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祈りと呪いと正義と悪

 帰ってきた。

(「あの女、魔物化した場所にいたんだろうなって、対面しての一言で気づけた訳だが」)

「そうなんだ」

(「まさかの親子だよ、面食らったわ」)

 さすがにびっくりだよね…。

 急にそんな話して、その後かなりの速度で食いちぎった。あれ自体は予測できなきゃ対応できない。

「なぜ…?」

 ん?今のは…?

 とにかく、襲われないよう事前にできることはあった気がする。

「氷なら自分の身を守るぐらいできるはずだなってのは言い訳かな?わざわざ追って入る理由が気になってた」

(「悲劇を受け入れられない、つまりはあれがまだ生きてることに縋っていた、が答えだったかな。あの女は防御ができる、できないとかじゃなくて、やらなかったんだろうな」)

「だよねー。止めればよかったかなぁ?でも何もわからないまま止めるのも怖いし…」

(好奇心は猫を殺す、というけどあんまり他人を止める理由にならないよねぇ)

(「所詮猫だしぐらいの意味が含んでそうだもんな。それいったら猫好きに怒られそう」)

 なんか一人入ってきた!あ、そうだ。この流れで話すのもだけどちょっと怒っておこう。

「ところでムラナ、ずっと話せてなかったんだけど、前に魔龍に会いに行ったとき目の制御いっこうに返してくれなかったのまだ忘れてないよ」

(あー、そんなんあったっけ?ごめんねー)

「ムラナの場合普通に痛いんだよね、あれ」

 理由は知らない。

 まぁ、興味もそんなにないけど。

(「とりあえず、本題に進むか。入る前、ってか説明聞く前に聞こえたあの声は結局なんだったんだ?」)

「さぁ…?」

(その声の内容が聞きたい)

「間違っててもいいなんて誰も思わないんだよ、だったかな」

(うん、忘れていいんじゃないかな。意味分からん)

(「とりあえず、帰ったことを涙巾部に報告してからみんなに会いに行こう」)

「だね」


 涙巾部への報告は一言二言ですんだので置いといて、外に出ると工事現場に見覚えのある大きな右腕の男の人がいた。

「あ、お父さんだ」

「ん?シャリアか、元気してたか?最近見ないが」

 さっきの流れでつい口に出したら、気づかれたらしい。お邪魔します。

「うん、ちょっと忙しくてね。お父さんも元気?」

「………ああ。まぁ、な」

 何か言いたげというか、何というか。あ、なんとなくわかった。視線が腰に向いてる。

(「そういえばそんな奴だったな…」)

(「説明」)

(幼女趣味だっけ?なんかそんな感じあったよね)

 えっ。あ、腰に向いて、あー。直球性的な意味かよ!

「なぜこ」

 てっきり成長が見れたからかと思ったわ。

 今の声の出所は察したので後で潰すとして、とりあえず、なんとなく、たいした理由もなく耳元でささやく。

「どうしたの、パパ?」

「おい、やめんか」

 苦笑しながら振り払われた。

(「たまに変に踏み込むよな、やめておけ?」)

(本当それ。怖い人に本当にひどい目に遭わされても責任とれないよ?私は)

(「ちょ、おい…」)

「はぁ、そうですか」

「そりゃ苦情も出るだろうよ」

 あ、察された。

「せいぜい気をつけろ。俺も外じゃなきゃ理性が効かねぇよ」

 あ、はい。

「守ってくれるやつが実際はいるとしても外を一人でふらつくのもどうかと思うが大丈夫なのか?あいつとか」

「大丈夫だよ。その程度なら心配ご無用!そういえば、あの女のことは元から信用してなかった?覚えてる限りそんなに仲悪そうじゃなかったんだけど」

 幼い頃のこと、よく今も思い出せるなぁと思いつつ聞いてみることにした。

「ただひたすらに面倒な女だった、お前を追い出せたらもう関わらずにすむ」

 そりゃそうなんだろう。それはそれとして、なぜかそこはかとなくいたたまれない。

「じゃ、行くよ。またねー」

「おうよ」

 さて、急ぐ理由は特にないのだけれど…。

「やっぱり信じがたいよ、そういう生き方ができる子だったなんてな」

 うーん、期待されてないのはしょうがないのかな。

(「教会関連はなんだかんだ女社会っぽさあるのかねぇ?」)

(「後ろ暗いところ見てないからわからないなぁ…人数はほぼ同じだよね」)

(「だな」)

