貯蓄と散財、それよりも先にお金だった
買った野菜は全部で箱4つ分にもなった。正直私が持つにもなかなか大きいのでお兄ちゃんに鎖で補助をお願いした。
重すぎる。
(「結構きつい」)
(「慣れるまでが長そうだね」)
鎖の扱いは難しい様子。
少々歩いたところで、倉庫部の人にパス。
後倉庫部の人みんな身軽そうな服なのはいいんだけどちょっと露出多くない…?
(「お兄ちゃん……女の人のお尻に目線いってる?」)
(「ケツを見てる訳じゃじゃねーよ!?」)
実際短パンの端っこにネームタグがついているのでそれを見てるだけなんだけどね、私たち。
(「なんか変な名前?というかコードネームみたいな?」)
(「だろうなー」)
クロクロ。カラコン。グラキリ。
うん、変わってる。
「お金はかなり持ってるよ、7桁ぐらい?」
「多い多い多い!!!」
うんまぁ多いとは思うよ?
(「服が…うーん?あー、うーん?」)
あ、物価安い?相場はわからない。さすがにね…。
(「安い?」)
(「日本しか知らんからなんとも」)
「ふぅむ…」
お兄ちゃんもわからないのなら私にもわかるわけがないか。
そもそも子供だしあんまり意識してないのもわかる。
(「あんまり活用できないんだよね、この記憶」)
(「ん?分離する前の記憶とか前世の記憶とかあるんだっけか?」)
(「かなりうろ覚えだけどね、ちっちゃい頃の記憶みたいな感じ?」)
(「ふむふむ?そもそもその頃にその情報を処理できてなかったのもあるか」)
あると思ってもなかった?というかその頃は私たち混ざってるしなぁ…。
不完全でも記憶だけじゃなく思考が受け継がれているという意味では私の前世のでもあるよね、この記憶。
(「ところで金ごまかさなくていいのかよ」)
(「なんか高そうな硬貨については言及しません」)
(「なるほどな」)
ミオセテル。
あれ、多分高価すぎてそれはもうやばいんだけど…。
(「お金あっても肝心なことは……」)
(「それはそう」)
戦争してる最中に経済気にするやつがあるか、って感じの話?
ちなみに両陣営で共通の祝日に戦争を一旦止めることがあったらしいですね。それで続けたの…?
(「なんかどうでもいい方向に考え込んじゃった。とにかくお金を取引する相手じゃないからね、私たちの敵は」)
(「だな……ん?俺から見たら敵って断言できるけどシャリアもそうなのか?あの非道ども」)
(「うん?うん」)
さて、その敵の覚えのある中央に向かって歩いているわけですが。
八方向に伸びてる大通りを端から歩くのは初めてなので大分新鮮。
変わった店があるわけでもないし、大きく雰囲気が違うわけでもないけども。
「にしても買い物も任務か?ってさ」
「うん、そろそろ資源の買い占めが必要なんだ。急に盤面が変わってるから、ここ、5年ぐらいしか持たないもん」
えっ?
「詳しくは今度ね、話すとちょー長いから、ちゃんと話すと一日で語れないくらい」
頷くことしかできない。ムラナたちがことを起こすのが、って話ならいいけどそれなら二人とも知ってることが多いのがわかってるからそんなに長い話にならなそうだし…。
「じゃ、買い物しよっか」
それから買い物しては預けてを三度ほど繰り返した。
神、か…。
「5年しか、ねぇ…」
「どした?」
大男が聞いてくる。
「それしか持たないから準備するんだってさ、教皇たち」
「ほぅ?よく聞けたなそんな話」
あ、そっちに話を持ってくんだ…。大事なこと言ってないしそれでもいいけど。
「いやだって今の教皇あの子だし?」
「あら、いいのですかね?」
あ、道化だ。というか淑女と呼ぼうか、この姿のとき。なんか知らんが簡素とはいえドレスだし。
「というか……なんか知らないけど教皇たちはじめみんな邪神の加護もちっぽさそう…?」
「なるほど……そりは合わないが完全な敵でもないということになりますね」
「神の育成所でしょ?どうしてこうなったの?」
あ、メンマちゃん。
「おそらく敵が放置してるのでしょうね」
「……こっちが正面から受け止める役、あっちが奇襲役?」
「となるかと、奴らを殲滅するまではですが」
対神戦争。さっきの報告でこちらから回避する余地も失われた。
「殺し合いは苦手だね、今まで殺されるときと………」
あれ、いつだっけ?奴らの精神を…
「殺すときと、分かれてたからね」
よく考えれば、あの歌が始まりだったらそりゃあ私のせいだけど…。
「相変わらずおっかねぇなぁ…」
「ねー」
あれ私もそんな風に見られてる?
「っておい!シャリア!そこはだめでしょ!?」
なんちゅーとこに!
誰と話してるのかちゃんと見てないし、声もまだ覚えていないシャリアちゃん。




