狂え愛の歌
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前後編の前編なつもりなのですけれど、分量が普段と変わりませんね。
さて、やばいと思うんだけどうゎ扉あいた!?
そっちからは来てないはず……?
「シャリア、シャリアよね!?」
えっ?
「私よ、あなたの……わかるでしょう!?」
「…………、あのセリーナさん、何でそっちから来たの?」
直感的にかなり地雷が多そうなので、ちょっと気を遣って、話さない。
「シャリア?何で名前?あとお母さんもなんで」「覚えてるわよね!?」「ひゃっ?」
「ほら、水でも飲んで落ち着け」
ブレイザはなぜか水を差し出す。「待って、水飲んで死のうってどういうこと?自分に毒を仕込んでた?」
情報量が多い!多すぎる!
っと、来る!
「氷よ、扉を開けて!」
具体的に指示して先に開ける。
「何だ、歓迎するのか」
………やば、周りの人の一部に感染してる。というか、何だろう?
「まぁいい、金返せねぇんだろ、ババア?そいつが娘でいいんだな?」
「借金苦か……何があったのやら」
「ふん、娘探すためにってだけさ」
それで借金になるんだ…。
「いくら借りたの?」
「15万ミオセテル」
おい!?ぜってぇおかしいだろ。
「それ、詐欺ってやつじゃない?」
「別に悪くないだろうが、お前が認識してるんだからお前もそう思うんだろ?」
「まず否定してよ…」
「する必要がない」
ふざけんなし。
とりあえず、思ったよりなんともないなぁ。
いや、この借金自体は頭おかしいけどね。
なんだ、これ。
「……?」
『あの母親に愛されてる、といっていい』
「ずるい」
『やれ』
「もちろん」
起動せよ。我が楔。
さすがに少々哀れだな。
「なんなんだあれは」
状況がわからなすぎる。
まぁ、死ぬだろうしどうでもいい。
面白い死に様を見せてくれ。
「まぁいい、やれ」
「ぐ…………?あ?……ふんっ!」
蹴飛ばされた!?
「急に…!?」
動き出した!やばいやばい!首絞めるな!?
「水よ!空よ!!」
無理矢理血と空気は回すけど……!ぐっ、きっつい!!首の骨折られたらさすがに終わりかねない!!
「さて、殺すわけにもいかないが、これぐらいしないとなぁ…?」
「へへ、聖女様のストリップショーの始まりだ!」
ちょい、脱がす気!?何でぇ!?
「いっ…!」
ナイフ刺さった!もーちょい丁寧に扱えー!じゃない!!
周りは驚いているのとにやついているの。
にやついてるの、大半は同じ洗脳食らってる気がする。一部は……うん、まぁ、うん。変態だー!別にそれでもいいですけど…。
「思ったよりましな教唆だな!愚か者が!」
突撃する男が一人。やたら大きな右腕でやたら大きな鉄塊を支えている。
「すとぉーっぷ!?」
シェーラが待ったをかける。
「あ、おう。っておいおい……馬鹿女、何のつもりだ!?」
「馬鹿女とかいうな!そもそもおまえが私を孕ませたから金が……」
あ、そうだ。あの人、お父さんだ。今日夢で見た。
「その程度か?本当にその程度か?シャリアにも指摘されたのではないか?」
「されてない!」
確証ないからしてないけどお父さんのいうことがもっともな状況にいるんじゃないかなーと思ってる。
当然だね。
それより考えなくちゃいけないのは、お父さんも洗脳は受けてるけど何の影響もないよう……いや影響自体はあるか。ほかと感情が違う。明らかに。同じものを受けてるはずなのに。
メル姉?
「一つの感情だけって感じがするかな。割とためらいとかあるはずなのに全くないや」
なるほど。
「あと、感染してる。私はリブを止めるね」
「!?」
いった。喉震わせちゃいけないわこれ。
あ、ここまでずっと首締められっぱなしです。そろそろ骨が、死ぬ。
えっと………。うーん。
(「リブは、止めないでいいよ」)
「えっ?」
なんとなく、何が増幅されるか見当がついた。
本能だ。食欲と、睡眠欲と、性欲、本能に基づいた欲求に支配されている。みんな食にも寝る場所にも困ってないのかもね。
お父さんはどれも不満がないのか、別の何かに突き動かされてるような。
「シャリ姉、美味しそう……!!」
リブの突撃。リブはさっきまで睡眠欲に任せ寝てて、起きて初めて異変にメル姉が気づいた。そしてリブの今の本能は、食欲。
(「オレンジみたいな目、ね……いいよ、食べちゃいな」)
「………!ブレイザ、奴の方を止めて!」
「承知した!風よ、光よ、心よ、この矮小な身の丈に合う願いを叶えたまえ。天の委ね、彼の意に伴に従わん」
「む…?」
あ、私が何か言うまで動かなそう。てい――
「やっ!あそうだ!自分の身は守ってね!」
ようやく話せるところだけど指示だけ出しといて……後は、私の中に。
「とっ!?」
また首を絞めに来られるかと思ったら、今度は腕を切り落としに来た。それされたら簡単には復元できる気がしない。多分腕くっつけるのが精一杯だしねー。
それは目も同じなんだけど。
なんとなく、渡せばそこのお父さんみたいにある程度抑えが効くようになってくれる気がする。
「リブ、いいよ、食べな」
「……うん!」
一瞬だけ、一瞬だけだけど、ものすごい抵抗を示した。
「…っ!」
そして、私の左目は、食べられた。
痛みに少しうめいていると、視界に陰が増えた。
「リブ…?」
彼女の背に、蝙蝠のような羽が生えていた。なんと。
「相手だよ……!」
なんとなくマイナス気味な行動を増幅してる気がする。
三大欲求の次は…何だろう。
……違う、私はこの詳細を考えてる場合じゃない。
「……」
リブは必死にしがみつき、止めてくれている。
私は、私の中へ。今のうちに、助けを求めよう。




