖人同士合わせるとよくないらしいから」)
必要に駆られてやってみたけど表と裏で同時にしゃべるの、やっぱ少し大変だな。
「そうだね。とりあえず積もる話があるわけだし、あなたもリリスさんに用があるんでしょう?」
「あ、あ、そうだった!あのね、あのね…」
「落ち着け、ちゃんと聞くから」
去って行った…。
「で、なんかあったの?」
「顔合わせしようかって感じになったんだけどね、急いでってすれ違ったとかなっててさ。ちょっと気になっちゃったよね」
アリカとリブが入ってきた。
ピースされたので返しておく。
「なるほどねー。にしても聖女はみーんな心読んでも変なんばっかでよくわからないや」
「私も!?」
「いやだってほとんど読めないし」
「あ、そっか」
わたしもおかしかったです。
「もういい?久しぶり!シャリ姉」
「うん、久しぶりだね、リブ」
リブについては体格がコロコロ変わるから成長とかよくわからないなぁ。
「聞いてよ!今年の氷売りめっちゃ大変でさ!」
「そうだったの?」
「いやこの前めっちゃ暑くて!」
「はえー……そうだったんだ」
多分そのときいなかったな。この前となると…?
「そういえば銀の海に行ってたんだったな?」
「うん、イヒカのことよくわからなかったから何度か向かったんだけど、誰にも会えなくてさ」
「銀の海の中かもな」
「それならさすがに諦める」
銀の海の毒は浄化できそうだし、無効化して入ることも一応出来るだろうけどね。やりたくないです。神様が直接ぶちまけた自分の名を冠する毒とかすごく嫌。
「銀の海……たぶん来客に気づいてないんだろうな?」
「あ、ブレイザだ」
「銀川の神イヒカも知っていたか。自分をデータバンクと呼ぶだけのことはある」
「生まれた瞬間からありったけの知識をぶち込んだからな。ちゃんとみんなの役に立てるような使い方を覚えてるところだ」
あまり気にしてなかったけどブレイザ、今となってはすっかり大きくなっている。というか、背丈追いつかれてない…?
「久しぶりだな、シャリア。急だがこの前侵入者は侵入者、加護とは違う形で敵の神の力を持ってるんじゃないかと推測したんだが、どう思う?」
「えっと、ごめん。介入しないようにしてたからなんとも…」
ブレイザは少しだけ困惑したが、すぐに納得した。
「ああ、狙いがそうだったな。なんであれ警戒してくれ。探査の神や知覚の神が絡んでる場合、ここでも補足されかねねぇぞ」
「す、す、少なくともその場合、補足されたことを逆探知することができるよ。対抗して聖戦を始めることはできる!」
聖戦。うん、そういう思考か。ちょーっとやりづらいな。
(「さて、シャリア。一回分身させてほしい。マドレーヌちゃんを巻き込んで話をしててくれ。あれは、招かれざる客人だろうから俺も対応する」)
(「おーけー。鎖出して、部屋の外に作ろう」)
制作~。実はなにげに、未だに服を違うものにして分身したことないので今の服をコピーできるのは助かるが、それでも髪飾りだけあえて外せるように試す。
「よ、し。お兄ちゃん、じゃあよろしく」
髪飾りを投げ渡す。
「おう。いくぞブレイザ」
「うん、行こう」
さて、とりとめのない話題って何があるかな~…。
とりあえず髪の結び方かな。よく見るとその白っぽい銀髪には編み込みが入っているようだし。
さて、誰だろうな…?
「難点は、この状態からだと視界が変更できないことだな」
「そうなのか?」
ブレイザは何が起きているのか大体分かっていそうだ。
「ああ、正確には本体……左目から変えるんだよ。今は右を魂と光、左を魔力と光にしてる」
「だから左目を閉じてるのか」
「そう。さ、距離的にそろそろ敷地に入ったぜ。出迎えよう」
「おう。……いらっしゃい。何かご用でしょうか?」
目の前にいるのは、暗紅色の瞳とそれより黒い赤に青みの入った銀色が入った髪をオールバックに流した男だった。
「……」
無言で周りを見渡しているので、二人である程度近づいた。
「……束縛か。たしかあなたの主神ハデスは20年ほど前に戦死したはずだな」
「冥府に落ち、その名は完成した」
「それはそうだが」
束縛の神か。
「にしても束縛の鉄輪を持ち歩くのは物騒すぎない?」
「ロディ…?」
「束縛の極致、ポメグラ・ロックダウンによって生成される鎖と、それを保持する鉄具を組み合わせた拘束具のことだ。これつけてると極致の使用ができなくなるんだったよな?」
「体内で圧縮などという真似ができるなら別だが、な」
(できるな)
(じゃあ二人は大丈夫か)
……正直今だけはブレイザが何を考えてるかわかる。
「本題だ。聖女シャリアに会わせてくれ、話がしたい」
「無理だな。今はもうここにいない。連絡を取るのも難しいみたいだから、無垢の神の加護持ちはほかの聖女に対処してもらってるよ」
「ふん、抜かせ。異端の気配は何より明確だぞ?」
「嘘つけ」
「ほう?」
やっべ、とっさに啖呵切っちゃった。なんかあるか…?
(「私の言葉を復唱しろ」)
あ、叢那だ。なんか前より声がはっきりしてる。
ともかく…。
「人形遣いが異端の聖女に会ったとき、道化の道楽と勘違いしてたから殺しかけてしまった、と俺の主神から聞いたぞ?」
「む?ああ、混沌の神ムラナか」
(おい、何を知っている?)
(回収し損ねた裏切り茶番した味方……だったはずなんだけどね?)
戻った。さっきのはやろうと思えばできる、ぐらいのやつか。
「なんか食らったか?離反者」
「いいや、異端の聖女の情報ぐらい手土産にしないとな、と思ってたんだが……知ってそうだな?」
「そうだな、知らないとも思えない」
残る名目も、ほとんど潰した。
「では、帰るか」
時空魔法?
(うわ!?こっち来やがった!?)
(なんで!?)
(知らん、今聞く。それにしても結構手間かけて仕込んでたみたいだね……こいつ時空適性なかったはずだし)
……。えー?うーん、それならいいか?なんか不完全燃焼。追い払えたから今はいいが、な?
「あー、帰った。俺らの主神のところに」
「はぁ?それならそれで……帰ってこねぇだろうな?」
「よくわからん。少なくとも壁の中と外を転移魔法で行き来するのは難しい印象があるし、あまり適性がないらしいあいつには回数に限度があるだろうな」
少なくとも、ここに直接転移で来ることはないはずだ。
「警戒し続ければいいだけの話か」
「そうなるな。ムラナからの続報が出たらリリスを通じて伝える」
「了解」
とりあえず、歩きで戻る。おや、目の前にソルトがいるやん。
「うお、ソルトか。治療はいいのか?」
「もうやってもらったよ?」
背が自分より高いのは昔からだったか?
「そうか、というか俺は闇夜適性あったような?大丈夫か?」
「今はもう闇夜の魔力に反応しなくなってるみたいなんだ」
「そうだったのか。じゃ、行くわ」
「うん、またね」
えっと、あー……一瞬部屋どこだったか忘れた。
開けると、シャリア一人だった。
「よし、そろそろ行こうぜ」
「うん」
そして転移す……あ、待て!まだシャリア表だろうが!
(「交代交代!」)
「おっとと、はい!」
交代して、転移する。……あ、円卓の間の前でいいのか?あのAI風ゲート無視してるが?
考えることでもないか。




