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貯蓄と散財、財は地ではなく人にある

 帰る途中も何事もなくとはいかず。

「魔龍の接近を確認、近衛部に応援を求めます」

 壁偵部かな?応援要請された。

「どんな個体?」

「未確認の個体です。戦力未知数!」

 なるほどね。

(「行こうか?」)

(「ちょっと危ない気もするが。この前の後に来た方は倒せる保証ないだろ」)

(「まぁそうなんだけど、とりあえず会話はできるみたいだし」)

(「それもそうだな」)

 はい論破完了。

 また戦うのは不安だけど、正直なんか楽しみ。

「私突撃しまーす」

「いってら!」

「やばけりゃ守る~」

「あ、はい。わかりました。僕はキザクと裏方に回りますね」

 あれ受け入れるんだ。あっさりしてるなぁ。

「魔龍との単独交戦経験ありましたね…」

 クラシェさんも冷静に受け入れてる。

 私はノリで突っ込みすぎなのではとか思えてきた。

「偵察結果の伝言です、属性は風圧、位は貴族級と判断!若い個体ではあるものの実戦での能力は戦士級以上を見込んでいるとのこと!」

 級がよくわからない。とりあえず貴族と戦士なのね。

「あなたが以前に交戦したのは貴族級、後に遭遇したのは最高ランクの半神級です」

 なるほど…?


 魔龍のランクは五段階。

 半人級、戦士級、貴族級、王侯級、半神級。

 あとメンマちゃんみたいな魔龍人は大体半人級らしい。多分あの子は貴族級かな?前にあったのと能力は大差ない気がする。多分あの子の方が強いけど。


 魔龍くらい余裕で迎撃可能なようで、殺霊とかは動員しないとのこと。

 そっちの方の近況も気になるな。

 そろそろ来そうな感じなのに一向に来ないので暇を持て余し、壁の端にたって全身をただ眺める。

「髪が白くなったの、こうして改めてみると違和感たっぷりだな」

 そういえば変色するなんて現象、他にあるのだろうか?

(「色は適性に依存するらしいし、聖女になって聖癒に特化した状態を示してるんだろう……けど」)

 だからといって、この現象がおかしくない訳じゃあない。

「……何でもいいか」

 やーっと近づいてきた。

「マジックアイテム、超指向性メガホン!『何のご用ですかー!!!!』」

 ナティのマジックアイテムは用途が限られる使い捨ての代わりに割と何でも楽にできる。

 風圧魔法で音を届けるなんて手間がすごすぎる。あんな遠くだと私には難しい。あ、でも至近からならできそうだし後で疑似腹話術やろう。

 っと、返答の気配。

『うるさい』

 あ、ごめんなさい。

『貴様らは我が滅ぼす。せいぜい泣き叫んで許しを請えばいい』

 ふーん。こっちとしては許しを請わせる暇は与えられないんだけど。

 叫ばれると困るから断末魔も許さん。

「そう考えると、もう見えてるからやるか。行きます!」

(「だな、空よ」)

「承知!」

 敵が制御できない風を巻き起こすらしい。その前に退却できるようにしつつ、行こう!

(「竜へと至れ!」)

「鎖の魔力」

 背中に乗ります!こんちゃー!

「な」

「覚醒せよ!」

 鎖の形状を剣のように変えて刺し貫く。とりあえずはこれが攻撃の最適解な気がする。

「正義よ、光よ、己の尊厳がため敵を貫く祝福と聖光の剣たれ!」

 とりあえず右腕は手持ち無沙汰なので持っておこう。

(「魔龍、か。種族的には神に遠く及ばないようで」)

「だからって目の前のが弱いわけじゃないんだけど」

 そろそろ来るかな?

(「空よ、元いた場所へと舞い戻らん」)

  多分だけど広範囲攻撃。逃げるね!

「鎖はあの場所に残りっぱなし?」

 なんか置いてけぼりになってる。

(「ほんとだな。回収できそうだしこのままでいいか」)

「だねー」

 にしてもいつの間にかそれなりに人がいるような。

(「ってか普段からこんなせわしないのか?」)

「私がトラブル呼び出す体質だからねー、あなたもそうっぽいけど」

 なんかナチュラルに話入ってきた!?

(「まーなー、ってか何で割り込んできた」)

「いや、この子作動すると聞こえるのよ」

「あークラウスかぁ」

「なんでだろうね?」

「今のは聞こえてたんだよね」

「うんうん、なんでだろー」

 何かしらあるのかな?

「あ、危ないかも!ピアニ!」

 竜の暴れる気配を察知したようで、フォルテが右腕を輝かせる。

「がんばれ私ー」

 他人事!?

「暴風属性、出力そこそこ!」

 そこそこなのね…。というか緑の光って訳じゃないんだよねこれ。真っ赤のまま…?

「フォル兄、トドメだよー」

 今度はピアニが左腕を輝かせる。

「任せた!」

 あんたもやるんじゃねーのか。

「断罪属性、出力けっこう!」

 さっきから適当な…。って断罪?

「あ」

 暗い紫色の雷が無音で迸る。

「仕留めた?」

「おけなんだよね~」

「おみごとすごいよー!」

 らしい。

 あ、鎖が元の形状で戻ってきた。

(「回収完了」)

(「おつかれです」)

 しまってもらう。さすがにこの操作は私に出来ないのです。さて、もう転移で直接帰ってもいいのでは……?

(「にしてもギラギラしてたな」)

「なにがー?」

「ふしぎ」

「どうした?」

「急に何です?三人とも何かありました?」

「えっ、見えなかったの?」

「「「うん」」」

「???」

 えっと…?

 とりあえずハザク君は置いといて、さっきの件はどうしよ…。

(「俺が目なのと関連が深そうだな」)

「「だろうね。だとすると、何かが漏れ出てたのかもしれない」」

「何かが見えていたようですね。そしてそれを聞いたと」

 …チェンジ。

「そういうことだ。済まんな」

 戻ろー。

 よし。

 そういえばお兄ちゃんに出てもらうことがほとんどなくなってる。

 この力があれば問題はないからかな?

 そのうちどうするか聞こう。多分忘れるけど。

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