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魔力に知らすは誰なのか

 着替えた。

 改めてみても、私の胸少し膨らんできたような…?

 これが成長というやつか。

「どしたの?おっぱい気になる?」

「……ちょっとだけ膨らんだ気がする」

「ん?あ~」

 揉まれる。やめんか。

「確かにそんな感じだね、たくさん食べて寝てたくさん育とう。背丈もちょびっと大きくなってるし」

 育つ、か。将来のことを遠く見据えられるぐらい、生きる余裕がいつの間にかできてたね。

「家出して路地裏を歩いた日のことが懐かしいや」

「そんなことあったの?」

 おっと、口に出してしまった。せっかくだし話すか。他に人の気配ないし。

「生まれた家を出て、一日だけふらいついて、そしてセリーナさんに会って拾われた感じ?」

「他の人の気配がないとはいえ未だ敵陣。今はやめておきなさい」

 クラシェさんに止められた。

「うん、その辛辣な感じ懐かしい」

「……いや、だから」

「ごめんごめん」

 えへへ。そうでした。

「さ、戻ろう戻ろ……あ、下はいてない」

 パンツをは……こうとしたけどこれアンブロシアちゃんのだね。

「………」『今渡すべきだと思う?』

『帰ってからにしてあげて』

 彼女に見えないようにナティと対話する。

 さて、眼帯外して合流と洒落込もう。

「おつかれー」

「はい、お疲れ様です」

「うん、おつかれた」

 合流しました。

 さっきのベンチでキザクとハザクがぐったりしている。

「お兄ちゃん」

「ああ、戻るよ」

 お兄ちゃんを回収する。

(「何かあった?」)

(「どうした?何もないが」)

(「まだ残ってないのかと思って」)

 雹霰の眷属。

(「……確かに、いるかもな?」)

 確かめてみないとだめか。

(「お兄ちゃんを“使う”よ」)

(「いいぜ」)

 左目、大分なじんできたような、むしろ乖離してきたような。

 ともかく、魂の属性を見極める。

 光が見えなくなる、魔力の色が消えていく。

 肉体、精神、魂。最後だけを見ることもできるみたいだ。

「問題なし」

 どれが味方でどれが敵かわからん。とりあえず維持しておけば、ムラナが教えてくれるだろう。

(うーん、魔力も見えるようにしてくれる?)

 魔力の色を見えるようにする。魔力の色、黄土色みたいな感じである。そんな話を昔々どこかで聞いたような…?

 なんか前世の記憶みたいな感じするし、お兄ちゃんが昔聞いたのが混ざってるのかも?

 この感覚は懐かしい。今は一度思い出したことが私の思い出した記憶として残るから。

(「というか、昔はいつもお兄ちゃんが私の体を動かしてるような感覚あるんだよね」)

(「少なくとも俺にそんな覚えはないが…」)

「全員集まったね」

 おっと、いつの間にか集まっていたらしい。

「帰ろうか」

(問題なし、帰って良さそうだよ)

 みんなで帽子をかぶり、起動する。


「ただいまー!」

「お帰りなさいませ」

 デックさんが出迎えてくれた。

「おっちゃん、なんで入り口に立ってたの?」

「実は、この壁の中に侵入者がいます」

「………?」

 侵入者って、そんなことあるのか…。

「有史以来、何度目ですかね?百二十…」

「そんなにありませんが。何と間違えたのですかね?」

 セリーナさんがクラシェさんに指摘されてた。

「あれ、久しぶりじゃない?」

「ですね、ソルトとシェーラを連れてきました」

「あなたたち、すれ違いすぎよ!」

「元気そうだね、シェーラちゃん」

 とりあえずソルトの治療をする。

「っぐ……」

 まさに今、苦痛を味わっているところらしい。

 何の魔法か知らないけど、とても痛い。

「あ、あ」

 ソルトが暴れだしかけてる。これ、普段のとは違う。

「ん?」

「みんな?」

 ここの人たちが、みんなこちらを見て(ひざまず)いて祈りを捧げている。

 これは、今まで見た何よりも、純粋な信仰だ。神に祈り、願う。それが自分たちのことではなく、その神自身のことだけど。

 ―――諦めろ、と。すべてがそういうなら、そのすべてを破壊してやるのだ。

 ―――それを諦めるのは間違ってはいない、なぜならすべての原動力は愛だから。

 これは、幻聴だな。いつか彼女が誰かから聞いたのかもしれない。

 いつの間にか、無言でルールも跪いていた。

「ふぁ、終わった~!」

「今日は、急に来たよ…」

「というか、何を思ってるかは大体わかるけど何でいるの?」

 とりあえず私しか話しかけられない気がするからルールに話しかけておく。

「なら、それだけが答えだ」

 そうですか。相変わらず純情なことで。

「どこまでも好き勝手やらせてもらうから、失敗しても知らないよ」

「構わんよ、もう失策する気はさらさらない」

 今、なんとなくこの組織が私に抱えていた秘密がなんとなくわかった。

 ここにもう二柱、神がいる。それだ。

「とりあえず侵入者の狙いは聖人か殺霊だ、だから外に出るな」

 私はどっちにしろ問題になるか。

「わかった」

「なるほどね!チューンに伝言したのはあなたね!」

「その通りだ、よくわかったな」

「ふふーん」

 ああ、だから三人ともここにいるのか。

「当分大丈夫な保証はないから毎日来るだけ来るよ。余裕のあるときだけでもお願い」

「シャリア、あなたも気をつけてくださいね」

「自分も大事にしなさい!」

「うん、また明日!」

 とりあえず、三人帰ったら日常に戻りそう?

「そういや、ナティは敵味方をどうやって確認してるの?」

「私?この子を直接改造して見えるようにしたよ。でも多分今回の侵入者、主神が敵って感じじゃない気がする…」

 あー、その方法が使えないのつらいな。

「敵、ね…」

「これは、開き直ってちょくちょく外に出た方がいいかもね。いっそ来年から学校通わせようか?」

「それもいいかもですね。すぐに見つかるとも限りませんし」

 セリーナさんが通ってた学校。……そういえば、シェーラちゃんは今、お母さんって呼んでいるんだろうか。

「あの人も通学経験がありますよ、闇の学年の最優秀生徒です」

「闇の、ってあのすごい謎に荒れてたやつ?」

「あれ、本当になんでですかね…?」

 謎が多い。

 とにかく、そんなにすぐの話じゃないから、頑張るとしようか。

「風詠部の誘いもあるし、一緒に行こうか?」

「うん!行こう!」

 怪しさ満点ながら、さておき次の冒険を始める。

 ただ、あまりたいしたことはなさそうだった。

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