屋根の上、牙を研ぐ
さすがにそろそろシャリアも使います。
屋根の上で、ぼーっとする。
「今日もまた平和だねぇ…」
あれから少し時が立って、6月。
「私は……何だろうね?ふふっ」
「何やってんだよ、ほれ、飲みもん持ってきてやったぞ」
「ありがと」
あ、お兄ちゃんが来た!
「分身、なれてきたな」
「ねー、じゃ戻って」
「おう」
鎖をより効率よく貯めるためには、節約が大事。もちろん、必要なときは消費しまくるけど。
「神魔力にしてから貯めると効率いいねぇ…」
神の極致はまだ全然使ってないけど、その元である神魔力は大分蓄積できている。鎖の長さもそこそこだろうか。
「にしても目がなぁ…」
(「まだ気にしてたのか?」)
「いや、あれは別に。でもそれはそれとして気になるよね、単純に」
まだ気にしてたのかってのが何のことかをざっくり言うと、前に赤い目を指してクラウスだなんだと叫び散らされたこと。その内容は忘れた。忘れてなかったらこんな表現しないけど。あーなんだっけ?
(「とはいえ俺が邪悪なのは否定しないけども」)
「何も言い返せないよね」
あ、そう。それだ。邪眼だの災厄の予兆だの。イミガワカラヌ。略してイヌ。……ごめんなんでもない。
とりあえず、ぼーっとしてる。
「地よ、高見させよ。と、やぁやぁ」
「あ、教皇のおじさん」
「シャリアちゃん、ちょっといいかい?」
教皇のおじさんだ。
(「当たり前のごとく圧縮してたなこの人」)
「……圧縮魔力?」
「ああ、そうだね。私は魔法の適性が皆無だからね、こうしないと使えないのさ」
それができるのがすごい。
「にしてもクラウスの本質はここまで研ぎ澄まされるのか……兄だったか」
「うん、そうだよ」
「私も彼と、少しだけ話したいな」
「いいよ、変わるね」
電話を代わるぐらいの感覚でいける。
「初めまして、かな。そういえば話したことなかった気がするや」
「そうだな、まぁあったとしてもそろそろぼけて来てるんだが」
「あらまそりゃ大変だ」
いろいろ大変そう。
「色が変わるのは奇妙か?」
「そんなことはない。魔法適性が高すぎて色が飲まれてるんだろうとは分かる」
「なるほど、ってかそれえぐいよな?」
「まぁあの水晶を壊すほどなのだろう?それではそうもなるさ」
「力はあるに越したことがないが、なぁ…」
「そうだな」
結局こんな話ばかりしていた。
眠いねー。
「では、達者でな」
「おうよ」
「じゃーねー」
手を振る。……さて。
「寝る!お昼寝!」
(「そうだな、おやすみー」)
「うん!」
すやすや。
空が白く見える。おそらく今日は晴れのはずだが。
「副作用だな」
「あ、父さん」
「………ああ、ネジェル」
息子はなぜか青い花の植木鉢を持っていた。
「どうした?」
「貰ったんだ」
ふむ、そういえば恋人か何かがいたという話があったか。
あれはいつだっただろうか。うむ、思い出すのも一苦労だし、あまり考えなくてもいいだろう。
「そうかそうか」
「ところで、この前の話…」
「ああ、そろそろ実行時だろう、来月には儀式を行う。先は決まっている」
問題はあるまい。
「……そっか」
命は落とすさ。間違いなくな。
「頼むぞ、お前も」
「うん」
少しだけ悲しそうな顔を見せてくる。隠そうとはしてるのだろうが。感情豊かで何よりだ。殺霊は感情を殺しがちな節があるしな。そのまま感情を忘れるなどということがあるとこちらも悲しい。
「うむ、空が青い」
心が澄み切ると、空もはっきりと見えた。
すやすやと寝てる間に鎖が伸びていく。
そして、落ちた。
「いた、あれ?」
鎖が体中に巻き付いていた。引っ張られる痛い、痛いよ!
「あ、落ちかけてたのか」
(「ふぁ……んぁ?」)
なんとか緩くして立ち上がれた。
「ねぇ、空おかしくない?」
(「だなー」)
妙な魔力が立ちこめている。
なんか、神魔力に似ている、別の形で完成されたもの。
「これが何か、確かめようか」
(「りょーかい」)
調査……ってほど時間かからない気がしてる。
そうと決まれば、……とりあえず鎖を作ろう。これは日常になるね、間違いない。
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