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ついに知る神の言葉

 三日前に遡るのである。



 荒天国へ最後の避難をしているものたちを確認しながら、今までとは異なる経緯で幻影の花を起動せんとするものがいた。

 もちろん人間だ。パットみはなんの変哲もない。

 それには腕がない。あまたの拳でひしゃげたものはいらない。代わりに球体のものが肩にあり、そこから糸が出ている。その糸を管理する部品は腕の形をしている。

 それには足がない。縛られつながれるだけの部位はいらない。代わりに足のような飾りはついている。着脱は非常に容易であり、油断すれば落ちてしまいそうだが。

 それには胸骨がない。砕け刺さった呼吸の妨害などいらない。見た目は取り繕っており、気づけはしないだろう。

 字面に対し見た目は何の変哲も……全くなくはないその、男だろうか。

「幻影の花、起動準備完了を確認。総員、起動」

 淡々と処理している。

 なんだかんだ道化より仕事しているオカマの人形の姿である。


「というわけでした」

「………?」

 メンマちゃんは何も理解していないようです。発作みたいなやつの真っ最中だしね。

 せめてその口、拭いてほしいなぁ。ゴーレムの類いはまだしも、ゾンビやオーガの類いも食い散らした痕がついてるのは勘弁してほしい。

 もう二時間ですよ。そろそろホテルにつきますよね、シャリアちゃん?

(うん?う、うん。そうだけど)

「ぷはぁ~…すっきり。でもあれも食べるね」

 それはあかんやろ。黒光りするゴーレム。あの……えっと…………硬くない?



 ホテルに着いてから一時間ほどたって、叢那がついたらしく部屋に来た。

 ちなみになんかアホみたいに胸のでかい女の子が入ってきて隣で寝始めたが、こいつ魔龍かなんかじゃねぇの?

「全く…本能ってのは怖いねぇ」

 おや?

「こいつか?」

「……そういやなんでお前なん?」

「シャリアは寝てる、つーか体ほぼ寝てる」

 口を寝言レベルで動かしてるだけの話だったりする。

「ふぅん…」

「じゃ」

「はーい、詳しくは後でね」

 詳しくは。本題はこの探知魔法関連かと思ったが違うのか?

「そういやこれ何度もあったの知らないのでは」

 ………!?



 起きました。ホテルだけどもこの時間に寝るのは……?背中に誰かひっついてるなこれ。

「……この感じ、メンマちゃん?」

「そうだよー」

(「何だその名前」)

 そうなるよね、そりゃあね。

 後ムラナが答えるのね…。まぁ寝てるか。

「今回の探知は時間がかかりそうだからね」

「今回のは?」

「前までは聖属性探知が目的だったけど、今回は加護を与えた神が誰かの探知だね。ついでにいえば今回は私たちがやってる」

(「お前が犯人かよ!」)

「割とそんなもんだよ」

(「シャリアは諦めついてやがる」)

 えへ?

 実際のところ、それより大事なことが多いだけ。

「聞きたいことは見てきてるからわかるけど……答えられるのはこれだけかな」

 渡されたのは一枚の紙。和紙のような感じがするそこに書かれているのは……魔法の詠唱文?

「これって」

「神が定めたりした詠唱を唱えることで神の極致が使える。私のはとりあえず歌になったけどね。それは法則系統の極致の詠唱文だよ」

 なかなかに短い。

「ぶっちゃけ詠唱中の神の極致を止めるだけのやつだから使い勝手はあれだけど」

「十分じゃない?」

「うん、神殺しするでもなければ、ね…」

 それにしても、これを読む限りでは何の心情も読み取れない。

 多分それでもいいんだろうね。知って欲しくないから。悟られたくないから。

「ところで、あの魔龍については」

「知らない。メンマちゃんもそうだってさ。おそらく若いテリトリーの魔龍たちなんじゃないかって話なんだけど」

 なるほど?テリトリー…?

「対面だと多少読めるね。とりあえず集落だと思ってくれれば」

「それもいまいちわからないけど」

 釈然としないが知識は手に入った。

「最後までそうである保証はできないけど、概ねルールはこっちの味方と思ってくれていいよ、コーキ」

(「わかった」)

 信じられなかった?今の流れでお兄ちゃんに向けるのだし、何かあったのだろうけれど。

 さて、神の極致、使えるといいな。

「あ、一部は使われると困るのでだめなやつはいいます」

「わかった、知ったら確認してから使うようにする」

 目を見てはっきり伝える。そういやそんな見た目してたっけね。やばいわー。

「じゃ、部屋まで送ろうか?」

「ううん、大丈夫」

 部屋に戻ってシェーラとエリ姉と遊ぼう。

(「ここに来たこと何度もあるらしいが」)

(「知ってること説明するよ」)

 その間に説明タイムかな。そういえば知らないよね。



 魔に祈り依存する愚者を拒め。

 己が手のみで切り開け。愚か者の哄笑が死者の定義。

 生きよ、他者に依存せず。止まれ。ブレイクスペル。



 そもそもこれ自体が神に祈り依存する魔法っていう。

 ところでこの文、妙じゃないか?手を貸すという言葉が合わない…。

 あの子、か。うーん……。手を貸すとか対等なものじゃなくて忠誠とか己で望んでいるとはいえ義務とかそういう感じがする。

 そもあいつが言ってたあの子って人間か?神か?それとも魔龍の類いか?

 どれにせよこの魔法の対象は人間だけなのがな。なんかしっくりこない。

次回。

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