卒業式のとある一コマ
少しでも楽しんでくれればうれしいです。
「せーんぱい。」
甘い声で一人しかいない部活の後輩の木村が俺を呼ぶ。
今日は卒業式。第二ボタンをあげたりあげなかったりと大変な日でもある。だが当然の如く、俺は三年間ずっと天文部であり、そういうのにはそこまで縁がない。
「あのー、せんぱーい、聞いてますかー? というか、聞こえてますかー?」
「第二ボタンは誰にもやらんぞ。」
条件反射で言ってしまう。
「先輩の第二ボタンなんて誰も欲しがりませんよー。」
グサリ。言葉のナイフが俺を抉る。
「そーれーにー、先輩の交遊関係、めっちゃ狭いの知ってるんだからねー。」
うぐっ。追い打ちまでかけられてしまう。心の中の俺はきっと血を吐いているに違いない。それに、事実だから否定出来ない。
「なぜ、それを。」
当たり前だが、木村に俺の交遊関係を教えた覚えはない。
「そんなの、決まってるじゃないですかー。先輩、いつも昼休みには部室にこもって望遠鏡とにらめっこしてるしー、部活終わった後一人で帰ってるじゃん。」
「お前、俺のこと、」
木村が俺にもわかるくらい動揺して、腕をバタバタと振り回す。
「そそそそ、そんなんじゃないですよー。」
「ストーキングしてたのか?」
彼女の目が、残念なものを見る目に変わる。
「先輩のバーカバーカ。もう知らないです。」
こういう時には謝ればいいんだっけ。非リアにはこういうシチュエーションでの対処方法なんてわからん。
「すまん。悪かった。」
「べっ、別に、怒ってないもん。」
そうして彼女は俺に近づき、下から覗きこむように目を合わせる。
「ただ、もう先輩の隣で星をみることが出来ないのが寂しいだけです。」
「星はどこから見ても同じ星。違うか?」
「せっ、先輩と見る星が好きなんですっ。」
木村は顔を真っ赤にして俺にその言葉をいい放った。
「先輩、卒業してからも、私と一緒に星を見てくれますか?」
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