雪のキャンバスが描く何かの終わり
あの男がこっちへ向かう。
「あくよ、せいをけせ」
生を消せ?
針が一本あっちへ向かい。
「あがぁ!?」
とても苦しそう。苦しそうではあるものの、死ぬ気配はない。
「つぎ」
(「ほっとくの!?」)
「べつにいい、つぎはひとがいないとわかりにくい」
あー、そっかー。
「こころよ、かきみだせ」
「あ、ああぁーーー!」
うげぇ、発情させやがった。
「きいてるけど、まだいたいらしいね」
(「悪……邪滅の方が向いてるらしいな」)
「みたいだね」
次で最後だが?
(「大丈夫か?」)
「もういっこくらいなら」
そうか、なら……
(「なら何も言うまい。やりな」)
「うん!」
そして一番やばそうなのを使う。
「そらよ、とびすさべ」
奴の体が消えた。
それで終わり。いやいや、あいつをどこへやった?
(「どこ行った?」)
「おうちかえりたいっていってたからてきとうにとしょかんまえに」
図書館前かよ。まぁいいか。
(「いや、いいのか?」)
「わかんない」
おいおい、と言いかけて、ふと思う。
二歳児に判断させるなよ、と。
まぁいいや、深く考えるとはまる。
(「まぁ、帰るか」)
「そうだね」
あー、あと、一つ。
(「俺が混ざってきてないか?」)
「大丈夫だよ?」
そうか。ならいい。
シャリアは公園を去った。降り始めた雪が、爪痕を隠していく。
あれから、しばらくは魔法の練習に明け暮れていた。
「せいゆとじゃあくがとくいみたい」
この子は聖と邪という、相反する二つを得意としていた。その一方であの時使ってなかった光も比較的得意なのだが……
「やみよ、つつみこめぇ」
闇は苦手らしい。
(「無理すんな、できねぇものはできねぇ。今はまだできることしかしない方がいい」)
「でも」
(「そもそも、一応本来なら魔法を使うこと自体が危険なんだ。こっちが保護者代わりするし、最悪代わってフォローもできるけど、本当ならよくないことだ。それは理解しておけ」)
「……うん」
(「無理はするなよ、こっちも不安だらけなんだ」)
ほんと、手間かかる。
でも、俺の手で足りる程度の手間しかかからないとも言うな。利口ではあるけど、子供は子供。どれだけ背伸びしても、背伸びできても。
そう、俺は子供で、シャリアはもっと子供。俺はあくまで父親代わりではなく、兄代わりにしかなれない。まぁそもそも父親いますけど。
そして、俺の精神状態からするに、そのうち精神年齢は並ぶ。もしかしたら追い越されるかもしれない。成長、というか変化を感じない。過去を振り返っても、何の違和感もない。
「ひかりよ、さきほこれ」
光の線だして、それをねじ曲げた。細かいなぁ。
「あっさりだ」
(「こまっかいなー」)
「えをかきたい」
(「がんばー」)
できるかは知らないがな。
「あー、うん?」
(「額が熱くなったな、風邪だ、少し休め」)
「うん」
この日から、少しの間寝込んでいた。




