第二の目覚め
あれから二日。
三日。
風邪は治ったが、違和感は大きく膨れ出す。
「わたしはだぁれ?」
(「シャリアはシャリアだろ?」)
何かに精神が干渉されている。そしてその何かはおそらく俺だ。
同時に、対処法が理解できない。どうする?どうすればいい?
そうしているうちに、ついに来た。
その日は奇しくも12月18日だった。
「あうっ、……わあ―――――!!」
シャリアが驚き叫ぶ。
世界が開けた。
彼女の左腕に入れ墨が走り、消えを繰り返す。
(おのみ)
謎の言葉が意識に立ち上る。
「う、あ……!」
右目に走る途轍もない痛み。
そうして、果てには何も残らなかったが。意味したものは分かった。
俺が、クラウスとしての俺が暴走したのだ。俺はクラウス、とここではっきりと理解できた。
(「俺はもう前世と合わせて15才、か」)
こうなった理由はそこが関係しているだろう。表に出てはならなかったのか、それとも15以下で死んだ魂は本来クラウスにならないのか。とにかく何らかの特異的要因で、このタイミングに起こった。
「こいつはすげぇや」
そして、親からすれば、シャリアは金のなる木だろう。
ああ、もちろん彼がそう考えるかは別だよね。
「よし、どうしてやろうか」
おそらく束縛はしまいが、どうにしろろくなことにはならん。
しかしどうやらその顔は見えていないようだね。いや、見なかったのか。
(「逃げるぞ」)
(「え?どうして?この状態と関係あるの?」)
察しがよくて何より、かなぁ?今回ばかりはどうなんだろうか?わからない。
さて、おっかない理由を話してしまうようで。
(「お父さんも怖いし、何で?」)
(「もう自分を娘としてみてもらえない。ただの金づるとしか見てくれない…可能性だがな」)
これもまぁ、でも間違ってはいない。それより、そうなら恐怖で押さえつけるつもりだろうからね。
何されるか分かったもんじゃあない。
(「でも、よくない」)
……分かってはいたか?
この少女は良心で反発することくらい。
(「お兄ちゃんにとって、自分の親はどうだった?」)
………。あー、それ無駄だぞ?
(「あいつは反面教師だ。人を憎んでいた」)
あのアイドル、雉鍋叢那を!
憎みすぎたから、あのざまになった。悪いが愛情ではなく、憎悪で育てられているんでな。
それはそれは厄介な話。
(「そっか」)
(「でも俺らへの愛情は一応あったんだぜ?あっちには愛情もあるけど、元々支配欲が強かったからろくなことにならねぇよ」)
辛辣すぎるな。
あの人、娘を犯そうとする以外はまともだったのになぁ。でも、相容れないだろう。このままでは。
新しい道は、探すしかない。そしてその手口の一端は、親父に学んでいるのさ。
(「俺らは、おそらく死ぬまで一緒に居る」)
(「……」)
(「いつでも支えになってやるぜ!だからそんな気にするな」)
(「……ありがとう。ありが、とう、…」)
い、いや?そこまで反応する?後理解してくれてありがとう。
同意。なんであれ理解されないのは困る。たとえ被害妄想と混乱に満ちた発言だとしても。
「私はもうここに居ないね。お兄ちゃんが居るから、私は」
……え、そこはこっそり逃げるところじゃないの?
「……そうしろ。ここに居ないで生きられるならそれでいい。ただ死にだけはすんな」
おー、そりゃよかった。
強引には来なかったか。
自分の身を滅ぼすとは分かっているのかもな。あと自分を殺しかねない性奴隷は要らないわな…。
「なわけないじゃん?」
おーい、もっと言葉を選べー。とか言っても無駄だなこりゃあ。おい、誰だこんな子に育てたの!
俺とあの人だぁ!
「私たちは易々と死なないから」
「そうかい。ただ手助けはできねぇぜ?」
そりゃあね。
「さようなら」
「………おうよ、シャリア」
そもそも、ここに居るとろくなことにならない。
んー、状況を整理しよう。
「どこ行くべき?」
(「適当に歩いてて」)
親は追うつもりは無し。
逃がしたことより、執着まではしてない。
話から、この子供の気は遣っている様子。
もしかしたら、確かめられていたかもしれない。
まて、そう思うならもうちょっと……!!
ただし、上記全ては父親のものであり、母親には確認もとっていない。
シャリアの精神状態は安定…か?
お前が安定してないんだよ!
孤児院の類いは知らない。関係する情報も無し。
(「さぁて、どうしようね?」)
ただ、なぁ。
「今、夜だよ?」
(「あー、光で剣でも作っとけ」)
「わかった」
さて、どうなることやら。
加えて今は夜、シャリアは2歳の女の子。あれ?これまずい?
そんなことを考えている間も、シャリアはためらいなく歩みを進める。
雉鍋叢那はこの後ちょくちょく出番が回ってくる予定。恨まれてるキャラなので名前は今調べてでなかったやつ。
後、学校の事情で1週間ほど投稿止めます。ご了承ください。……あの、名前に問題があれば、その間なら変更できますので、是非どうぞ。正直アンチ米でもなんか欲しいと思うのは欲張りかなぁ。