 でも、そうだとしたら考え方の違いという一言でまとめていいかもね。


 あれからたくさんの力の使い方を覚えた。それがいいことなのか。

 そんなこと考えたらもうついたんだけど。

「ただいま!ソルト大丈夫そ?」

「うん、今のところは。ちょっと部屋に来てー」

「うん!」

 とりあえず、ソルトの治療を始める。

「じゃ、やるかー」

 変換吸収。最終的には鎖が生産されていく。魔力を変換しておけるの本当に便利。いつも助かってる。後でちゃんと言葉で伝えとこう。

「大分ため込んでるね…」

「最近、ため込まれてる割には痛くないんだよね」

「そうなの?ちょっと不安になるよ…。とにかく、これで終わりかな」

 うん、なんとかなった。今回は大丈夫だったけど、半月開けて大丈夫な保証はなさそう。

「それにしても、元々大きかったけど大きくなったよねぇ…」

「そう……かも。でもシャリアもだよね」

「そうだね、たしかに」

 なんとなく、座っている椅子が少し小さいように感じた。

「ふぅ。じゃ、シェーラと遊ぼうかな」

「そうだね、中庭にいるよ」

 じゃ、行こうかな。


 中庭でなぜかシェーラが犬に餌をやっていた。

「どうしたの…?」

「なんかいた。あ、ちょっと……えっと、黒い方」

「あー、うん、わかった」

 お兄ちゃんに変わる。

「コーキだ。名前覚えてくれ」

「そもそも初耳よ、私の覚えている限り」

 話し込むならどっかに座るべきなのではないかと思うが…。

「ああ、それもそうか」

「それより、これ」

 そういって、ポケットから取り出されたのは宝石。

「セリーナが保管してたのだけれど、もういらないみたい。持ってって」

「わかった、でも何で俺?」

「話したかっただけ」

「そうか。もう少し話すか?」

「いや、いい」

 ……ふむ、すぐ終わったな。

「いざとなると何も出てこないよな」

「そうね」

 なんか、また声が聞こえてるんじゃない?

「……戻るのはやめておくべきか」

(「私が対処する」)

 これはお兄ちゃんでは話が平行線になりそうだし。

「そうか、地下から帰ろう」

「うん、そうする」

 おや戻った。油断禁物ですねぇ…。

「あ、戻ったのね!じゃあまた今度ね!シャリア!」

「うん。後リブによろしくね、シェーラちゃん」

「任せなさい!」

 ふふ。


「なぜ殺した!なぜ殺した!」

 なぜ殺した?なぜ殺した?私は……。

 というかそもそもどうやって話しかけてきてるんだよ。

「なぜ!なぜ!」

 こいつ消しとくべきなんだけどなぁ…。

 とりあえず剣を構えてどこにいるか探す。

 私は殺していない、ということにして逃げるのは簡単だろう。そもそも聖女なのだし、あんな言葉、この悩み、消すのは簡単だろう。だけどこれは論外。

 こんな言葉無視して消し去るのは少し忍びないが、殺したのが間違いだとは思っていない。

「あのさ、あの力を何で得たの?」

「なぜ殺した!なぜ殺した!」

「知性がないなら答えてあげる理由ないんだけどなぁ~?」

 会話する気あるならまともに返せー!

「……知らん!我が主神の望みだ!」

「あれはたくさん人を殺すつもりだったよね。だからあの神を殺した。そのためにはあなたには死んでもらう必要があった。私が殺すかどうかは別だけどね」

 私がもっと早くに殺すべきだったね。ラリアの死はそれで避けられたんだから。

 数を優先する思想も間違いのような気はするんだけどねぇ…。とりあえずこれで通すか。

「まだ……まだ……まだ……まだ……」

 今度はラリア!?

 …………あー、ムラナ?

(うん……これ、どうしようねー。とりあえずルールには伝えたけど)

「神だと思って斬れってさ、ルールの魔法込みで」

「あ、ありがとチューン。いたんだ」

「うん、見ないうちに大分変わったね」

「まぁねー」

 手を振り、とりあえず詠唱する。

「魔に祈り依存する愚者を拒め。己が手のみで切り開け。愚か者の哄笑が死者の定義。生きよ、他者に依存せず。止まれ。ブレイクスペル」

 そして剣にその魔力が込められ、側にいたのが見える。

「食い尽くして!」

 その魂に刃が食い込むと、一瞬でどこかに消えた。

「ラリアも、お母さんのところに送るね?」

「うん…」

 ラリアにも当てる。

(「多分転生するんだろうな」)

「なるほどねー。氷華の性質だったのかな、今の」

(そうみたいだよ。氷華ならそれでいいって返ってきたし)

「なるほどねー」

 さて、仕事に戻ろう。ってところか。今の行動は、私にとって正しかったのかな?

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